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鈴風は片眉を上げながら、バーベキューコンロをちらりと見やる。
「まぁ……こんな状況で一緒に飯を食うのも、悪くないかもな」
そう言いながら、周囲を軽く見渡し、木陰へ向かってドサッと腰を下ろす。
「そういえば、ここ……飲み物ある?」
「え?」
瑞希は川の水を指し示す。
鈴風は呆れたようにじっと見つめる。
「……冗談だろ?」
溜め息混じりに言いつつ、肩を軽くすくめる。
「まあいいや、俺は食べないから、お前だけ食えよ」
瑞希は無事な食材だけで腹を満たす。
(結局この男、何しに来てるんだ?何で俺のこと待ってるんだ……?)
疑問を抱えながら、ちらりと鈴風のほうを見ると—――ずっとニヤニヤと笑っている。
そして突然、鈴風が口を開いた。
「で、これからどうするつもり?」
瑞希は肩をすくめる。
「えっと……町の中が落ち着くまで、ここで生活するしかないかなぁ〜」
「ちょっと困った状況ではあるけど、数日もすれば隣町くらいでバイト先が見つかるかもしれないし」
鈴風はその言葉に興味深そうな表情を浮かべ、軽く頷いた。
「そうか、数日か……俺もそれくらいは見ていけそうだな。」
そう言いながらスマホを開き、何かを確認する。
そして、再び瑞希へ視線を向ける。
「そうだ、君。町に戻ったら、すぐには働けないだろうから—――その間の生活費は必要じゃない?」
「まぁ……それは必要。」
当たり前の指摘に、瑞希は言葉を詰まらせる。
そんな瑞希の反応を見て、鈴風はクスクスと笑い、財布を取り出す。
「じゃあ、とりあえずこれ。数日過ごすには十分なはずだ。」
そう言いながら、封筒を瑞希に向かって軽く投げる。
「何で?貰えないけど?」
瑞希は封筒を指で弾きながら、訝しげに鈴風を見る。
「俺が君にあげようって言ってるんだよ」
鈴風はニヤリと笑いながら、肩をすくめる。
「借金返してもらうまでは、ちゃんと生きててほしいからね」
銃で肩を軽く叩きながら、悪戯っぽく続ける。
「もちろん、利子は少しずつ払ってもらうよ?」
「何?あんた、借金取りの一人なの?」
瑞希の言葉に、鈴風はクスリと笑う。
「借金取り?いやいや、もっとヤバい奴らだよ」
金髪をかき上げながら、目を細める。
「でもまぁ、君は俺に借りがあるからね。しばらくはこれを受け取って、静かに暮らすのがいいと思うよ?」
瑞希は唸りながらも、仕方なく封筒を受け取る。
「……ちなみに聞くけどさ。あんた、俺に借金返す以外に何かしてほしいことあるわけ?」
鈴風はしばらく考え込むように表情を曇らせ、そして——ゆっくりと口角を上げる。
「俺が君に望むことは……」
ニヤリと笑いながら—――。
「面白いこと」
「面白いこと?そんなの、あっちこっちにあるじゃん。テレビでも見て笑っとけよ」
瑞希の言葉に、鈴風はクスリと笑う。
「テレビを見るのとは比べものにならないくらい、君は面白いことを提供してくれそうだからね。だから、興味を持ったんだよ」
金髪をかき上げながら、茶目っ気たっぷりに目を細める。
「だから君が山の中で遭難するところを助けたし、こうして金も渡した」
鈴風は軽く肩をすくめながら、悪戯っぽく微笑む。
「でも、まだ俺を失望させないでくれよ?」
瑞希は眉をひそめる。
「別に俺といても面白くも何ともないと思うけど? 俺、バイトして借金返すだけしかしてねぇもん」
鈴風は瑞希をじっと見つめ、ゆっくりと首を傾げる。
「面白くないって?君がどう行動するのか見ているだけで、十分面白いよ」
肩をすくめながら続ける。
「それに――借金を返すっていうのは、本当の山場になりそうだしね」
鈴風の言葉に、瑞希は小首を傾げる。
鈴風は不思議そうにする瑞希に満足そうな笑みを浮かべる。