ダース・ベイダー日本転生(仮) EP1
第一話 青山 零 大地に立つ!!
導入:渋谷、令和の帝都
2024年、帝都・東京。渋谷SHIBUYA SKYから見下ろすスクランブル交差点は、まるで生き物のように蠢いていた。行き交う人々は、スマホの光に照らされた無数の点。それらは互いにぶつかり合うことなく、完璧な秩序を保って流れていく。この「完璧さ」こそが、表向きは立憲君主制を掲げつつ、裏では憑依者を含む特定の財閥や軍事組織が実権を握る「日本帝国」の象徴だった。高度に管理された情報統制とAI監視システムが、この巨大な都市を静かに支配している。
そんな渋谷の雑踏の真ん中に、一人の若者が立っていた。青山 零。18歳。地方の高校でラグビーのスター選手として名を馳せ、この春、帝都の大学に進学するために上京してきたばかりだ。彼の顔には、この大都会への期待と、ほんの少しの不安が入り混じっていた。
「ここが、帝都…」
零はごつごつした大きな手で、首から提げたスマホを握りしめる。画面には、故郷の親友たちから送られてきた「頑張れよ!」のメッセージが並んでいた。彼らの顔を思い浮かべ、零は少しだけ勇気をもらう。
(俺は、ここで全国一になるんだ。そして、みんなをこの景色が見える場所に連れてくる!)
零の心は熱く燃えていた。しかし、その熱意とは裏腹に、彼の胸の奥には、故郷では感じたことのない、得体の知れない「静かなる闇」が渦を巻いているのを感じていた。それはまるで、遠い銀河から飛来した、漆黒の宇宙船のように、彼の内なる世界に静かに停泊していた。
渋谷の喧騒と内なる葛藤
スクランブル交差点の信号が青に変わる。零は人波に呑み込まれながら、渋谷センター街へと足を踏み入れた。
(すげぇ...!これが帝都か!)
零の目に映るのは、所狭しと並ぶ最新のファッションブランドのショップ、巨大なビジョンから流れる帝国のプロパガンダ色の強いアイドルグループのMV、そして、まるでSF映画から飛び出してきたかのようなホログラム広告だ。
「帝都のサブカルチャーは、やっぱりエグいな!」
零は目を輝かせ、スマホでその光景を撮影しようとした。しかし、シャッターを切る直前、画面にノイズが走った。そして、一瞬だけ、ビジョンに映るアイドルの顔が、冷酷な仮面を被った男の顔に変わったような気がした。
「…気のせいか?」
零は首をかしげたが、すぐにその奇妙な現象を忘れてしまった。彼の心は、目の前に現れた、eスポーツカフェの巨大な看板に釘付けになっていたからだ。看板には、武士の鎧を纏った男が、光る刀を構える姿が描かれている。
「マーカス・勇人...!プロeスポーツ選手か!?」
零は興奮を抑えきれない。彼はまるで宮本武蔵の「求道者」としてのキーパーソナリティと、ベイダーのライトセーバー、そして武蔵の「二天一流」が融合し、デジタル空間での戦闘能力が極限まで高まっていることを知る由もなかった。
その時、零のスマホが震えた。兄・真一からの着信だ。
「零か?今どこだ?もう寮に着いたのか?」
兄の声はいつも通り冷静で、少しだけ冷たい。零は人ごみから少し離れた場所に立ち止まり、電話に出た。
「ああ、真一兄さん。今、渋谷の真ん中だ。これから寮に向かうところ」
「…そうか。あまりウロウロするな。帝都は地方とは違う。特に渋谷は、帝国の監視システムが最も進んでいる。変なことに巻き込まれるなよ」
「わかってるって!心配性だな、もう。じゃ、また後で!」
零は少しぶっきらぼうに電話を切った。兄の言うことはわかる。しかし、彼の心は、この大都会の持つ「何か」に、抗いがたい魅力を感じていた。それは、単なる好奇心ではなかった。もっと、根源的な、力への渇望。遠い銀河の、暗黒卿の影が、彼の心に囁きかけているような、そんな感覚だ。
運命の交差点
零が再び歩き始めようとしたその時、背後から悲鳴が聞こえた。振り向くと、女子高生のグループが、スマホの画面を指差して騒いでいる。
