勝手に付いていく話
前回までのあらすじ
ヤロウとヒナタがトタロウに助っ人になってほしいと頼んできた。
「助っ人……?」
トタロウはいきなりこんな事を言われて戸惑っている。
「そう」
「いや何の助っ人だよ!? 嫌だわ!」
ヤロウとヒナタは口を揃えて答える。
「コザガをぶん殴りに行こうかなと」
「お供しよう」
森の中
もうあたりは完全に暗くなっている。 真っ暗な森を何本もの光が通っていた。 ツルと兵士たちだ。
(確かこの先に廃墟が……)
ツルはそう思いながら進んでいく。 だがしかしいきなり静止した。 ツルは地面に座り込んで見る。
「コレを見ろ」
兵士たちがツルの座っているとこの地面を見る。 そこには野生動物の死骸があった。
その動物は狼だ。 何者かによって殺されたようだ。 血が出ている、まだ殺されてからそんな時間はかかってない。
そして刃物で刺されたような傷がある。 人間によって殺されたみたいだ。
「ギン……」
ツルはそう呟く。 ツルの予想が、だんだん確信に変わっていく。
「やはりギンはここから先の廃墟にいる」
ツルはそう断言し……
「そして……そこに隠れている奴、早く出てきたらどうだ?」
木の方を見ながらそう言う。 すると木の裏から三人の人が出てくる。 ヤロウ、ヒナタ、トタロウだ。
「お前たち、ここで何してんだ?」
「あっいや……あの……」
ヤロウは滝のように汗を流している。 ヒナタとトタロウはそんなヤロウを真顔で見ている。
「コザガを……探しに……」
「なぜ分かった。 聞いてたのか?」
「いっいや……その……予想で……」
ツルはヤロウの答えを聞き終わったあと、こう言う。
「ともかく、お前たちがここに来るのは危険だ。 兵が付き添うから城に帰れ」
「……はい」
3人が諦めて帰ろうとした時、時間が止まった。 止まった時間の中で、2人だけ動けている。 ヤロウとヒナタだ。
「なんだっ……時間っ止まっ」
ヒナタが言い終わる前にヤロウがヒナタの腕を掴む。
「よくわからないがチャンスだ。 行くぞ!」
2人はそのまま、コザガがいるらしい廃墟の方へと進んでいった。
時が戻る。 ツルたちはそこに立ち尽くし、数秒経って喋りだした。
「ヒナタとヤロウが……いない!?」
トタロウは叫ぶ。 ツルは悔しそうな顔をする。
「なぜあの2人も……!? 犠牲は1人でいいはず……!?」
ツルから言葉がこぼれ落ちる。 そのこぼれ落ちた言葉をトタロウはすかさずキャッチする。
「犠牲……?」
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魔道具 ”呪いの時計”について
呪いの時計とは、強大な力を持った何者かによって作られた魔道具だ。 現在発見されている数は3個、使えるのは1回限りだが、強力な力を持っている。
サイズは手より少し小さいくらいで、かなり重い。
使い方
時計に上側についているボタンを押したら始まる。
24時間のカウントダウンが始まり、それが終わって対象者を殺せば自分が殺した人物の年齢になり、使った人は不老不死となる。
24時間の内にボタンを押した人は時間の停止、巻き戻し、早送りができるが、使える時間は限られている。
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「……は!?」
トタロウは反射的にそういう反応をした。 その後ツルに詰め寄る。
「コザガが……生贄になるってことですが!? その……ギンッてやつの!」
「そうだ」
ツルは冷静に答える。 まだトタロウは落ち着いていない。
「なんでそんな事っ……!」
「ヤツが……死ぬのを恐れているからだ」
「アイツは1回死の淵を彷徨った。 それ以来”死”に過剰な反応をし……もうすぐ寿命が来る今、若いお前たちを狙って不老不死になろうとしている」
トタロウは気になったことを質問する。
「なんで……コザガなんですか?」
ツルはしばらく黙ったあと、しぶしぶ口を開く。
「……コザガが、皆に恨まれているとアイツが判断したからだ」
「恨まれるって……俺たちに?」
「……そうだ」
トタロウは少ない情報の中でこう考える。
(俺たちのせいで……コザガが死にかけてる?)
(確かに恨んではいるが、死んでほしいと思うほどじゃない。 それはヤロウとヒナタも同じなはずだ……)
(このままコザガが死ぬなんて……俺は……)
「俺も、ついていきます」
「駄目だ、お前じゃ」
ツルがそう言い切る前に……
「戦えます! 俺!! 知ってるんでしょ、俺のスキルの事!」
「俺のスキルは弱くなんかない……むしろ強い……そうでしょ? 戦える……だから」
「俺も、連れて行って下さい」
トタロウはツルに頼み込む。 ツルは諦めたようにその事を認める。
「……そうか、じゃあついてこい」
ツルは廃墟の方を向いたまま振り返ることなく歩き続ける。 トタロウも、ツルたちについていった。
廃墟
「これでいいのか!? ブレク!! ちゃんと子供2人もここに来ているぞ!」
ギンはブレクにそう叫ぶ、廃墟にはブレクもいた。
「うん、いい感じ。 これで面白い物が見れそう」
「じゃ健闘を祈ってるよ、バイバイ〜」
ブレクはそのまま廃墟から帰っていった。 ブレクがいなくなったあと、ギンは大きなため息をする。
「……はあ」
ギンは椅子の方を見る。 そこには椅子に座って……いや、椅子に縛られているコザガがいた。
「んー!! んー!」
コザガは何かいいたそうにしている。 ただ口を縄で縛られているので喋れない。
ギンは呟く。
「あともう少しだ……あともう少しなんだ……」
「あともう少しで……私は恐怖から解放される……!」
城から遠く離れている洋館
「ほんとに良かったの? あの時計使っちゃって」
エスがブレクに聞く。 ブレクはもう洋館に帰っているようだ。
「うん、面白い物が見れそうだし……ヒソムー、アレだして〜」
「かしこまりました。 ブレク様」
ヒソムが人の体はありそうな大きさの紙を地面に広げる。 そこから廃墟の様子が映し出される。
「さぁ、中継だ!」
ブレクはとてもワクワクしながら、その紙を見た。
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