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廃墟へ侵入する話

ツルたちと一緒に廃墟に行く。 ヤロウとヒナタは一足先に行ってる。

「ここが……廃墟か」


ヤロウとヒナタは廃墟に一足先についた。 暗い森を歩いているといきなり現れるボロボロの薄暗い家。 二階建てで、ところどころ壁にカビが繁殖している。


「すごい……不気味な場所だな」


ヒナタが震える声で呟く。 入ってはいけない、そう警告されているような気がする。


「本当にここにコザガがいるのか?」


「ここ以外にそれらしい所は見つからなかったし、ここにいるさ」


ヤロウはヒナタと自分自身に言い聞かせる。


「じゃあ、入ろう」


ヤロウとヒナタはドアの前に向かう。


ギィ〜〜っ……


ドアから錆びた不協和音が聞こえる。 そのまま2人は、廃墟の中へと入っていった。


「2人が……来たか……」


ギンはだるそうにそう呟く。 ギンは二人のいる一階へ降りていった。


ギシ……ギシ……と階段から不安な音が鳴る。


「なんだ? 上の方から音が聞こえるぞ?」


2人は階段から鳴る音をキャッチし、こんな事を考える。


「まさか、コザガじゃないか?」


ヒナタはヤロウに確認するように呟く。 しかし、その予想は外れた。


「誰だ、アンタ?」


ヤロウが階段から降りてきた老人に質問する。 2人はギンの事を知らない。


「こんばんわ、若い人たち」


ギンは2人に挨拶し、次に別れの言葉を告げる。


「そして、さよなら」


ギンは懐から錆びたナイフを取り出し、数メートル先の2人に突き立てる。 ヤロウとヒナタの鼓動が一気に速くなっていく。


「なぁ、コレ、やばいんじゃないのか」


「……そうだね……」


2人は確認し合ったあと、同時に同じ事を同じタイミングで叫ぶ。


「逃げるぞ!」


ドアの方へ一直線……とはならなかった。 ヤロウの足にナイフが飛んでくる。 ナイフは踵らへんに突き刺さり、ヤロウはそのまま倒れる。

 

「ヤロウー!」


ヒナタが立ち止まる。 その隙をギンは見逃さなかった、だいぶ離れていたヒナタの目の前にギンが現れる。


「うっ!!」


ヒナタはギンのビンタを喰らい、仰け反りながら倒れる。


ギンの顔は、憤怒と不安を混ぜたような顔をしていた。 愚痴するようにギンは独り言を言う。


「もう大分時間を使ってしまった、この2人にこれ以上構っている暇はない。 もう十分痛めつけただろう……」


そう言いながらヤロウのもとへ近づいていく。 踵に刺さっているナイフを抜いてトドメを刺す気だ。


ギンは時間を無駄に使ってしまい、イライラしている。 この2人を痛めつけるようにブレクから言われたのだ。


「ぐっ……」


ヤロウは恐怖と悔しさに満ちた顔をする。 どんどん終わりが近づいていく。 残り3メートル、2メートル、1メートル……


「ぐわああっ!!」


……叫び声を上げたのはギンだった。 彼は口から血を上方向に流しながらよろける。 ヤロウのスキルであるキックに蹴られたのだ。 サッカー選手のようなキックを顔面に喰らったらただでは済まない。


