修行する話
前回までのあらすじ
仲直りした。
「修行……ですか?」
トタロウはツルに聞く。 いきなりツルが修行をすると言い出したのだ。
「あぁそうだ、これから2週間くらいな……」
トタロウは何を言い出すのか身構える。 無人島生活か、めっちゃデカイ魔物討伐か、はたまたツル本人と戦うのか……
「お前のスキルを一日一回限界まで使え」
「えっそれだけ?」
トタロウの修行が、今始まる。
1日目
今日は久しぶりにギルドに行く日。 もちろん魔物討伐、それもかなりの大物だ。
今日は一人だけなのが少し心配だが、気にしてもしょうがないので任務をこなしていく。
トタロウがしばらく歩いていると、今回のターゲットを発見した。 それは図体のでかい狼で、角が生えている。 いかにも凶暴そうだ。
狼がこちらを見てくるや否や、トタロウに向かって突っ込んできた。
(スキル発動!)
トタロウは心の中でそう念じ、狼に向かってパンチをお見舞いする。 狼の上半身は粉々に砕け散った。 これで今日の任務は終わりだ。
1日目の夜
トタロウは城の近くにある森に来ていた。 まだスキルを限界まで使っていないからだ。 ちょうど良さそうな木を探し、殴る。
木が砕け散る。 よく見てみると奥の木まで砕けている。 今度は力を抑え殴ってみる、この力を使うには加減が必要だ。
バキッ! バキッ! バキッ!
(スキルが出なくなった。 これで今日は終わりか)
結局、力を抑えて一つだけの木に絞ることはできなかった。 どうやっても奥の方の木まで被害が及んでしまう。
あたりはもう暗い。 トタロウは城へと戻っていった。
2日目
今日もやることは1日目と同じだ。 ギルドで魔物を討伐しにいき、夜は森で修行する。
だが、やっぱり力加減がきかない。 どうしても周りに被害が及んでしまう。
トタロウはこれでいいのかと思いながら、今日も城へと帰っていった。
3日目
「ランクアップ……ですか?」
トタロウは受付嬢にそう聞く。 ギルドは強さによってランクが変わっていく。 トタロウはランクアップと判断されたのだ。
「そう、ランクアップ。 1アップしてEランクに上がるわよ」
受付嬢がEランク用の任務をカウンターからテーブルに運んでくる。 そこにはFランクの時より強い魔物討伐があった。 トタロウはそれを選ぶ。
初めてのEランク任務は、ドラゴン討伐だ。
トタロウは岩山を歩く。 ここにドラゴンがいるのだ。 足場は不安定で滑りやすい、トタロウは落ちないように気をつけながら歩いていく。
しばらく登り続けると、頂上にドラゴンはいた。 赤い身体、黄色の瞳、5メートルはある図体、間違いない、今回のターゲットのドラゴンだ。
(スキル発動!)
トタロウはそう念じ、スキルを発動させる。 今回も勢いよくパンチ……
だがそう簡単にはいかなかった、ドラゴンはそのパンチを避ける。 そしてお返しするようにドラゴンはトタロウに向かって火を吹いた。
「熱っ!!」
トタロウは腕で炎をガードし今度はキックをお見舞いする。 トタロウが蹴った地面に無数に転がっている石がドラゴンへと向かっていく。
それはまるで銃弾のようだった。 トラゴンの首元に命中し、ドラゴンは唸る。
しかし、まだドラゴンは生きている。 なかなかの強敵だ。 トタロウは一旦スキルを解除する。
(かなり強いな……本当にEランクなのか?)
ギルド
「ねー、ほんとに良かったんすか?」
受付嬢は心配そうに質問する。 答えたのはツルだ。
「何がだ」
「とぼけないでくださいよ。 あのドラゴン、Aランク用の魔物なんですよ?」
あのドラゴンはAランクの人が受ける任務だった。 トタロウがギルドに来る少し前、ツルが受付嬢にトタロウはAランクの任務を受けるよう頼んだのだ。
「心配ない。 アイツは充分Aランクの強さを持ってる。 たが、アイツはもっと強くならなきゃいけない」
「もし……何かあったら?」
「その時は、俺が何とかする」
岩山
「はぁ……はぁ……」
トタロウは大分疲れている。 なかなかドラゴンが倒せないようだ。 もうすぐスキルも限界が来る、その前までに倒さなければいけない。
「オラァッ!!」
トタロウは久しぶりに本気のパンチをドラゴンに喰らわせる。 当たるかどうかなんて関係ない、ただただ本気のパンチをしたのだ。 すると……
ドラゴンの顔は無くなった。 トタロウのパンチにより顔が吹き飛んだのだ。 しかし、ドラゴンとトタロウは数メートル離れている、パンチなんて当たるはずがない。
風、それが答えだ。 トタロウがパンチした時の風力により、ドラゴンの顔は吹っ飛んだのだ。
(終わった……)
トタロウは糸が切れたように地面に倒れる。 久々に本気を出して疲れたようだ。 しばらく休んでいると、人の足音がトタロウの耳に入ってくる。
その足音の正体は、ツルだった。
(ツル……さん……ふわあ、眠い……)
トタロウは疲労が溜まっている。 ツルがトタロウのもとに来るより先に眠ってしまった。
4日目
(ん……朝?)
トタロウは今が朝だということを感じ取った。 そしてその次に昨日ドラゴン討伐したあとそのまま朝まで眠っていたことを理解した。
「起きたか」
隣で声が聞こえる、ツルだ。
「よくやったな、その力があればお前は無敵になれる」
「ツルさん……」
トタロウが何か言おうとする前にツルが口を開く。
「ステータスカードを見てみろ」
トタロウはポケットに入っているステータスカードを確認する。 そこには……
「あれ? ステータスが上がってる」
トタロウの全ステータスが、少し上がっているのだ。 ツルが説明を始める。
「そのステータスカードは持っている人の現時点での強さを表示する。 お前は強くなった、これからもそのステータスを増やしていってほしい」
「もちろん、ステータスは下がる時もあるから気を抜くなよ」
「今度は水辺に住んでる魔物の討伐に……」
「あの! ツルさん!」
トタロウは叫ぶようにツルの名前を呼ぶ。
「俺……力加減も学びたいんです。 確かに力をつけることは大切ですけど、この力は今の俺が持つには大きすぎる……だから、力加減を学んでいきたい」
ツルはハッと我に返ったような顔をし、話し始める。
「すまない、修行はこれで終了する。 休んでくれ」
ツルはそのまま、トタロウの部屋を出ていった。
長い廊下を、ツル一人が歩いていく。 その後ろから、人がツルに向かって走ってくる。
「ツールちゃん!」
「サーベか」
サーベは話し始める。
「どう? 落ち着いた? トタロウちゃんを強くするって意気込んでたけど」
「すまない、その時は少しムキになってた」
「ふーん……」
「少し焦ってたんだ。 予想外の敵が来て、世界を救う可能性があるヤツを殺されそうになった」
「俺は少し頭を冷やす。 じゃあな」
「バイバイ〜」
ツルは自分の部屋へ、休みに戻っていった。
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