討伐する話
前回までのあらすじ
スタートした。
(一体……どうすればっ……!)
ヒソムは目を瞑り考え込むが、答えは出てこない。 ドラゴンはしっかりとヒソムを捉えた。 今にもヒソムに飛びついてきそうだ。
「ギュルアアアアアッ!!」
ドラゴンが顔をヒソムに伸ばしていく。 ヒソムはどうすることもできずに捕まってしまった。 このドラゴンに牙は生えていなかったので何とか助かったものの、ドラゴンはドラゴン、自慢の噛み砕く力でヒソムを噛む。
「ぐあああああっ……!!」
ヒソムの胸から今にも折れそうな骨の音が聞こえる。 ヒソムの胸にドラゴンの口がめり込み、血が溢れ出てくる。
「とりゃアッ!!」
「ぎゅ……!? アッ!?」
いきなりドラゴンがヒソムを離す。 ヒソムはちょうど植物が生えている所に落ち助かった。 ドラゴンは上を見上げると、そこにはムチを構えたまま落下していくエスがいた。
「エス!?」
先程エスは真上に吹っ飛ばされて落下する時に、負けじとムチをドラゴンの後頭部に当てたのだ。 ドラゴンはヒソムを噛んでいて隙だらけだったため、ムチはドラゴンの後頭部に命中した。
「ギュアアッ!!」
ドラゴンは激怒し口をパカッと開く。 エスはコレから何が来るのか察し、ムチで体をガードさせる。 ドラゴンは火を吹いた。
「グググッ……ああッ!!」
エスは炎のダメージを受けながら木の枝に着地する。 エスの周りの木の枝が燃え始め、エスは燃え盛る木の枝を取りドラゴンに投げつけた。 しかしダメージは全くない。
(っ!? ヒソムがいない!?)
エスはあることに気づいた、ヒソムが姿を消したのだ。 エスはヒソムがどこに逃げたか探す、数秒してエスの目にはドラゴンから逃げていくヒソムが映った。 エスはヒソムを追いかけに行く。
(げっ!! お前もこっちに来るな!! 俺の居場所がバレるだろ!!)
ヒソムはこっちへ向かってくるエスを見るなりそう思った。 エスは構わずヒソムを追いかける、それに続くようにドラゴンもヒソムの方へ向かって来た。
「ああもう!!」
ヒソムは石に変装し、エスとドラゴンから逃げる。 ドラゴンの目にはただエスだけが映っていた。 ドラゴンはまた火を吹く準備をする。
「ぐっ!!」
エスはドラゴンが火を吹く前にムチをドラゴンの顔に伸ばしていく。 せめてもの抵抗だ、コレでドラゴンが怯むとは思えないが、何もしないよりはマシだろう。
ムチはとんでもない速度でドラゴンの首へ伸びていきバチンッと強烈な音が鳴る。 もちろんドラゴンにはこんな攻撃まったく……
「ギュアゥ!!」
「え?」
その事にエス自身が一番驚いた、何とドラゴンは怯んだのだ。 それに加えゴウカイのスキルのようにまた地面へ倒れていく。 エスは倒れるドラゴンを見てこう思った。
(首が……弱点なの!?)
(なんだ。 あのムチの攻撃が通った……?)
ヒソムはその事が信じられないようだ。 ヒソムもあの攻撃がホントに通るとは思っていなかった。 しかしそれは起こってしまった、エスとヒソムの目が希望に満ち溢れる。
(倒せるかもしれない……!)
ヒソムはグッタリと倒れたドラゴンへ近づく、その途中バッタリとエスに出会ってしまった。 もちろんエスの反応は面倒くさそうだ。
「アンタまた……逃げるか戦うかどっちかにしなさいよ」
「は!? 今のは一旦離れようとしただけだ!!」
ヒソムはポケットにしまっていたナイフを取り出し、ドラゴンの首に……その前にエスに止められてしまった。 ドラゴンを倒した方は幹部、倒せなかった方は追放だ。
「ぐぐっ……離せ……」
「嫌よ、私が幹部になるの」
エスはナイフを奪い取りそこら辺に投げ捨てる。 ヒソムは投げ捨てられたナイフを探しに走っていった。 その隙にエスはとどめを刺そうとする。
「コレで……終わりよっ!!」
エスはムチを思いっきりドラゴンの首に叩きつけた。 ヒソムは「まずいっ!!」と叫ぶ。 しかし、ドラゴンは難なく起き上がる。
(なんですって!? !!)
