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その時――。
「ウワッ⁉︎何事だよ⁉︎」
突然、非常ベルが鳴り響いた。
瑞希は驚き、周囲をキョロキョロと確認する。
スーパー内の人々がざわめき、動揺しながら入り口付近に集まる。
――そこには、数人の武装した男たちが立っていた。
一人の男が大声で叫ぶ。
「おとなしくしろ!このスーパーは今から俺たちが占拠した!」
「はー⁉︎マジかよ。スーパー占拠って映画じゃないんだから……」
呆然としながら、瑞希は小さく息をつく。
(俺、車に戻らなきゃなのに……どうすっかなぁ――)
店内は騒然としていた。
人々は恐怖に陥りながら、警察や銀行に電話をかけ始める。犯人たちは店内を見回し、客と従業員を次々と一箇所へ集めていった。
瑞希は、ひっそりとスーパーの片隅に身を隠す。
(うーん……あの人たち、待ってるかなぁ。まぁ、さすがにこんだけの騒ぎが起きてたら気づくよな)
しばらくして、犯人たちは人々の拘束を始める。
脅迫用の紙テープが取り出され、近くにいた人から順番に手を後ろへ回させられ、手首を固定されていく。
「うわー、手グルグルじゃん!痛そー」
瑞希は心の中で軽く呟くが、どこかまだ他人事のように感じていた。
悲鳴と怒号が飛び交う店内。
犯人たちは人質を完全に拘束すると、逃走経路の確保に動き始める。
幸いにも、瑞希が隠れている場所は死角になっており、まだ見つかっていない。
そして——遠くからパトカーのサイレンが響く。
「チッ……!」
焦った様子の犯人たちは、人質を盾にしながら店内に立てこもる準備を進める。
(なんか……長くなりそうだなぁ)
瑞希は喉の渇きを覚え、慎重に飲み物コーナーへと移動しようとする――。
幸い、犯人たちは人質の監視に忙しく、瑞希には注意を払っていない。
瑞希は慎重に飲み物を手に取り、そっと隠れ家へ戻ろうとした――その瞬間。
ガランッ——!
足元に転がった空き缶が、大きな音を立てる。
(……やばっ!)
犯人たちの視線が、一斉に瑞希へ向けられる。
「なんだてめぇ!どこから湧いて出た!?」
叫ぶと同時に、犯人たちは瑞希へ向かって動き出す。
「うわっ——!」
瑞希は反射的に駆け出した。
スーパーの棚の間を縦横無尽に走り抜け、必死に逃げる。
背後から迫る怒声と足音。
(マジでヤバいって!)
瑞希はなんとか犯人たちを振り切り、息を切らしながら出口へ飛び出す。
外に出ると、すでに警察が現場を封鎖していた。
瑞希はそのまま、警察官のもとへ駆け寄る。
「……あ、あの!スーパーにいたんですけど、逃げてきました!」
警察官たちは瑞希を安全な場所へ連れていき、状況を確認する。
「足の速い人だったんですね。他の方々はまだ中にいるんですか?」
「……あ、はい。俺を追いかけて来たのは二人くらいっすけど」
警察官は無線機を取り出し、短く指示を出す。
「了解。とりあえず、ここから離れないでください。犯人たちはまだ捕まっていませんので」
瑞希は落ち着かない様子で警察官の言葉を聞く。
「もしかして、犯人の人数や容姿など、覚えていることはありますか?」
「えっと……」
瑞希は影から静観していたため、詳細を鮮明に覚えていた。
「こうで、ああで……」
犯人の服装、身長、動きの特徴を事細かに説明していく。
警察官は熱心にメモを取りながら、瑞希の証言をまとめる。
「……協力ありがとうございます」
メモを見返しながら警察官は続ける。
「これからは私たちの指示に従って動いてください」
瑞希は軽く頷き、周囲の様子を警戒する。
(……俺、どうなるんだろ)