休日を謳歌する話
前回までのあらすじ
ギルドに行って、コザガと仲が悪くなった。
ギルド見学の夜
「まだ、具合悪そうだな」
ツルと先生が城の屋上に立っている。 ツルは顔色の悪い先生を気にかけているようだ。
「すまないね……」
ツルはポケットから2本のタバコを取り出す。
「お前も吸うか?」
先生は一瞬悩み、こう答える。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
ツルは先生にタバコを渡し、火をつける。 道具はライターでもマッチでも火打ち石でもない。
「なんだい……それ」
「ん? あぁお前たちの世界には無かったか、これは魔道具だ」
それはちょうどタバコぐらいの大きさで、かなり軽い。 素材は鉄でできており、カラーは赤、金色の高級感のある彫刻も付いている。
「俺の友人に火を操るヤツがいてな、ソイツに作ってもらった。 別に火打ち石でもいいが、こっちのほうが持ち運び楽だし何よりタバコが美味い」
「そうなんだ、確かにライターより美味しいような気がするよ」
「ライター……知らない名前だ、教えてくれ」
先生は数分間ライターについて説明した。
「だいぶ、顔色が良くなってきたな」
「確かに……君と話してだいぶ楽になったよ」
先生は体調が悪かった理由を話し出す。
「別に病気持ってるとかじゃないよ? ただ寂しいんだ。 妻に会えなくなるのに」
「あの時叫んだイキリくんの気持ちがすごい分かるんだ。 実際、あの場でイキリくんが叫んでなかったら叫んでたのは私だった」
「イキリくんすごい意気込んでたんだよ? 次の試合で勝ったら好きな女子に告白するって」
「そうか……すまなかった……」
ツルはうつむく。 先生は数秒して意味に気づいたようだ。
「ああいや別に……君のせいって言ってるんじゃないんだ。 君の判断でここに連れてきたわけじゃないんだろ?」
「それは、どうかな……ここにお前たちを連れてきたのは俺たちの判断だ」
「ええと……なんかごめんね。 できることならお礼がしたいけど……」
先生は話をそらす。 すると……
「そうか、ならお願いがある。 それを聞きに来たんだ」
「魔道具と……お前のスキルについて……」
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翌日の朝
コタロウは胸を高まらせている。 いよいよ、今日は待ちに待った休日なのだ。
まあギルドに行き始めてから1日しか経ってないが……
この城の周辺に栄えている街がある。 そこにトタロウとルイカとノシャの三人で行くつもりだ。
お金はどうするか…… それについてはギルドの報酬を使う。 また、それとは別に一ヶ月に一度、日本円で
5000円くらいのお小遣いを貰うのだ。
「準備できたか? ルイカ、ノシャ」
「うん、準備できたよ」
「準備オッケー!!」
2人とも準備できたそうだ。 しかし、トタロウはルイカの荷物が気になった。
「ルイカ……その手から滑り落ちそうなくらい両手に持ってる紙袋はなんだ?」
「何って……買った服を入れるための袋だけど?」
数時間後……
「うん! おいしー!」
ルイカはアイスクリームを口いっぱいに頬張っている。 両手で。
ルイカが持っていた紙袋と買った服は、トタロウが全部持っている。 紙袋は全てパンパンだ。
「結局俺が荷物持ちかよ……」
「いやー楽しい! この世界で有名って言うブランドの服も買えたし! 袋いっぱいに」
「おい、無視すんな。 そもそもこんな量いらねえし、なんでブランドの服をこんな量買えるんだよ……」
「なんかブランドの隣の店で似た服が10万円くらい安く売ってた」
「パチモンじゃねーかコレ!」
「こだわりが強いのか弱いのかよく分からないね……」
ルイカが目を光らせる。 次の獲物を見つけたようだ。 そこを指さす。
「ステーキ大食いチャレンジ……?」
そう書かれてある看板を発見する。 もうルイカはここに来るまでにアイスクリーム、ピザ、アイスクリーム、ホットドッグ、アイスクリーム、ポップコーン、アイスクリームを食べている。 今度はバカでかいステーキを食べようとしているようだ。
「また食うのかよ胃の中ブラックホール女」
「だって美味しそうだし……三人で食べようよ。ほら、食べきったら支払い3割増しって書いてあるよ?」
「えっ払うお金増えてない?」
「嫌だわパチモン爆買い女」
ルイカは看板をじっくり読み、あることに気づく。
「ああでも六人じゃなきゃダメっぽいわ……」
どうやらこのチャレンジは六人が必要らしい。 だが今ここには三人しかいない。
「分身……」
「できない」
「そっかあ……」
ルイカはトタロウが分身できる可能性に賭けてみたが無理だったようだ。
「なんで俺が分身できると思ってるんだよ、財産無限湧き女」
「いちいちあだ名変えるのやめて!? あと最後のは何!? 悪口!?」
「いやだってウサギの時にすごい速かったからもしかしたら残像でできるかなって」
トタロウとルイカが言い合いしている内に、ノシャはあるものを見つけた。
「あっ、ヒナタたちじゃん」
トタロウとルイカはノシャが指さす方を向く。 そこにはヒナタとヤロウがいる。
「お? うわ、本当だ」
トタロウは露骨に嫌そうな顔をする。 コザガの件で仲が悪くなっているからだ。
「あっあれで六人……」
「駄目だ」
「駄目かぁ……」
トタロウはあることに気づく、コザガがいない。
「ていうかコザガがいないじゃん。 また木の上にでも隠れてるのか?」
ヒナタたちはトタロウたちの死角へと隠れて見えなくなった。
「コザガ……ヒナタたちとも仲悪くなってるんじゃないかな?」
ノシャがそう言う。
「まあ、そうだろうな」
そしてこの読みは、当たっていた。
トタロウたちともヒナタたちとも離れている街の端っこ、コザガは一人になっていた。
「クソ……アイツら、置いていきやがって……見つけたらただじゃおかねえ」
コザガはどうやらヒナタたちに置いていかれたらしい。 相当怒っている。
そして、コザガのもとへ歩み寄る一つの足音がある……
その足音はどんどん近づいていき、やがて……
「うっ!」
後ろからコザガを殴り、コザガは倒れる。 そしてそのまま、さらわれていった。
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