表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/269

第83話 得意分野

挿絵(By みてみん)





 『魔獣化』には、いくつかの進化段階があった。


・状態1。部分的な『魔獣化』。手や足だけを獣に変える。


・状態2。大部分の『魔獣化』。身体の半分以上を獣に変える。


・状態3。全身の『魔獣化』。人型を保ちつつ、全身を獣に変える。


・状態4。完全な『魔獣化』。獣本来の姿やスペックを完全に再現する。


 一般市民に広く知れ渡っているのは、状態3まで。


 神聖なものとして扱われるけど、その副作用を知らない。


 状態が進むごとに自我を失い、状態4になれば高確率で暴走する。


「…………」


 僕は状態3を維持しながら、変電所内を駆けていた。


 人格の主導権は獣側にあり、上手くコントロールできない。


 自分の意思で解くことはできるけど、それ以外は干渉不能だった。

 

 基本、眺めることしかできず、こちらの都合や事情は大体シカトされる。


 ――半暴走状態。


 精神的に調伏すれば、操ることができるらしい。


 噂には聞いているけど、その条件は簡単じゃなかった。

 

 従えるには、表と同等の精神体を倒さないといけないみたい。


『儂に抗ってみるか? 小童よ』


 心を読んだのか、声をかけてきたのは内なる獣だった。


 長い白髪、額に一本角を生やし、白の制服を着こなしている。


 完全な獣の状態じゃなく、僕の体をベースにした状態で接していた。


 ――噂は本当だった。


 状態3を使ったのは、これで通算二回目。


 一回目は声に耳を傾ける余裕もなく、暴走した。


 あの時とは違う。今回は僕にも選ぶ権利が存在している。


「やるさ。もう二度と君の思い通りにはさせない」


 ◇◇◇


 停電開始から10分経過。バイカルヴェイ北部。変電所内。


 剥き出しの変電設備が見送りつつ、向かうのは中心じゃった。


 電力供給に致命的損害を与えるには、『変圧器』を潰すんがベスト。


 ――じゃが、狙いは他にもあった。


「「…………」」


 うちと獣人がたどり着いたのは、『変圧器』の前。


 ここまで、壊す側と止める側の小競り合いが続いとった。


 じゃが、足を止めた。その意味が分からんほど敵は馬鹿じゃない。


「鬼ごっこは終わりか。確かにここは……少々やりにくい」


 結論を言わないまでも、思惑を見抜いた様子。


 今までの攻防を考えりゃあ、バレて当然とも言える。


 じゃとしても、優位は揺るがん。勝つために、ここに来た。


「分かっとるなら、遠慮なく活用させてもらう。この『足手纏い』をなぁ!!」


 うちが振るう正拳の先あるのは、『変圧器』。


 電力を直す側からすりゃあ、壊されて困るもんじゃ。


 その前提なら、敵の行動を大幅に制限することが可能となる。


「――――」


 結果、可能となったのは、近接戦闘じゃった。


 獣人は両手を重ね、放った正拳突きを受け止める。


 周囲に浮かべる電気玉は使わず、体術で対応しとった。


 半端に動かせば、設備を壊す。完全にうちの土俵じゃった。


「――――りゃああああっ!!!!」


 うちの繰り出すのは、無数の正拳突きじゃった。


 攻防力7対3の黄金比でセンスを維持し、正中線を狙う。


 基礎の応酬。古武術『般若無道流』においての王道と言えた。


「…………」


 拳の延長線上には、『変圧器』。避ければ壊される。


 相手は受ける以外の選択肢がのうて、防戦一方となる。


 しかし、拳を受け切って、大した痛手は負っとらんかった。


「さすがにやりよるね。じゃが――っ!!!」


 それならと、うちは拳速を上げ、突きを繰り返す。


 相手がいかな化け物じゃろうと、対応力には限界がある。


 それを見極めるためにも、この攻防はどうしても外せんかった。


「攻めるのはわし。そう言ったのは、うぬだったな?」


 息を切らさず、完璧に受け切る獣人は声をかけてくる。


 赤子の手をひねるような、そんな強者の余裕が感じられた。

 

「……っっっ」


 感じ取るのは、濃厚な死の気配。底知れないセンス。


 逃げ出したい気持ちに駆られ、拳速が衰えそうになった。


 それでも一歩踏みとどまって、あくまで接近戦にこだわった。


 ――離れた時こそ一貫の終わり。


 均衡が保たれているのは、得意な土俵だからこそ。


 遠距離戦に移行した時点で詰み。それは分かっとった。


 負けるにしても接近戦で。そう決めたからこそ命を張れる。


「ええから全力でこんかい!! 物足りん言うたじゃろうが!!!」


 虚勢を張り、うちは接近戦以外の選択肢を削いだ。


 不思議と力が漲り、体感で過去最高の顕在センスを更新。


 この土壇場で、肉体と精神が更なる高みへと進もうとしとった。


「よかろう。人の期待に応えるのも儂の宿命」


 しかし、響いたのはパシッという乾いた音じゃった。


 獣人は限界に超えた拳を見切り、手で掴んで止めとった。


「くっっ!!」


 空いた拳で反撃を試みるも、先ほどと同じく鷲掴み。


 両拳を封じられ、身動きが取れず、致命的な隙を晒した状態。


「――容易く壊れてくれるなよ!!!!」


 そこに振るわれたのは、なんの忖度もない蹴り。


 攻防力を全集中させ、うちの無防備な鳩尾へと迫った。

 

「……壊れるんは、お前じゃあぁぁぁあああっ!!!!!!」


 得意分野が使えない状態で、うちが振るったのは頭。


 背後に振りかぶり、出し得る攻防力の全てを集め、放つ。


「「―――ッッッ!!!!!!」」


 異色の閃光が迸り、両者の全力。蹴りと頭突きが炸裂する。


 一瞬の油断も許されない攻防。センスが途切れた方が押し負ける。


「褒めて遣わす。『人』にしては健闘した方だろう」


 手応えで勝利を確信したのか、獣人は涼し気に語る。


 上から目線。強者の余裕。人を見下し、獣を優位とする。


 言いたいことは山ほどある。言い返したい言葉が頭に浮かぶ。


 じゃが、やるべきことは他にある。本質を見誤るわけにはいかん。


 ここで口にするべき最適な語句は――。


「――――超徹甲拳シェルインパクトっ!!!!!!」


 放つのは必殺。硬い鱗を穿つ、防御無視の一撃じゃった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