仲直りする話
前回までのあらすじ
決着ついた。
城の部屋
「うわ〜、これは酷い怪我だね」
「いっでで……」
ヤロウは悶える。 怪我した踵を触られたのだ。 触ったのは柊 回福という名前の女子だ。 生徒たちの中で唯一回復のスキルを持っている。 背は少し小さく、ふっくらしている。
カイフクがヤロウの踵に触ると、みるみるうちに傷口が塞がっていく。 やがて、傷は完全に無くなる。 まるで最初から怪我していなかったみたいに。
「おおすごい!」
ヒナタとコザガがカイフクを褒める。 カイフクは照れくさそうにしている。 次はコザガだ、カイフクはコザガの頬に手を当てる。
「腫れてるね、誰かに殴られたの?」
「あーいや……まぁうん……」
三人は気まずそうに答えた。 そうしてるうちにコザガの頬も治っていく。 トタロウはそんな三人をただ見ていた。
「ヒヒ……イヒヒ……」
奥の方からこの中の5人じゃない声が聞こえる。 不気味な声だ。
「だっ誰だ?」
ヤロウは少し震えた声で聞く。 返事は返ってこない、だが少しずつこちらへ近づいてくる。
「もう〜あんま驚かさないでよ」
カイフクが呆れたようにその人に言う。 姿が見えてきた、それはクラスメイトの独蛾 蟲蟲髏 だった。 カイフクの友達で、たまにルイカとも喋っている。 背はカイフクよりも小さく、髪は足まで伸びていて、目は紫の中を円で描いていて不気味だ。
「あぁ……ココロか」
ヤロウが安心したように言う。 だが少ししてまたさっきの恐れている表情に戻った。
「あの……これを打ってもらっていいですか?」
ココロはポケットから注射を取り出す。 注射器の中身は紫で、どう考えても危ないことが分かる。
「えっちょなにそれ……」
ヤロウは困惑している。 ココロはこの注射について説明しだした。
「これは私のスキルで作った毒……薬です」
「今毒って言った!?」
「あっいや薬です……多分」
「もぉーあんま怖がらせないの」
カイフクがココロを止める。 ココロは残念そうに奥の方へ戻っていった。
「あの子実験とかが好きで自分のスキルを使って実験してるんです。 多分あなたたちを新しい毒薬の材料に」
「こわっ……」
「それより、怪我は治りましたか?」
カイフクは話を変える。 ヤロウとコザガは怪我した箇所に手を当て治っていることを確認する。
「うん治ってるよ、ありがとう」
「いえ、どういたしまして」
4人は礼を言ったあと、部屋から出る。 そこにはツルがいた。
「怪我は治ったか?」
「はい、すっかり元気になりました!」
「それはよかった……これを渡しに来たんだ」
ツルは胸ポケットから封筒を4枚取り出す、そこにはお金が入っていた。
「これは……?」
トタロウがツルに聞く。
「アイツを倒したお礼だ。 王にあったら礼を言うんだな」
トタロウたちはそれぞれのポケットにお金を隠した。 だが……
「なにそれ!? お金!?」
「ルッルイカ!?」
そこにはルイカがいた。 目を輝かせながらポケットに隠したお金を見ている。
トタロウは何かを察した。
翌日
「じゃあいっただきま~す!」
トタロウ、ルイカ、ノシャ、コザガ、ヤロウ、ヒナタは街のレストランに来ていた。
しばらくすると巨大なステーキがトタロウたちのテーブルに出てくる。 大食いチャレンジのヤツだ。
「結局こうなるのか……」
トタロウは落胆する。 このステーキはトタロウが貰ったお金で買っているのだ。
「まぁ、ははは……」
ノシャは苦笑いする。 慰めようとしたが言葉が見つからないらしい。
「うんめええええ!」
ヤロウたちが叫ぶ。 それほどこのステーキは美味いらしい。 トタロウも負けじとステーキに喰らいつく。
「お前ら……俺の金で買ってんだから俺に多く食わせろよ」
皆は無視しながら食べ進めていく。
(コイツラ……)
「じゃあ、俺のやるよ。 お前らにも」
コザガは自分の分のステーキをトタロウ、ヤロウ、ヒナタに渡す。
「その、すまなかったな……俺も死にそうになってお前らがどんな気持ちだったのか分かったんだ」
「コザガ……」
「まぁ、今は楽しもうぜ」
ヤロウとヒナタはコザガに貰った分のステーキをトタロウに渡す。
「お前、オレに多く食わせろって言ったよな? ウプッ……」
「……は?」
ヤロウとヒナタはもう既にお腹いっぱいでトタロウに渡してきたようだ。 1人分でかなりの量があるらしい。
「じゃあ、俺からももっと」
「じゃあ私も!」
「じゃあ僕も」
次々とどデカいステーキの残りがトタロウのもとへ向かってくる。
(結局……こうなるのか!?)
トタロウはさっき言ったことを後悔しながらステーキを食べすすめた。
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