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トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

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第91話 我が闘争

挿絵(By みてみん)





 大日本帝国。岐阜県。養老山地内にある、養老の滝。


 吾輩と相対するのは、鬼であり神。矛盾した存在であった。


 自ら『スサノオ』と名乗った以上、どうしても神に気を取られる。


 しかし、本当に気にするべきは別。依り代となっている鬼の方にあった。


「手ぬるいな。第一級悪魔様がそんなもんか?」


 滝下付近で神と拳を交えていると、声がかけられる。


 能力抜きにしたフィジカル勝負。その端的な感想だった。


 しかも、悪魔界での顔と肩書きは割れてしまっているらしい。


 言い逃れるのは少し無理があり、建設的な会話にはならんだろう。


「生憎、肉弾戦は不得手でな。ご希望とあらば本気を出してやらんこともないが、命の保証は出来ん。それでも、受け止める覚悟はあるか?」


 そこで吾輩は、丁寧に前置きを挟み、確認を取る。


 あくまで、この闘いでの目的は『神を満足させること』。


 こちらの本領を発揮すれば、逸脱してしまう可能性があった。


 もちろん他の企みもあったが、許可なしに振るえるものではない。


「俺様に確認を取るか。どうやら立場ってもんを分かってないらしい……」


 吾輩の拳と小十郎の斬撃を両腕で受け止めて、神は言った。


 ここまでセンスを発することなく、己が肉体のみで闘っている。


 四名を相手取り加減していたことになるが、この反応は恐らく……。


「「――っ!!?」」


 神は両手を開くと、見えざる衝撃が体に襲い来る。


 吾輩と小十郎は地面へ叩きつけられ、身動きが取れない。


 致命傷ではなかったが、この能力……。大口を叩くのも頷ける。


「加減は無用……俺様の念動力に死角はねぇ! 最初から全力でこいや!!」


 ◇◇◇


 大日本帝国。三重県。伊勢湾、深夜の海上。


 立ち塞がるのは、イザナミと名乗った神だった。


 海を操り、曲芸のような見栄えのいい波形を見せる。


 一見、手品のようにも見えるが、名前から考えれば本物。


「悪いが、死神に用はない。そこを通してもらえるか?」


 わらわは冷静に状況を受け止め、話しかけた。


 神話を考慮すれば、『死神』が最も適切な表現と言える。


 惹かれ合うのは必然かもしれんが、願うことなら避けて通りたい。


「わたくしは、貴方の中身に用がありましてね。通すわけには参りません」


 思った通りというべきか、イザナミは目的を口にする。


 用があるのは、わらわの中で眠っておる神、『アマテラス』。


 目的とタイミングが一致した時しか現れず、基本は引きこもり。


 どう思うとるかは知らんが、日が昇らない現在は意思疎通ができん。


 少なくとも今は助力を期待できず、現状の戦力で対処する必要があった。


「闘わざるを得んわけか。戦闘は得意分野ではないのだがな」


 避けられない闘いであることを受け入れ、わらわは身構える。


「神だろうが悪魔だろうが、立ち塞がるなら退いてもらうよ」


「死の匂いに釣られてきたか。とんだ貧乏くじだが、やってやる」


 マルタとカモラも構え、センスを発し、臨戦態勢に入る。


 敵の実力は計り知れんかったが、見劣りするような味方でもない。


「加減するほど余裕はなくてな。最初から全力で行かせてもらうぞ!」


 わらわは黄金色の瞳を輝かせ、イザナミの周囲の時を止める。


 恐らく対応されるであろうが、先手としては十分な一手だと言えた。


 ◇◇◇


『最初の命令だ。大日本帝国で虐げられる鬼どもに、居場所を与えろ』


 思い返されるのは、仕える主。ルーカス様の言葉。


 目の前の相手は、鬼であり神。命令違反の可能性もある。 


 倒したいのは山々だったが、本気を出すに出せない状況だった。


 ――だが、手加減できる余裕がない。


「……かはっ!!」


「……歌が、歌えないっ!!!」


 奇襲したナナコと桃子は、スサノオの念動力を前に成す術がない。


 手心を加えず、彼女たちの弱点である角をへし折られれば、絶命する。


 ――推しのピンチ。


 このまま何もせずに見送れば、『桃瀬桃子』の活動は終了する。


 事実を報じられることなく、インターネットの海に埋もれていくだろう。


「息巻いてた割には大したことねぇなぁ。これが底なら終わりにするぜ?」


 両手を掲げるスサノオは、余裕綽々に語る。


 指を握り込もうとする素振りが見え、その先は死。


 吾輩も例外ではなく、二度目の生は容易く終わるだろう。


(私は戦争を望む。私にとって手段は全て正解となる。私のモットーは『何も行わずに、敵を悩ませる』ではない。私のモットーは『完全に全ての手段で相手を倒す』。私は戦争を行う者だ)


 心に思い浮かべるのは、忌々しい祖父の言葉。


 生まれてから付き纏っている罪。目を背けたい事実。


 ただ、この瞬間だけは、互いの目的と手段は一致していた。


「――独創世界『千年帝国』」

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