採血する話
前回までのあらすじ
キワミが香水を買った。
城から離れた洋館
「うまくいった? ヒソム、エス」
ブレクはヒソムとエスに香水を買った人がいたかどうか聞く、2人は自信満々に答える。
「もちろんです、ブレク様」
ブレクはヒソムに頼み事をする。
「ヒソム、じゃああれ出して」
「かしこまりました、ブレク様」
ヒソムは人一人分ぐらいの大きさの紙を持ってきて、地面に広げる。 そこからは城と森の様子が映されている。
この紙は中継ができる魔道具だ。 ヒソムがカメラを中継したい場所に貼り付け、紙にそのカメラの様子を映す。
「おお、ちゃんと映ってるじゃねえか!」
ヒソムの隣にいる男が嬉しそうに叫ぶ。 彼の名前はウーフ。 彼の身体は黒い体毛に覆われていて、顎が飛び出し牙は鋭い、爪は獣のように尖っている。 いや、彼は獣だ。
狼の姿をしている。 しかし、下半身は人間だ。
「うるさいぞ、少しは静かにしたらどうだ」
ウーフの隣にいる男がウーフを注意する。 ウーフは何かいいたそうにその男を睨みながら黙る。 その男の名前はザンジ。 灰色の髪、赤い目、ウエディングスーツのような服を着ている。
「まぁいいじゃねえか!」
ザンジの隣にいる男がガハハと笑う。 彼の名前はゴウカイ。 今ここにいる6人の中で一番大きい、縦にも横にも。 彼はスキンヘッドで、肌は黒く焼け、上裸だ。 背中には彼の背中ほど大きな斧を背負っている。
「さぁ、どうなるかな?」
ブレクはとてもワクワクした様子で話す、ブレクは面白いものが好きだ。 この事は、ブレクにとって面白い事らしい。
他の皆はそんなブレクを、ただ見つめていた。
城
(ダルい……)
キワミはベットの上で辛そうに寝ている。 今彼女は体調不良のようだ。 体がだるく、目眩と吐き気がする。
「ッ!」
キワミは慌ててお腹を押さえる、いきなりお腹に激痛が走ったのだ。 その痛みはなかなか鳴り止まない。
「はぁ……はぁ……」
やっとお腹の痛みが止んだ。 キワミは安心して手をお腹から離し、また寝始める。
(でも、頑張らないと……)
キワミは決心する。 この痛みと戦い、その後の幸せを手に入れると。
(水……)
キワミは喉を渇く。 だがこの部屋に水はない、外に行くしか方法は無さそうだ。
(行くか……)
キワミはゆっくり立ち上がる。 何十秒もの時間を費やし、やっと扉の前まで来る。
扉を開け、水が飲める場所に移動する。 その道中、彼女は見つけた。 トタロウだ。
トタロウはキワミとすれ違う時ちらりとキワミの方を見る。 昨日のことが忘れられないのだ。 なぜキワミはルイカとココロの間を無理矢理通り抜けて、無視したのか。
「何見てんのよ」
キワミがトタロウに質問を投げかける。 トタロウはキョトンとした顔で質問し返した。
「え?」
キワミはストレスをぶつけるように話し続ける。
「だがら、何見てんのよって。 あまり見ないでくれる? 汚れが伝染る」
トタロウは呆れたように話す。
「汚れって……」
「話しかけないで! 強いスキル持ってるだか知らないけど、調子乗ってんじゃないわよ」
(何だコイツ……)
トタロウは初めて彼女と話したが、キワミのイメージは変わることはなかった。 むしろ悪くなった。
キワミはそのまま長い廊下を歩いていく。 気がついたら彼女はトタロウの視界から消えていた。
トタロウは気を変えルイカの部屋に訪れる。 扉をノックし、ルイカが勢いよく出て来た。 トタロウはルイカの部屋の中に入る、そこにはノシャ、コザガ、ヒナタ、ヤロウがいた。
「こんなに揃って……どうしたんだ?」
「トタロウ、お前ギルドランク上がったんだってな」
「ああそうだけど」
「俺にもEランクの任務受けさせてくれよ、できるだろ?」
どうやらこの人数でEランクの任務を受けに行くらしい。 トタロウはOKを出し、皆はギルドのある翌日に備えて自分の部屋に戻る。 トタロウも、自分の部屋に戻っていった。
