皆でギルドに行く話
前回までのあらすじ
弱いスキルが、実は強かった。
「はえ〜すっごいな〜」
サーベが言葉を漏らす。 そのサーベの横に、ツルとドーソが立っていた。 場所はさっきまでトタロウたちがいた森だ。
トタロウが殴った風穴の空いた木を見る。 そしてあることに気がついた。
「これ、後ろまで続いてるよ」
その木の後ろの木も、そのまた後ろの木も、またまた後ろの木も、風穴が空いている。
「やっぱり、彼が勇者だよね?」
サーベがツルにそう聞く。
「まあ……現時点で一番勇者に近いのはアイツだ」
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トタロウは目を覚ます。 窓の方を見ると、もう外は明るくなっている。 朝が来た。
今の時間は……5時55分だ。 6時が来る前にトタロウは歯を磨く。
歯を磨き終わったタイミンで、ちょうど6時になった。 その瞬間外から凄い音のラッパがなる。
「うおっ!」
あまりの大きさにトタロウは小さい叫び声を上げる。 これなら寝坊することはなさそうだ。
どんどんラッパの音が小さくなっていき、他の楽器の音も聞こえ始める。 胸が高まるような陽気な音楽だ。
トタロウは階段を降りていく。 朝食までまだ時間があるので、朝の散歩でもしようと思ったからだ。
昨日と同じ道を通り、昨日と同じドアから出ていく。 森は、昨日と印象がまったく変わっていた。
歪な形をしていた木が全部元通りになり、その森の中で小鳥が追いかけっこをしている。 木の狭間から漏れ出てくる太陽の光が当たって気持ち良い。 トタロウはそう思った。
しばらくあたりを散歩していると、朝演奏していた演奏隊を見つける。 これから城に帰るところらしい。 とても重そうな楽器を軽々と運んでいる。
(そろそろ俺も帰るか)
トタロウはそう思い、小走りで城へと帰っていった。
自分の部屋へ戻るとトタロウはある違和感に気づく、人の気配がまったくしない。
そう思っていると、1人がトタロウに近づく、それはツルだった。
「トタロウ、どこへ行ってた。 そろそろ朝食の時間だ、もう皆食堂へ行ったぞ」
どうやら皆は食堂に一足先に行ったようだった。 トタロウもツルに案内され食堂へ足を運ぶ。
まだトタロウは歩いたことない道を歩く。 この城は結構広い。 まあ城だから当たり前だが……
食堂につき扉を開けるとそこに皆がいた。 ルイカの隣の椅子だけ空いている。 どうやらそこがトタロウの席のようだ。
そこに静かに座る。 前には担任の矜持 武先生がいる。 先生の顔色は青白くなっていて体調悪そうだ。 まあ当然だ。 いきなりこんな場所に転生したのだから。
机はパーティー会場で見るような細長い長方形の形をしている。 そしてトタロウから一番離れたパーティーの主役が座る席に、王が座っている。
王は全員揃ったことを確認し、喋り始める。
「ええ、これより朝食の時間となる。 せめてもの謝罪だ、たらふく食べてくれ」
そう王が言い終わると執事とメイドが料理を運んでくる。 焼きたてのパン、トマトベースのスープ、こんがり焼かれたチキン、カラフルなサラダ、美味しそうな料理が一人ずつ置かれていく。
「いただきます」
奥の方から声が聞こえる。 トタロウも手を合わせ食べ始める。
「うまっ」
「うん、おいし」
料理はとても美味しい。 トタロウも気づけば全部食べてしまった。
もうほとんどの人は食べ終わってる。 ただ先生だけは口をつけてない。
「どうした、嫌いなものでも入ってたか?」
ツルが先生にそう聞く。 やっと先生は食べ始める。
「すまない……考え事をしていて……」
先生は、無理矢理口にパンを放り込み始めた。
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トタロウたちは城から離れ森を歩いている。 これからギルドと言うところに行くそうだ。
20分くらい歩き、ギルドについた。 ギルドの中には30人くらいの人がいる。 ギルドにいる人々はジロジロトタロウたちを見てくる。 トタロウたちは学校の制服を着たままだ。 この服が異世界ではあまり見たことないのだろう。
先頭を歩いていたツルたちが受付嬢という人に話しかける。
「服の用意はできたか?」
「もちろん! 予備含め全員分あるよ!」
おしとやかな見た目をしているがかなり元気な人だ。 この人にトタロウたちのこれから着る服を選んでもらっているらしい。
受付嬢がカウンターから服をだす。 その服はこのギルドにいる人が着ている服とあまり変わらない。
The冒険者と言う感じの服だ。
ギルドの外に更衣室があるのでそこで一人ずつ着替える。
(成る程……ピッタリだ)
ちゃんと自分の服のサイズに合っていてトタロウは満足する。
「これから任務の発注を行う。 よく聞いてくれ」
ツルから発注についての説明を受け、前の方から言われた通り発注をしていく。
今回は三人で同じ任務をこなすそうだ。
順番の来たコザガとヤロウとヒナタが任務の発注を始める。 そしてヤロウがこんなことを言う。
