撃ち合いする話
前回までのあらすじ
治った。
「じゃあ、ヒソムはそこに立って」
ブレクは指でどこに行けばいいかを伝える。 ヒソムは下を向きながらそこへと進んだ。 ヒソムは顔を上げ、見上げた先にはエスが立っている。
「では、行きましょー」
ブレクは軽く言うが、2人はまったく楽そうではない。 これからどちらかが死に、どちらかは生きる。 はたまたどちらも死ぬ……
「ふぅーっ……」
「はぁ、はぁ、ふぅ。」
2人はそれぞれ深呼吸する。 少し落ち着いたのか、身体の震えが少し収まる。 それを見て、ブレクはカウントダウンを始めた。
「10、9、8、7、6……」
カウントダウンは着実に進んでいく。 もうこうなってしまったら誰も止めることはできない。 2人は覚悟を決め、もう一度深い深呼吸をした。
「5、4、3、2、1……」
「0っ!!」
パァン!!
カウントダウンがゼロになった瞬間、発砲した音が鳴った。 銃から煙が出てくる、その煙は、エスの銃から出てきていた。 ヒソムは地面に倒れているが、弾は当たってない、弾がヒソムに当たり前に倒れて避けたのだ。
ヒソムの残弾 6
エスの残弾 5
(あの女っ……すぐ撃ちやがった……!)
「グッ!」
ヒソムが起き上がろうとした瞬間、ヒソムの口から苦しみに溢れた声が鳴る。 ヒソムは足を見る、そこにはツルに切られた傷があった。
(まずい!!)
ヒソムは倒れた状態で銃を構える。 次の弾を撃とうとしているエスの姿が見えたのだ。 ヒソムは痛む足のことを何とかかんがえずに、無理矢理体勢を立て直しながら引き金を引く。
パンパァンっ!!
発砲の音が2つ鳴る。 撃った弾はそれぞれの弾とぶつかり、ギチギチっ……ギチっ!!と音を立てながら粉々になり、観戦していたザンジ、ウーフ、ゴウカイのもとに吹っ飛んでいく……が、それぞれ「ふっ」 「オラっ!!」 「おいしょー!!」と掛け声を上げ、いとも簡単に飛んできた弾をはじき返す。
ヒソムの残弾 5
エスの残弾 4
「しぶといわね……」
「そっちこそ……」
2人が撃ち合い始めてそんなに時間は経っていないが、両者ともとても疲れている。 それは体力的ではなく精神的に、だ。 エスは次の弾を撃つ準備をし始める。
(だったら……!)
ヒソムは何かを思いつき、エスの逆方向へと走っていく。 エスは「逃げる気か!!」と言いながらヒソムを追いかけた。 ヒソムは階段を登り、エスも同じように階段を登る。
(!?)
エスは心の中でそう思う、階段を登ったはずのヒソムがいないのだ。 エスはヒソムがスキルを使って何処かに隠れていると思い、どこかにヒソムが隠れていないか探す。
「自分の手に一定時間触れた物の情報を読み取り、数分間その情報を読み取った物の姿になれる……でしょ?」
エスはスキルの効果を話し始める、コレはエスのスキルでは無くヒソムのスキルだ。 エスは「アナタが1日に使えるスキルの目安は10回……つまりこれで9回、それまでに終わらせてあげるわ」と続ける、そしたらどこからとも無く声が聞こえてきた。
「手をムチのようにして、数十メートル先まで攻撃ができる……だったよな?」
ヒソムはお返しにエスのスキルを説明し始めた。 エスは「やっぱりこの階にいるのね……」と確信する。 するとエスは、自分の手を前に掲げた。
エスの上げた右手が、どんどん伸びていく。 指が融合し、それは1本の巨大なムチになっていった。 エスはそのムチを横に振る。
そのムチに当たった花瓶が割れ、花と水と割れた花瓶が地面に転がる。 コレはヒソムではなかった。 エスは次にヒソムが隠れそうな所を探し、またそこに振りかざす。
エスが次に目をつけたのは、鏡だ。 パリン!!と音が鳴り、パラパラと破片が落ちる。 これもヒソムではない。
「ったく、早く出てきなさいよ……」
