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突然、スーパーから轟音が響く。

「……なんだ?」

次の瞬間——爆発音とともに建物が崩れ落ちる。

瑞希は目を見開き、思わず口を開く。

「映画バリじゃん!俺、モブで良かったわぁ」

黒煙が立ち上り、炎の熱が遠くからでも感じられる。

混乱に陥る人々の悲鳴と怒号が響き渡る中、警察官たちが瑞希へ向かって手を振る。

「こっちです、早く!」

瑞希は警察官に促されるまま、安全な場所まで避難する。

背後では相変わらず爆発が続き、炎はスーパーを飲み込んでいた。

数時間後――ようやく火災が鎮火し、現場は消防士と救急隊員で埋め尽くされる。

犯人たちは逃走したらしく、現場からは多数の死傷者が発見された。

瑞希は警察署で長時間の事情聴取を受け、ようやく解放される。

(……俺、なんかとんでもない場面に巻き込まれたな)


「はー……疲れたぁー。ホント……厄日続きじゃん」

そうぼやきながら、瑞希はふとハッとする。

(……あの人、どこ⁉︎ 車は⁉︎)

辺りを見回すが、黒い車もスーツの男も見当たらない。

どうやら、もう去ってしまったらしい。

瑞希は落胆した気持ちで家路につく。

「……あー、今日のバイト代、出ないかもなぁー」

仕事を放棄したくてしたわけではないが、結果として働いていないことには変わりない。

苦々しい表情で家へ戻り、ドアを開ける。

その瞬間――。

テーブルの上に見慣れない封筒が置かれている。

「……?」

瑞希は怪訝な顔をしながら、封筒を手に取る。

中を開けると、そこには大量の現金が入っていた。

驚きながら封筒の中を確認すると、思ったよりも多くの額が入っている。

借金返済に充てていたお金よりも、ずっと多い。

「……どこぞの足長おじさんかよ」

思わず、呆れ混じりに呟いた。


こうして瑞希の長い一日が終わる。

疲れ果てた体をベッドへ沈めると、あっという間に眠りに落ちた。

翌朝——瑞希は借金返済のため、朝早くからバイトへ向かおうと準備をする。

しかし、ふと机の上に違和感を覚える。

見慣れない封筒の代わりに、一枚のメモが置かれていた。

瑞希は眉をひそめながら、ゆっくりとメモを手に取る。

「厄介ごとに巻き込まれた割には、何も起こらないなんて退屈だったね。

その分の面白さはお金で補っておいたよ。

もう1日だけチャンスをあげるよ——逃げ出すならそれでも構わない。

次は無いけどね〜」

メモの隅には、鈴風の特徴的な金色の髪の毛が数本挟まっていた。

瑞希はそれをじっと見つめ、喉を鳴らす。

「……冗談、だよな?」

しかし、鈴風が冗談だけでこんなことをするとは思えない。

瑞希の胸の奥に、じわりと不安が広がっていく――。


「嘘だろっ……!俺の金!」

瑞希は封筒を握りしめ、呆然とした表情を浮かべる。

「あの金髪ヤロー……こんなとこまで来んのかよ」

額に手を当てながら、視線をさまよわせる。

(にしても……なんでここバレたんだ?あれから一度も会ってないのに……?)

瑞希は小首を傾げる。

封筒の中の金を再び確認すると、異様なほどの額が詰め込まれている。

(それに……“もう1日”ってどういう意味だよ)

瑞希はじっとメモを見つめる。

——再び外に出るべきか?

しかし、数秒考えただけで、逃げたところでどうせ捕まるのは目に見えていた。

「……仕方ねぇ。今日も借金返済だ」

瑞希は深いため息をつき、重い足取りでバイトへ向かう。

「……あーもう返済終わんねーよ!誰かどーにかしてくれぇー!」


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