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トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

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第75話 黎明期

挿絵(By みてみん)





 約100年前。現在地不明。巨大生物の口内。


 規格外の歯と歯茎と舌と喉仏が見える、広い空間。


 約25万人の難民と馬車や積み荷がスッポリ収まっている。


 ――口内だけで要塞級。


 夢や幻だと真っ先に考えるのが自然な反応。


 浮世外れした光景を前にして、誰もが目を疑った。


 ただ、白軍の対応は早く、事態把握と生存報告が終わる。


 亡命者に結果と事情を説明し、落ち着きを取り戻しかけていた。


 ――そんな中、俺はアレクセイの元を訪ねていた。


「白軍に入りたいだと? お前、正気か?」


 提案したのは、軍への自発的な志願だった。


 アレクセイは眉をひそめ、侮蔑の目線をくれている。


 温室育ちの貴族に務まるわけがない。そう顔に書かれていた。


「正気だし、本気マジだ。人手は多いに越したことはないだろ?」


「無能な味方が一番いらん。軍の統率が乱れ、混乱を招く。自重しろ」


 体のいい理由を並べるが、バッサリと否定される。


 格下だと決めつけられて、相手にもされていなかった。


 品定めされてるみたいで、腹が立つ。ただの一般兵の癖に。

  

「御託はいいから入れてみろ。有能な人材を見誤るのが一番の無能だぞ」


 俺は真意を隠し、確固たる自信をもって、挑発的に告げた。


 それが功を奏したのか、俺は白軍の一般兵として入隊することになる。 


 ◇◇◇


 数日が経過して、石橋を叩いて渡るような調査が続く。


 巨大生物体内を隈なく調べ、安全なら前進するを繰り返す。


 最後尾は憲兵と亡命者。最前線では白軍の特殊部隊が担当する。


 ――通称『コサック部隊』。


 セルゲイ少尉が指揮官となり、部隊規模は30名。


 元々は地域を自治するために作られた、軍事共同体。


 国家が管理する正規軍とは異なり、準正規軍という位置。


 常識の範囲内なら自由な行動が許される、特殊な軍隊だった。


 見方を変えるなら、いつ死んでもいい『捨て駒部隊』ってわけだ。


 俺とアレクセイはそこに配属され、最前線の石橋叩き役になっていた。


「お前らには一切期待しておらんが、成果は出せ。いいな?」


 中咽頭でセルゲイが下した最初の指令は、舐め腐っていた。


 仕事は教えない癖に、成果だけは求める、典型的な駄目上司だ。


 使い捨ての消耗品としか見られておらず、明らかに見下されていた。


 溜息の一つでも吐きたくなるところだが、この部隊には自ら望んで来た。


「「承知しました(スルーシャユス)!」」


 俺とアレクセイは、白の軍服を纏い、声と踵を揃え、敬礼。


 無事、『コサック部隊』に入隊することになり、最前線攻略が始まった。


 ◇◇◇


 数週間が経過し、食料問題が深刻化し始めた頃。


 俺とアレクセイは右側に位置する肺を攻略していた。


 後続隊は気管で待機し、活躍を目撃されない位置にいる。


 『コサック部隊』は基本的に二人一組で動き、下っ端が斥候役。


 攻略部位の情報を上官に報告し、後続隊が手柄を立てるのがデフォ。

 

 斥候する中で、高度なクリアリングが行われていることを奴らは知らない。


「……確認だが、そいつの使い方は分かるな?」


 アレクセイは、右側の気管支に入る直前で尋ねてきた。


 視線の先には、俺が構える単発のボルトアクション式小銃。


 モシン・ナガンをモデルにしているが、本家とは仕様が異なる。


「意思を弾に変え、引き金を引くだけだろ。言われんでも分かってるよ」


「概ねその通りだが、厳密には――」


「初心者講習は後にしてくれ。それよか集中しろ。どうも嫌な感じがするんだ」


 俺は白いセンスを身体に纏い、銃口を気管支に向ける。


 アレクセイは無言で頷き、足並みを揃えて、肺に侵入した。


 いくつも枝分かれする肺胞を見て回って、安全を確認していく。


 右側の肺の上葉部分はクリアリングし、中葉へと足を踏み入れた時。


「こい、つは……っっ」


 見えたのは巨大な空洞と、この世の者とは思えない生物。


 蛇の如く細長く、流線形の身体を持ち、鱗は青く輝いている。


 二本の角に、四本の足があり、口の周辺には長髭を生やしていた。


 実際に見たことはないが、知っている。特徴が一致してしまっている。


「『龍』、だと……っっ!?」


 アレクセイは、空想上の存在の名を口にする。


『――――ッッッッ!!!!!!』


 すると、『龍』はこちらに気付き、強烈な咆哮を飛ばす。


 逃げるという選択肢はない。伝説との死闘が始まった瞬間だった。


 ◇◇◇


「無事か……ジーナ、アレクセイ!」


 帰りを待ちくたびれたセルゲイは単身、中葉に足を踏み入れる。


 後続隊は待機させたままの様子で、冷静な判断じゃないのが伺える。


 少尉らしくない。いつもみたく舐め腐った態度じゃないと燃えてこない。


 ――まぁ、今日だけはいいか。


 意識が朦朧とする中、胸の内はどこかスッキリしている。


 人生をピークを迎えたような晴れ晴れとした気持ちで満ちていた。


「おまえ、ら……っっ。ここで、一体何が!!!!」


 目の色を変えた駄目上司は、ようやく起きた結果に気付く。


「なにって、成果を出しただけですよ、少尉……」


「ただ……ここで起きたことは、最高機密で頼みますね」


 俺とアレクセイは、任務報告を完了し、同時に気を失う。


 その先には、討伐された巨大な『龍』が地面に横たわっていた。

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