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トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

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第79話 壊す側と直す側

挿絵(By みてみん)





 覚醒都市バイカルヴェイ北部。変電所近辺。

 

 電力を変圧し、家庭に安定供給するための要所。


 幾重に張られた電線が、倒れた鉄塔に向け、伸びる。


 屋外構造で遮蔽物はなく、主要な設備は剥き出しの状態。


 周囲は金網に覆われているだけで、警備も防備も手薄だった。 


 鉄塔が倒れ、停電する今、変圧器を狙い撃ったのには理由がある。


 ――『電力の根絶』。


 この都市の人間は、電気に頼り過ぎている。


 生活には欠かせず、あって当たり前のように使う。


 『白龍ジーク』の犠牲の上で成り立ってるのを知らない。


 事情を説明し、解放させるのが最優先事項だが、焦りは禁物。


 全住民の同意を得るためには、電力がない方が有利に運びやすい。


 現実を突きつけ、目を覚まさせるためには、段階を踏む必要があった。


 ――『変圧器』を叩けば、停電は長期に渡る。


 設備に必要な素材は貴重で、一度壊れてしまえば修理困難。


 供給源の『電気』は健在だが、電圧を下げないと供給できない。


 そのまま垂れ流せば、家電はショートし、死人が出る可能性もある。


 それじゃあ、テロリストと同じだ。人々の賛同を得られるとは思えない。


 住民を傷つけず、電力がない状態に慣らすには、変圧器破壊がベストだった。


(ひとまず……計画の第二段階は終了ってところか)


 ジーナは、変圧器に向けて放った弾丸の行く末を見守る。


 間違いなく届くし、貫く。アレクセイの妨害は間に合わない。


 後は黒幕をベズドナに仕立て上げ、周知すれば、目標実現に近付く。


「な、に……」


 しかし、視界に入り込んでできたのは、予想外の光景。


 見覚えのある短い銀髪の少女が、変圧器の前で倒れている。


 初等教育課程の白の制服を着ており、その中でも上澄みの生徒。


 他人とは思えない存在が、弾丸を身体で受け、致命傷を負っている。


 冷ややかな汗が流れ、彼女を撃ち抜いた責任が身体と精神にのしかかる。


「悪いが、隙だらけだ。……事情は司令部の『尋問室』で聞かせてもらうぞ」


 致命的な遅れを生み、そこに響いたのはアレクセイの冷静沈着な声。


 不意を突かれ、起きた事態を受け止めきれないまま、意識は暗転していった。


 ◇◇◇


 変圧器の破壊は、ソーニャの犠牲によって阻止された。


 具体的に言うなら、彼女の意思能力の分身消滅と引き換え。


 命が奪われたわけじゃないからまだいいけど、先行きは不安定。


「……先生、二次側送電用の鉄塔は修理できそう?」


 ジーノは倒れた鉄塔を見つめ、冷静に尋ねる。


 ソーニャの容態から考えて、あまり長く持たない。


 停電が長引くほどに、『魔獣化』の暴走リスクが上がる。


 医療ポッドの電力供給に不可欠な鉄塔の修理は、急務だった。


「幸い、変圧器は無事ですから、二時間もあれば最低限の……」


 復旧能力を有するロザリアは、ある程度の目算を立てる。


 恐らく、先生のことだから、確実に修理できる時間のはずだ。


「駄目だ。それじゃあ遅すぎる。多分、一時間以内じゃないと厳しい」


 敬語を使う時間すら惜しく、ジーノは端的に目標時間を指定した。


 『魔獣化』の進行を抑える液体――『サイロスタシス』は冷却が必須。

 

 それには大量の電力が必要で、チンタラしているうちに患者が暴走する。


 ――そのデッドラインは恐らく『一時間』。


 病棟側の自助努力を考慮した上でも、それが限界。


 そこから先は、取返しのつかない危険領域に入ってくる。

 

「最善を尽くします。ただ、修理中は――」


「分かってる。僕が守ってあげるから、作業に集中して」


 言葉遣いを責め立てることなく、必要な会話を交わす。


 緊急時に余計な説教に時間を割くほど、先生は馬鹿じゃない。


 すぐさま作業に取り掛かり、倒れた鉄塔の土台部分に移動していた。


「さて……もう出てきてもいいよ。そっちは直されたら困るんでしょ」


 ジーノは変電所の物陰に視線を送り、言葉を投げかける。


 それらしい気配はなかったけど、敵がいるのは状況的に確実。


 勢力は、『停電を起こす』側と『停電を直す』側で二分されている。


 鉄塔を倒した犯人がいる以上、揺るぎのない事実で、放置はあり得ない。


 ――間違いなく、妨害してくる。


 そのためには、近くにいる必要があり、声が届く位置にいるはず。


 だから、声をかけた。相反する目的だからこそ、両者の意見は一致する。


「ええ読みしとるの。分かっとるなら話は早い」


 物陰から現れたのは、女性用の白い憲兵服を着た人。


 ヘルメットを外し、外側に跳ねる茶髪を露わにしている。


 拳を握り込み、赤いセンスを纏い、万全の体勢で付け加える。


「子供じゃろうが平等にぶち回したるから、覚悟せぇよ!!!」

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