だが、殺傷能力はない。 少なくともギン相手には、ギンはすぐに体勢を立て直し、ヤロウのナイフを抜く。


「あがっ、があああっ!!」


ヤロウが険しい顔をしながら悶える。  足からドバドバと血が出てくる。 重傷だ。


「これで……終わりだ……」


ギンはヤロウの首にナイフを_______


そうなる直前、あたりは赤に包まれる。 血の赤ではない、炎の赤だ。


ヒナタから炎が漏れ出ている。 ヒナタのスキルだ。 それを見たギンはすぐさま遠くに避難し泣きながら地面に倒れ込む。


「うっうわ火っ火だ! だ誰か助けてくれ……」


ギンは涙で顔がグチャグチャになっている。 その隙にヤロウとヒナタは逃げ出す。 ドアではなく階段の方へ。


「ヒナタ!? どこへ行くんだ!?」


ヤロウはヒナタに腕を掴まれながら階段を登っていく。 ヒナタはそんなこと気にせず……というか聞こえていない程夢中になって階段を登る。


2階についた。 その2階にアレはいた……


コザガだ。


一階


「うぅ……助けてくれよ……ねえ誰か、お願い……」


ギンはまるで子供のように泣いていた。 彼は思い出したのだ。 あの時の記憶を……


________________________


王家に産まれた2人の兄弟がいた。 兄はギン、弟はキンと言う名前だ。 彼らはとても仲良く、いつでも仲が良かった。


あの日が来るまでは


父親の王の仕事はギンが受け継いだ。 彼はとても優秀だ、頭も体も良く、人望もあり、時には弟の力を借りこの国を築いていった。


彼が唯一できなかったことと言えば、両親の死だろう。


これが彼を変えた。 偉大な王から醜いただの老人へ。


父親が死ぬ前までは、ギンは父親の事を偉大な王と思っていた。 しかし父親が死んだ時に彼が思ったのは偉大な王なんかじゃ無かった。


乾いた目、馬鹿みたいに開いた口、腐臭のする体。 全てが最悪で、全て醜い。 そしていつか自分もこうなる。


いつかはなると知ってはいたが、身近な人で死ぬ人はいなかった。 いや、いなかったのではない。 ただその場にいなかっただけだ。


それがギンにとってとても恐ろしいことだった。 偉大な王である自分が、いつかは醜い塊になる事実に。


そこからギンの体は、急激に衰えていった。 物忘れが多くなり、ストレスで髪が白に染まっていき、どんどん背も小さくなっていく。


やがて王は、キンになった。


「大丈夫かい? 兄さん」


キンがギンを心配する、しかしその事がギンにとっては、とても恐ろしく悔しい事だった。


自分を心配してくれた安堵、なぜお前は衰えていないと言う嫉妬、そしていつも心の底にあるいつかは朽ち果てると言う不安……これが心の中でグチャグチャに混ざり合っていき、何も話せなくなる。


そこから2人は、話すことは滅多に無くなった。


ギンは王室へ箱を運んでいる。 王として働くことができなくなった今、荷物運びなどをして働いているのだ。


たとえどんなに衰えても、できる仕事……ギンはその日までそう思っていた。 しかし数秒後、その考えは完全に無くなる。


ジュッ……


箱から音がする。 箱の温度が上がっていく、熱い。 煙も出てくる。 箱の中身が燃えているのだ。


ギンは箱を落とし、その場に立ち止まる。 どうすればいいのか分からない。 


やがてその火は、ギンの体に……


「ギャァァァ!!」


ギンは思いっきり叫ぶ。 彼が最も恐れていた死が、今起きようとしているのだ。


(熱い……!熱い……!熱い……!)


彼は朦朧とする意識の中で、言葉をひねり出す。


「誰か……助けて……」


かすれたとても小さな声だ。 この言葉を聞いた人は誰一人もいなかった。 しかし、不幸中の幸い、そこを通った人がいた。 ツルだ。


「ギン様!」


ツルはギンを見ながら叫ぶ。 その後彼は冷静に物事を進めていく。


ツルの後ろには何人かの兵士がいた。 彼らに命令を下す。


「水だ! 水をここに持って来い!」


そこからの行動はとても速かった。 兵士たちは迅速に外で水を汲み、ギンの体にかける。 やがてギンにまとわりつく火はなくなっていった。


「ご無事ですか!? ギン様!」


「はぁ、はぁ、助かった……」


数年後


ギンの体はさらに衰えていった。 ただ死に対する恐怖だけは、さらに強まっていく。 あともう少しなのだ。


彼は噂でこんな事を聞く。 不老不死になれる時計がある、普通ならこんなバカ話誰も信じない。 しかし彼は違った、もうコレ以外に方法はない。


実際に行ってみれば、その噂は本当だった。 ギンはエスから時計を貰う。 この時計を作ったのは、エスたちのボスであるブレクらしい。 彼も元兵士だと言うことを聞いた。


ギンは説明を聞き、街に身を運ぶ。 ちょうど異世界人と言う若い連中が城に来ている。 ギンにとっては絶好のチャンスだ。


ギンは実行する前日、キンに相談した、勿論却下された。 しかし、彼はそれで諦めなかった。


だが、彼には少しの罪悪感が残っていた。 彼がとった行動は、できるだけ恨まれていそうな人を狙う事だ。


その人を見つけた、それがコザガだった。 ギンは目撃したのだ、ヤロウとヒナタがコザガを置き去りにしていく所を……


コザガは途方に暮れながら歩いていく。 その後ろをゆっくり近寄り、ナイフで彼を気絶させた。


その直後またキンに相談していった。 またまた却下される、しかしもうギンの心は決まっていた。


あの時計はとても重要な物だ。 些細なことでは使うわけには行かない、盗まれるなど言語道断だ。 ではどうするか……飲み込む、それがギンの答えだった。


これで喉につっかえて死ぬ可能性もある。 だが少しでも希望が見える。 それがギンにはとても嬉しかったのだ。 ギンは覚悟を決め、時計を飲み込んだ。


残るは時計についているボタンを押すだけ、ギンはその覚悟も決め、叫ぶと同時にお腹を叩きボタンを押した。


こうして、ギンのカウントダウンが始まったのだ。






















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