「よし、この討伐任務にしよう」
ヒナタが突っ込む。
「いきなり? もうちょっと段階踏んだ方が……」
「馬鹿! もうすぐ敵が来るんだろ? そのために早いうちから経験積んだほうが良いだろ! そうすれば早く帰れるし」
「そうかなあ……」
コザガが提案する。
「なら俺のスキルは近接戦闘向きじゃないから二人でなんとかしてくれ、その分報酬は俺の方が多くていいから」
「おう! ……は?」
そうしてトタロウたちの出番が回ってきた。 もちろんトタロウとルイカとノシャの三人だ。
「じゃあステータスカードの確認お願いしまーす」
受付嬢がそう言い、トタロウたちはカードを渡す。 カードを受け取り受付嬢はカウンターから任務の紙をテーブルの前に出す。
「このステータスならこの中がオススメっすね」
ギルドにはランクというものがあり、そのランクでギルドの強さが決まる。 もちろんトタロウたちは一番下のFランクだ。
「やっぱり最初は簡単そうな薬草採取にする?」
「まあ、そうだろうな」
「私もさんせーい!」
発注が完了したのでトタロウたちは薬草が取れるという林に行き、薬草採取を開始した。
数十分後
「ふう……目標の数の薬草を手に入れたよ」
「じゃあギルドに帰るか」
トタロウたちが帰ろうとしたその時。
「ぎゃあああ!!」
奥の方で叫び声が聞こえる。 その声は近くなっていき姿が見え始める。 叫び声の正体はヤロウとヒナタだった。
「ヤロウ!? ヒナタ!?」
2人は討伐目標だったウサギに追いかけられている。 でも追いかけているのはただのウサギじゃない。 そのウサギは3メートルはあり、牙が剥き出しになっている。 2人を食い殺すつもりだ。
トタロウはある違和感に気づく。
(コザガは……どこにいったんだ!?)
トタロウが考えているうちにルイカがウサギに向かって走り出す。
(スキル発動!)
ルイカは心の中でそう念じ、スキルを発動させる。 ルイカのスキルは、突進だ。
ドゴォん!!
爆音が鳴る。 ルイカの突進はウサギに命中したが、そんなにダメージは入っていない。 取っ組み合いをしているが、力はウサギのほうが上だ。 このままじゃルイカは負けてしまう。
「ノシャ! 助けに行くぞ!」
「あぁ、分かった!」
(スキル発動!)
(スキル発動!)
トタロウとノシャも念じ、スキルを発動させる。
「うぉあっ!!」
まだトタロウは力の制御ができていない。 体が浮き、ウサギの奥の木へとんでもないスピードで突っ込んでいく。
ノシャのスキルは、ナイフの生成だ。 ナイフをウサギの横腹に突き刺す。 だがウサギは全くひるまない。 ノシャはナイフを抜き、また同じところに刺す。
何度も何度も突き刺す。 そして……
ウサギの腹が破裂する。 だがそれはノシャの攻撃ではなかった。 それはトタロウのパンチだ。
「はぁ……はぁ……間に合った……」
ウサギは地面に倒れ、動かなくなる。 完全に死亡した。
(力の制御しねえと、危ねえなこれ……)
三人は座り込む、疲れがどっと襲ってきたのだ。 するとヤロウとヒナタがこちらに向かってくる。
「はぁ、助かったよ……」
二人は感謝を伝える、そうして……
「おい!! コザガ! でてこい!!」
コザガの名前を叫ぶ。 2人とも相当怒っている。 そしたら木の上からコザガが飛び降りてきた。
「ったく……邪魔が入った……」
コザガはだるそうにそう言う。 まだ二人の機嫌はおさまっていない。
「謝れよ! もうすぐで俺達死ぬとこだったんだぞ!」
「知らねえよ、大体この任務しようつったのはヤロウだろうが!」
コザガも負けじと反論する。
そうしてコザガの怒りはトタロウたちにも……
「おい、もう二度と俺の邪魔すんじゃねえぞ」
「邪魔って……俺たちは死にそうになってた2人を助けただけだ!」
コザガのスキルは狙撃、どうやらコザガは2人を囮にし、木の上でウサギを仕留める作戦だったようだ。
散々言いあった後、それぞれ別々の道を辿って、ギルドへと帰っていった。
「よし、全員揃っているな」
トタロウたちは城へと帰ってこれから夕食の時間だ。 その前にギルドの報酬が配られる。
ギルドの報酬は三人で山分けとなっている。 ヤロウとヒナタ、そしてトタロウはコザガの報酬もあることが気に入らない様子だ。
夕食の時間三人は喋ることなく夕食を食べ終わり、自分の部屋へと戻っていった。
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トタロウたちのいる城から離れた不気味な洋館、そこに今日は7人いる。
そこにいる7人目は、年は90くらいの老人だ。 その老人は長く美しい髪、モデルのような体、蛇のような目をしているこの中で唯一の女、エスから何かを貰った。
時計だ。
「じゃあ、頼んだわよ」
エスは老人にそう言い、老人はコクリと頷く。 そうして洋館から老人は出ていった。
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