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「いや、なんでもないよ。」

そう言いながら、瑞希の頭を軽く撫で回す。

「君みたいな子が必死にもがく姿っていうのは、きっと相当面白いものになるだろうね」

瑞希はむっとしながら、鈴風の手を払いのける。

(何だよ……子供扱いされた気分だ)

そんな瑞希の反応を見て、鈴風はケラケラと笑う。

「いやいや、子供扱いしたわけじゃないよ」

手を離しながら、悪戯っぽく微笑む。

「ただ、ちょっと面白いなって思っただけさ」

鈴風はゆっくりと立ち上がり、軽く伸びをする。

「さて、それじゃあ俺は用事があるから、もう行くよ」

瑞希は鈴風の姿を目で追いながら、小さく呟く。

「……変なやつ」

そして——山道を降りていく鈴風が、振り返ることなく声を張る。

「数日後にまた会おう、瑞希!」



鈴風が去った後、瑞希はぼんやりとその場に立ち尽くす。

(結局、何者だったんだ……?)

封筒を開くと、中には想像以上の額の現金が詰まっている。

しばらく握りしめたまま、何も考えられずにいたが――すぐに我に返る。

(……今は考えてもしょうがない。仕方ない、金もある事だしとにかく町に戻ろう)

瑞希は足を踏み出し、町へと向かう。【さっき来たんだけどね】

町は普段と変わらない活気に満ちていた。数日前の騒ぎなどなかったかのように、人々はそれぞれの日常を過ごしている。

瑞希は鈴風から受け取った金で数日間の宿を取り、身を清め、新しい服に着替えた。そして、町の様子を慎重に探る。

「さてと……一から仕切り直しだな。」

そう呟きながら、町を歩き回る。

しかし、新しいバイト先を探すも、なかなかいい場所が見つからない。

途方に暮れ、ため息をつきながら道を歩いていると――。

不意に、路地の奥から低い声が響いた。

瑞希は立ち止まり、ゆっくりと振り返る。

薄暗い路地の奥——そこに誰かの影がある。


「そこの君、ちょっといいかな?」

路地から姿を現したのは、黒いスーツに身を包み、サングラスをかけた男だった。

男はゆっくりと瑞希に近づき、名刺を差し出す。

「私はこの近くでクラブを経営している者です。もしかしたらと思って、声をかけさせてもらいました。」

瑞希は名刺をちらりと見やりながら、疑問げに尋ねる。

「バイトですか?」

「はい。店内の清掃、簡単なお手伝いなどをお願いしています」

男は静かに頷きながら続ける。

「時間は朝の2時間だけですので、他の時間は自由に過ごせますよ。ただ……朝が早いのが少し不便かもしれませんが。出勤は朝6時になります」

瑞希は腕を組みながら考え込む。

「早朝バイトか……時給はもちろん良いんですよね?」

男は穏やかに微笑みながら答える。

「もちろんです。時給は1500円、週に2回出勤すれば交通費も支給します。さらに、住み込みも可能ですので、宿代も節約できますよ」

瑞希は名刺を指でつまみながら、男の言葉を反芻する。

(住み込みか……それならしばらくは安定するかも?)


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