トタロウが自分の部屋に戻る途中、またクラスメイトと会った。 今度はキワミじゃない、ココロだ。
ココロは不気味に笑いながらトタロウに話しかけてくる。
「あの、あなた……強いスキルを持ってるんでしたよね? ヒヒ……」
「え? ああまぁそう……だけど」
ココロは照れながらある提案をする。 そしてトタロウの顔は青ざめた。
「イヒ……その……血液検査してくれませんか? あの、その……実験……したいので」
ココロはどこからともなく注射器を取り出し、針をトタロウの腕間近に近づける。
「えっちょちょちょ、待って! まだ一言もOKって言ってないんだけど!? 後今ここで採血するの!?」
「あっすみません……じゃあ私の部屋に……」
「いやだから良いと言ってないんだけど……」
ココロは少し泣きそうな顔でトタロウに頼み込む。
「お願いします! これで新しい毒……薬を作れるかもしれないんです!」
「今毒って言った……!?」
その後半ば強制的にココロの部屋に連れ込まれ、強制的に採血させられた。
「ありがとうございます……!」
(結局刺された……)
ココロはその採血した血を、自分の手のひらの上に流し始めた。 トタロウは慌てる。
「ちょっと! 何してんの!?」
「へ? ああ毒……薬を作ってるんです」
(もうここまで来たら毒って言えばいいのに……)
ココロは目を瞑り何やら念じ始めた。 スキルで毒を作っている最中らしい。 そして数秒後……
「できました!」
ココロは満足そうにそう言う。
「もうできたの?」
トタロウは質問する。 本当に毒ができたのか。
「試しに打ってみます?」
「あっ大丈夫です」
ココロはこの毒について説明し始めた。
「これは人間に使うと猛毒で即死するんですが、魔物に使うとどんな怪我や病気も治すことができるんです!」
(それ使い道あるのかなあ……)
トタロウは心の中でそう思う。
「今日はありがとうございました。 まだこの毒を完ぺきに完成させるのに1週間はかかりそうなので、良かったら……明日も……イヒヒ……」
「遠慮しておきます」
「そうですか……」
トタロウは部屋を出る、その瞬間腕に衝撃が走った。
「トタロウー!」
ルイカがトタロウの腕に勢いよく突っ込んできたのだ。 トタロウは悶える。
「ぐうッ……ピンポイントで注射された所を……」
「なんかごめん……これ渡しに来たの」
ルイカは紙袋をトタロウにあげる。 トタロウが中身をのぞくと、そこには服が入っていた。
「これは……?」
「ステーキおごってくれたお礼、安く売ってたから」
「それはありがたいけど、あまり安いから買ったとかは言わないでほしいな」
トタロウはルイカと話した後、自分の部屋へと戻っていった。
キワミの部屋
「ふぅーッ ふぅーッ ふぅーッ」
キワミはベットの上で四つん這いになり悶えている。 お腹の痛みがどんどんと強くなっているのだ。
お腹が張り裂けそうなほど膨らんでいる。 それは次第に大きくなっていき、そして……
「……ふう」
お腹の痛みはなくなった。 キワミは倒れるようにベットで寝転がる。 香水を取り出し、顔に吹きかけた。
森から離れた洋館
「順調です。 ブレク様」
ヒソムはブレクに話しかける、ブレクは満足そうに紙を見ている。
「順調か……早く面白い物が見れそうだよ、後どれくらいだっけ、エス」
「この調子なら1週間くらいだと思われます」
「1週間か、それまで気長に待っていよう」
ブレクは紙をたたみ、その紙をヒソムに渡す。 ブレクはキワミのことについて話し始めた。
「キワミ……綺麗な人だなあ……ワクワクするよ、彼女が人間じゃなくなるとこ」
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