「嘘…また炎上してる…!」 「あのインフルエンサー、またやっちゃったよ…」 「最悪…もうアカウント消した方がいいって…」
零の耳に、女子高生たちの言葉が飛び込んできた。それは、SNSでの誹謗中傷による「炎上」だった。帝国の情報統制下でも、個人の感情は制御できない。人々は、SNSの匿名性という仮面の下で、互いを攻撃し、傷つけ合っていた。それは、完璧な秩序を保つこの帝都の、もう一つの顔だった。
零の胸の奥で、再びあの「闇」がうごめき始める。
(…弱い奴らめ。力がなければ、支配されるだけだ)
零の目に、一瞬、冷酷な光が宿る。彼は、女子高生たちを憐れむように見つめ、そして、その場を立ち去ろうとした。その時だ。彼の前に、一人の老人がふらふらと現れた。
「…助けてくれ…」
老人は、零の大きな体を見上げて、か細い声で言った。彼の顔には、SNSの炎上で傷つけられたインフルエンサーの顔が重なって見えた。それは、弱い者を徹底的に排除する、帝国のシステムの犠牲者。零の心に、ベイダーの冷徹な声が響く。
(放っておけ。弱い者に構うな。それが、この世界のルールだ)
しかし、その声に抗うように、零のもう一つの声が叫んだ。
(違う!俺は…俺は、こんな世界を、見過ごすことはできない!)
零の「前向きな性格」と、ベイダーの「闇」が、彼の内面で激しく衝突する。彼の体から、得体の知れないエネルギーが放出されるのを感じた。それは、熱く、そして冷たい。彼の身体能力が飛躍的に向上し、指先にはフォースの力が宿り、老人の体を支えようと無意識に動いた。しかし、その力はまだ制御できない。
「…っ!」
零は、自身の内側から溢れ出す力に戸惑い、苦悶の表情を浮かべる。これが、ダース・ベイダーに憑依された青山の、最初の葛藤だった。彼はまだ知らない。この日から、彼の「ポジティブなアーク」と、ベイダーの「自己憎悪」との、長く過酷な戦いが始まることを。
零は、老人の手を掴む。その瞬間、彼の脳裏に、ベイダーの記憶がフラッシュバックする。
燃え盛る惑星、溶岩の海に横たわる、サイボーグ化した自分。
愛する妻、パドメ・アミダラを、自らの手で締め殺す悲劇的な光景。
そして、暗黒卿としての孤独と、過去への深い後悔。
零の心に、ベイダーの悲しみと、怒り、そして絶望が、津波のように押し寄せてくる。
「く…っ!」
零は膝をつく。老人は驚いて後ずさり、人々は奇異な目で彼を見ていた。
(違う…これは…俺の力じゃない…!)
零は叫びたかった。しかし、声は出ない。彼の心は、ベイダーの圧倒的な闇に包み込まれそうになっていた。
その時、遠くから一つの声が聞こえた。
「零くん…?」
零が顔を上げると、そこにいたのは、彼の幼馴染、佐藤 陽菜だった。彼女は、零の異変に気づき、心配そうな顔で彼を見つめていた。陽菜の純粋な声が、ベイダーの闇に包まれかけた零の心に、一筋の光を差し込んだ。
「陽菜…」
零の口から漏れた、か細い声。それは、彼の人間性がまだ、闇に飲み込まれていないことの、小さな証明だった。この瞬間、渋谷のスクランブル交差点は、青山 零の、そしてダース・ベイダーの、運命の舞台へと変貌したのだ。
予告:ダース・ベイダー 日本転生(仮)第二話 佐藤陽菜はZDT48?
内なる闇の力に苦しむ青山 零は、渋谷で幼馴染の佐藤 陽菜と再会。彼女の明るさに救われ、共に地下鉄へ向かう。
電車内で、憧れの評論家・黒崎 蓮がプロデュースするアイドルグループ「ZDT48」のプロモーション映像が流れるが、その顔が一瞬、不気味な仮面の男に変わる。直後、女子高生たちがパニックに陥り、桜新町駅で一人がナイフを振りかざして零に襲いかかった。
零は闇の力に抗い、ラグビーで鍛えた自身の力で女子高生を制圧。この事件は、彼が「日本帝国」で憑依者との戦いに巻き込まれるきっかけとなり、その背後に黒崎 蓮の思惑があることを、零はまだ知らない。
君は、生き延びることができるかも?