なかなかヒソムを見つけられず、エスはイライラする。 エスはムチを無我夢中に振り回した。 机、イス、壁、ドア、地面、カーペット、皿、全てを破壊していく。 だがヒソムは出てこない。
「どこにいんのよ……早く出てきなさいって言ってるでしょ!!」
エスは耐えられず叫ぶ。 その後ろで、少し音が聞こえた。 エスはそこを振り返る、そこには銃を構えているヒソムがいた。 エスは慌てて防御しようとするが、もうヒソムは撃つ構えを整えている。
「はいよ」
ヒソムはそう言い、思いっきり引き金を引く。 発砲音がなり、エスへと一直線_____ではない。 少しズレている。 そのズレた弾の軌道は、エスの左目へと飛んでいった。
「ギャッ」
エスは小さく叫ぶ。 左目に弾が直撃したのだ。 目から汁が溢れ、頬を伝って地面に落ちていく。 ヒソムは次の準備をするが、エスのムチにより次の弾が撃たれることはなかった。
ヒソムの残弾 4
エスの残弾 4
「ハァ……ハァ……ふんっ!! がぁっ……!!あっ……」
エスは無理矢理左目に刺さっている弾を抜く。 それはエスの眼球とともに外れ、ボトッと音を立てながら落ちる。 エスはまたいなくなったヒソムを探し始めた。
「こっちだ」
後ろからヒソムの声が聞こえる。 エスは左目を手で押さえながら振り向く、そこには銃を構えた”エス”がいた。 「私……!?」とエスは驚く。
「残念、俺だ」
エスの体からヒソムの声が聞こえる。 エスはこれがヒソムだとすぐに撃つ準備をしたが、一瞬の隙が仇となった。 ヒソムの方が先に撃つ。 しかしそれは大きくズレ、エスの頬をかすめた。
ヒソムの残弾 3
エスの残弾 4
「お前は隙があり過ぎなんだよ。 お前がムチで暴れている間に後ろに回り込めたし……お前が弾を抜いている間に俺はお前に触れた」
ヒソムがそう言い終わると同時に、ヒソムは遠くへ吹っ飛ばされた。 ヒソムは壁にぶつかり、地面へストンと落ちる。 ヒソムはエスのムチにぶん殴られたのだ。
「こっちの方が、視力高かったのに……」
エスは嘆きながらヒソムへと近づく、ヒソムは立ち上がろうとするが、足がズキンと痛みなかなか立てない。 その間エスはどんどんヒソムに近づく。
「結局、最後にこれで殺せばいいんだもんね?」
「グッ!!」
ヒソムはまたエスのムチに吹っ飛ばされる。 今度は上に上げられ、ドシャッと言いながら地面へ落ちる。 恐らく今の衝撃で腰の骨が折れた。
エスはムチでヒソムを攻撃しながら、最後に銃を使ってヒソムを殺すつもりだ。 ヒソムのスキルは攻撃系ではない、この点においてヒソムは不利だ。 ヒソムは反撃の間もなくどんどん追い詰められていく。
(何か……隙はないのか!? 隙は……!?)
ヒソムはこの攻撃から抜け出せないかと隙を探すが、その間もエスの攻撃は止まらない。 ムチに当たるたび吹っ飛ばされ、地面に落ちるたび骨が折れていく。 このままじゃヒソムはじきにやられる。
(うぐっ…! うぅ……今だ!!)
ヒソムは一瞬の隙を見つけ、スキルを発動させる。 エスはムチでヒソムがいた所を攻撃するが、ヒソムには当たらなかった。 エスは左目を押さえながら何処かに隠れたヒソムをまた探して行く。
「どこ……どこ……どこ!?」
エスは叫ぶが、返事はない。 またエスはムチでここを滅茶苦茶にし始めた。 いろんな物が宙に舞い、バラバラになりながら地面へと落ちていく。 そうしているうちに、ヒソムは現れた。
「うわっ!!」
エスが机を破壊した瞬間、そこからヒソムが飛び出てくる。 ヒソムはボロボロのカーペットにゴロゴロと転がっていった。
「もう、終わりにしましょう」
エスが銃を構える、ヒソムは体中の骨が折れ動くことができない。 エスは弾の準備が完了し、そしてそれを確実にヒソムの方へ向ける。
パンッ……
ヒソムの残弾 3
エスの残弾 3
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