治る話
前回までのあらすじ
キワミの治療中
「……ヤミクモ?」
部屋に入ってきたのはヤミクモコウだった。 キワミは手の動きを止め、ヤミクモコウの方を凝視する。 ヤミクモコウは息切れしながら額に汗を流していて、急いでここに来たのが分かる。
「キキからお前が魔物になりかけている事を知ったんだ。 その後城の外を出るとたまたまお前の部屋の様子が見えて……お前がその点滴の針を抜こうとしてるのを見て急いでここに来たんだよ……」
「この薬を作ったのは……汚い_______」
キワミが言い切る前にヤミクモコウがキワミに抱きつく。 キワミはそれに応えるようにヤミクモコウを抱き返した。
「お前は辛いかもしれない……だけどお前がいなくなる事は……俺にとってとても辛い事なんだ……だから、今は我慢してくれないか……」
ヤミクモコウは目に涙を浮かべ、さらに強く抱きしめる。 キワミを涙を流しながら、比例してキワミも強く抱きしめた。
その瞬間、薬が完全に点滴から無くなった。 これでキワミは完全に人間へと戻ったのだ。 皆は無くなった薬を見て安心する。
「帰るぞ」
ヤロウがぼそっと呟く。 ここは自分たちがいるべきではないと判断したのか、すぐさま部屋を出ていく。
ヤロウを追いかけヒナタ、コザガも部屋を出て、他の皆も部屋から出ていった。
そうして部屋に残ったのは、キワミ、ヤミクモコウ、そしてココロだ。 キワミはココロを見て邪魔そうな顔をする。
「何……そこに突っ立ってんのよ。 アンタも早くでなさいよ」
「ほら、キワミ。 お礼言わないと」
キワミは数秒間、沈黙する。 やはり人間そうは変われない。 汚い物は汚い物だ、それに礼を言うのがキワミは癪なのだ。 「ほら、お礼」とヤミクモコウに言われ、キワミは重い口をやっと開いた。
「助けてくれてって……ありがとね……」
キワミにそう言われココロは嬉しそうな顔をする。 ヤミクモコウも嬉しそうな顔をし、キワミだけは嬉しそうな顔ではない。 キワミはココロに気になった事を聞く。
「そういやアンタ、何でアタシを助けたの? アタシはアナタの事無視してたのに……」
ココロはキョトンとした顔をした。 キワミが何を言っているのかよく理解できていないからだ。 ココロは不思議な顔で理由を話し始める。
「別に、あなたを助けたわけではありませんよ」
「は?」
「私が助けたのは……あなたの体です」
「体……?」
ココロはポケットに隠していた注射器を取り出す。 キワミの顔はどんどん青ざめていく、これから何をされるのか何となく察したからだ。
「お礼……ですか……それなら、採血をお願いします……ヒヒ……」
ココロは不気味に笑い、キワミの顔は見たことないほど青ざめている。 その様子を見たヤミクモコウは「はは……」苦笑いしていた。
「では、行きますよ」
「ちょっと!? ちょっとぉー!?」
※
森から離れた洋館
「結局魔物にならなかったかー……つまんないなあ……」
ブレクはつまんなそうな顔をし、その顔を見たヒソムとエスはふるふると顔を震わせながら恐怖に満ちた顔をしている。
「申し訳ありません……ブレク様……」
ヒソムとエスはブレクに謝罪する。 ブレクの反応は、これまでと違っていた。 ブレクはヒソムとエスの方に近づき、銃のような物をそれぞれの近くに置く。
「だったら何か面白いものを見せてよ。 それ、マジックポイントを使って玉を発射するものなんだ。 玉の数は六発、玉が無くなる前にどっちかを殺せたら君たちのどっちかを生かしてあげるよ」
ブレクが言ったことは、これを使って撃ち合いしろ……という事だ。 ヒソムとエスの震えがどんどんと大きくなっていく。 これからどちらかは死に、どちらかは生きる……または……どちらも死ぬ。
こうして、ヒソムとエスの撃ち合いが始まった。
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