エスは重大なことに気づいた。 このムチはドラゴンを殺すほどの力がないのだ。 エスはドラゴンと目が合う、そしてドラゴンにより吹っ飛ばされた。
「きゃあっ!!」
エスは木に激突し、気を失う。 ヒソムは今がチャンスだと思いドラゴンの首にナイフを突き立てた。 そして突き刺さる、だが……
(ぐっ……俺の力じゃ……コイツを殺せねえ!!)
刺さりはしたものの、ドラゴンを殺す威力はヒソムとナイフには無い。 ヒソムとエスと同じように吹っ飛ばされ、エスと同じところに行く。 エスはヒソムが飛んできた瞬間目を冷ました。
「なあ、アイツ倒せると思うか?」
「どうかな……」
「さっきの威勢はどうした?」
「うッさいわね……離れなさいよ!!」
「うおっ!!」
エスの逆鱗に触れヒソムはまた吹っ飛ばされた。 だがそれにより、ヒソムは何かを思いついたようだ。 ヒソムは不気味に笑う。
(俺の力じゃドラゴンを殺せなくて……アイツも一人だけじゃドラゴンを殺せない……アイツには俺を吹っ飛ばす力がある……)
ヒソムはエスに近づいていき、こういった。 「エス、俺を吹っ飛ばせ!!」エスは「ええ……」と引き気味にヒソムを見つめる。 ヒソムは「いいから早く!!」と催促した。
「ああもう!! やってやるわよ!!」
「ウグおあああああっ!!」
ヒソムは態勢を立て直し、ドラゴンへ一直線に向かっていく。 ドラゴンもヒソムを殺そうと口をバカっと開ける。 喰うつもりだ。
「コレで最後だああッ!!」
「まさか!!」
エスはやっとヒソムが何をしようとしているか理解する。 もうヒソムは止まらない、そのままドラゴンの首元へ突っ込んでいく。
「グルッ……アア……」
ドラゴンが弱々しい声を上げる。 ヒソムはドラゴンの首を掻っ切ったのだ。 ドラゴンは白目をむきながら倒れる、そうしてドラゴンが起き上がる事は無かった。
「よっしゃッ!!」
「負け……た……」
エスはガクッと膝から崩れ落ちる。 エスの目には人影が映った。 エスは後ろを振り向くとそこにはブレク、ザンジ、ウーフ、ゴウカイの4人がいた。
「ブレク様……」
「ドラゴンを倒したのはヒソムみたいだね」
「……はい」
ゴウカイは無事な二人を見て「いやあ、二人が無事で良かったアッ!!」と元気に言った。 ウーフとザンジはそのバカでかい声に耳を塞ぐ。
「じゃあ、幹部になる人を紹介するよ」
ブレクはそう言い、エスは下を向いた。 エスは必死にでてこようとする涙を抑える。 だが次の瞬間、エスの涙は引っ込み、上を向く。
「幹部になる人はヒソム、エスだ」
「えっ?」
「え」
ヒソムとエスが同じ反応をする。 幹部になる人は一人だけだったはずだ。 その事についてはブレクが説明し始める。
「いやあ、僕も最初一人だけを幹部にするつもりだったんだけどね。 二人の戦いを見てたら、何か二人とも必要だって思っちゃって……」
「て事は、追放者は無しってことですか?」
「うん、そうだよ」
「それに……何か面白い事が起こるような気がして……」
「? 何か言いましたか?」
「いや、何でもないよ」
こうしてヒソムとエスの2人は幹部となった。 こうして数カ月が過ぎ、また2人は戦うこととなったのだ。 ヒソムはここから抜け出し、森の中を彷徨っていた。
「はあっはあっはあっはあっ」
ヒソムは一旦止まり休むことにした。 その瞬間無くなった腕が痛んでくる、あまりに必死で忘れていたが、腕を飛ばされたのだった。
(!? 何かこっちに来る!!)
ヒソムは人の気配を察知し、その気配がする所をチラッと見る。 ヒソムの額に汗がにじむと同時にだんだん息切れも激しくなっていった。
(ゴウカイ……!!)
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