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トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

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第94話 猛攻

挿絵(By みてみん)





 リア・ヒトラーが展開するのは、独創世界『千年帝国』。

 

 ローマやアテネを彷彿とさせる、古典的な建造物が立ち並ぶ。


 ドイツの首都ベルリンを参考とし、その中心地を魔改造した設計。


 リアの企画ではなく、とあるドイツ人が考えていた計画を引き継いだ。


 ――建築家アルベルト・シュペーア。


 ドイツ帝国時代の権力者、アドルフ・ヒトラーの幹部。


 主任建築家として任命され、新首都計画の構想をした人物。


 第二次大戦の勝利を見据え、世界最大の都市になる予定だった。


 しかし、ドイツ帝国の敗戦により、計画は水泡に帰すことになった。


 幻とも言える都市計画は、皮肉にもヒトラーの孫娘によって叶えられる。


「第二陣、前へ! 一斉掃射!!」


 東西南北の道路上から放たれるのは、歩兵部隊の銃撃。


 第二次大戦時に使われた世界初の突撃銃、StG44の後継品。


 規格やデザインはそのままに、革新的技術を備え、現代に蘇る。


 ――StG88。


 7.92mm口径から放たれるのは、電磁加速されたエネルギー弾。


 実弾ではなく、超高温のプラズマを照射し、触れた対象を焼灼する。


「――――――――」


 一斉掃射により、スサノオの周辺は一瞬で気化。


 黒煙とガスを噴き上がり、中央道路は黒色に染まる。


 念動力で無力化したとしても、気化したガスは防げない。


 大量の一酸化炭素がヘモグロビンと結合し、酸素供給を阻害。


 30秒以内に呼吸困難を引き起こし、1~2分で意識喪失に陥る濃度。


 ――ただ、相手は名のある神。


 逸話通りなら、神の中でもトップクラスの戦闘力を誇る。


 リアは油断も慢心もせず、黒煙に向けて、次の命令を下した。 


「第三陣、息つく暇も与えず、焼き払え!!!」


 指示を受け、照準を定めるのは、上空にいる戦闘機。


 重力制御によりホバリングを可能とし、数々の兵器を搭載。


 第二次大戦時に開発したステルス爆撃機、ホルテンHo229の後継。


 ――ルフトファルケ229。


 胴体と翼が一体化した『全翼機』と呼ばれるデザインを誇る。


 機体に明確な胴体がなく、翼が宙に浮かんだような印象を与える。


 戦闘機ながら鳥のようなシルエットを持ち、漆黒のフォルムが特徴的。


 ――空中で待機するのは9機。


 それぞれの機内では、黒煙が上がる中央道路に照準を固定。


 操縦棍のトリガーに指をかけ、9名の操縦士は同時に言い放った。


「「「「「「「「「―――了解フェアシュタンドゥン」」」」」」」」」


 機体下部から放たれたのは、9発のミサイルだった。


 本来なら、【火】の概念が失われた今、使用は不可能。


 燃料と酸化剤の化学反応が起こらず、射出するのは困難。


 独創世界でも同じであり、概念を書き換える必要があった。


 ――しかし、当機の質量投射装置マスドライバーなら可能。


 コイルガンの技術を利用し、超伝導磁場を発生させ、射出する。


 【火】の概念を用いずに、ミサイル兵器の運用が可能となっていた。


 残る問題は、現環境の中でも十分な火力を発揮できるかどうかだった。


「――――――――」


 マッハ10に迫る極超音速で、9発のミサイルは中央道路に直撃。


 熱と衝撃波に変換され、【火】を用いない疑似的爆発を引き起こす。


 充満していた黒煙をかき乱し、見えざる道路の視界を明瞭にしていった。


「もう、終わりか?」


 陥没する地面に立つのは、無傷のスサノオだった。


 両手を掲げ、念動力を扱い、猛攻を凌いだのが伺える。


「…………」


 数百メートル先の南道路の先頭に立つリアは、沈黙を貫く。


 俗っぽい反応を示すこともなく、追撃を命じることもなかった。


 ある種の降参のようにも見え、それがスサノオの激情を駆り立てる。


「くっだらねぇ。何が『千年帝国』だ。お前らの消費期限は三分が限界だ!」


 両手の掌から放たれるのは、見えざる衝撃だった。


 意思の力だけで物理的な影響を与える、超能力の一種。


 初動は早く、目で捉えることができず、対処するのは困難。


 少なくとも、養老の滝での戦闘内では、手も足も出せずにいた。


「……吾輩は、それを待っていた」


 衝撃波が差し迫る時、リアは口を開いた。


 眼前に展開されているのは、量子的な壁だった。


「…………」


 届いた衝撃は炸裂するものの、リアまで届かない。


 勢いは衰え、代わりに量子的な壁の濃度が上がっている。


「な、に……?」


 スサノオは初めて動揺の色を見せた。


 不可解な光景を前にして、思考が停止する。


「量子装甲。ここにズラリと並んだ戦車に内包されている機能の一つとなる。内容は、エネルギーを吸収し、壁の強度と出力を増大させる。結界のように自由自在に形を変えることも可能となる。初撃で破られる懸念があったが、お前の衝撃波では上回らないことが証明された。つまるところ……」


 リアは見せつけるように、両手を掲げ、意識を集中させる。


 展開していた量子の壁を凝縮し、スサノオの周囲を覆っていく。


 残るのは、リアの言葉。貶すことも煽ることなく、冷静に言い放つ。


「捕獲完了。吾輩の勝ちだ」

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