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トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

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第90話 VS神

挿絵(By みてみん)





 建速須佐之男命タケハヤスサノオノミコト。日本神話の中でも特に有名な神。


 八百万の神々の中でも、五本の指に収まる方でしょう。


 武勇として今でも語り継がれるのは『ヤマタノオロチ退治』。


 八つの頭に八つの尾を持つ蛇を倒した『英雄』と言われています。


 ――奇しくも『蛇』繋がり。


 滅葬具『赤火大蛇』は、『蛇』をモチーフにした三叉槍。


 直接的な因縁こそないでしょうが、運命じみたものを感じます。


「やぁぁぁぁっ!!!!」


 私が横薙ぎに振るうのは、赤い鱗を帯びる槍。


 特殊機構の『赤熱』は使えませんが、威力は十分。


 そんじょそこらにある武器と同じにされては困ります。


「『赤火大蛇』か……。これまた懐かしい物を引っ張り出してきたもんだ」


 滝壺近辺の岩場で待ち構えるスサノオは、勝手知ったる様子。


 横薙ぎを真上に跳んで躱し、物珍しそうな目線を向けていました。


(この反応……。もしや、滅葬具の制作に関わって……)


 予期しない情報を前に、思考は乱れていました。


 余計な妄想を膨らませ、注意が散漫になってしまいます。


「何ぼーっとしてんのさ!! ナナコ!!!」


 そこに聞こえてきたのは、桃子さんの鬼気迫る声でした。


 いつの間にか身体は横抱きにされ、前線を離脱していました。


「……っ」


 立っていた場所に視線を向けると、地面は大きく陥没しています。


 どうやらスサノオの攻撃が振るわれて、私は無防備だったようでした。


 現在はリアさんと小十郎さんが前線を張り、神の相手をしてくれています。


「恩に着ります、桃子さん。助けがなければ、私は……」


「感謝も泣き言も後! 今は目の前の敵にだけ集中して!」


 後ろ暗い言葉をかき消すように語られたのは、前向きな言葉。


 以前なら私の役目でしたが、すっかり社長が板についたようです。


 嬉しいような、寂しいような、複雑な気分でしたが、やることは一つ。


「仰る通りですね。ここからは二重奏デュエット……いいえ、四重奏カルテットと参りましょうか!」


 ◇◇◇


 三重県。伊勢湾。深夜の海上では数名が足を進めていた。


 センスを海面で固定化し、愛知方面へと一直線に向かっている。


「「「…………」」」


 その顔ぶれはマルタ、カモラ、ツバキの三名。


 会話はなく、黙々と目的地の東京都を目指している。


 その最終目的は、カモラに『不老不死』を継承させること。


 そのためには、夜助と接触し、犠牲になってもらう必要があった。


 ツバキの予想では、東京都に向かえば、夜助と遭遇できると踏んでいた。


「一つ聞きたい。『不老不死』を得た先に、お主は何を求める」


 その道すがら、ツバキは晴れやかとは言えない声音で尋ねた。


 向かう先は死。『不老不死』の継承には、夜助とツバキの犠牲が必須。


 命が尽きた後の問題であり、どうしても明るく振る舞うことができずにいた。


「話したところでどうにもならんだろ。死後の世界がそんなに心配か?」


 諸々の事情を知るカモラは、的を得た返答をしていた。


 実際、奴の言う通りで、終わった後の話をしても意味がない。


 知ったところで関与できん。現実的に考えれば、干渉は不可能じゃ。


 ――だとしても。


「これでも骸人から領土を取り戻した一人でな。国の未来を憂う権利がある」


 ツバキは怯むことなく、自身を正当化する理由を並べる。


 なんの客観的な証拠もなく、言ったもん勝ちのような発言。


 嘘のように聞こえるのかもしれんが、紛れもない事実だった。


「はぁ……。根拠に乏しいが話してやる。ここで嘘をつくとは思えんからな」


 話す理由を端的添え、カモラは目的を叶えた先を語ろうとしている。


 恐らく、規模は帝国だけでなく、全世界に関わる問題に直結するだろう。


 ――これで、善か悪か分かる。


 相手も嘘をつく必要がなく、本心を述べるはず。


 場合によっては、策を講じることも視野に入れるべき案件。


 その行く末を決めるのは、間違いなくカモラの内に秘める野望だった。


「俺が『不老不死』を得た先に見据えているのは――」


 丁寧に前置きを挟み、当の本人は重い口を開こうとしている。


 その瞬間、風が吹き荒び、海上では異常とも言える波が立っていく。


「「「……っ!!!?」」」

 

 三人は察知し、同時にその場から退避する。


 元いた足場に襲い来るのは、荒れ狂う波だった。


 被害こそなかったが、海を操ったのだとしたら脅威。


「面白そうな話をしていらっしいますね。わたくしも混ぜてもらえますか」


 波間から現れたのは、大和撫子風の長い銀髪をした女鬼。


 体躯は平均よりも小さく、紅白の巫女服に袖を通しておった。


 口調こそ違ったものの、身体的な特徴から導き出されるのは一人。


「お前は、鬼道きどうあおい……っ! どうしてこんなところをうろついておる!!」


「それは、依り代の名前。今宵はどうか、伊邪那美命イザナミノミコトとお呼びくださいませ」


 誰でもない葵の口から開示されたのは、由緒ある神の名前。


 『天国の門』の一件。それが無視できぬ障害となろうとしていた。

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