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トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

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第68話 不吉

挿絵(By みてみん)




 覚醒都市バイカルヴェイ。教育棟ビル屋上。


 空中を蹴りつけ、現れたのは赤髪白服の成人男性。


 両腕に抱えるジーノを優しく地面に置き、静かに言った。


「決着はついた……。当然だが、殺してはいない……」


 ベクターがダウナー気味に伝えたのは、最低限の情報。


 舌足らずな彼らしいし、観戦した限り手の内も見せてない。


 模擬戦としては100点。結果だけなら文句のつけようがなかった。


 ――ただ。


(上手く行き過ぎね。私の見立てだと、ジーノの方に分があった)


 リーチェが予想した結末とは異なるものだった。


 単なる直感というわけじゃなく、能力抜きなら妥当。


 あの空中戦を見る限り、体術だけなら確実にジーノが上。


 後の戦闘は観測できていないけど、能力を使った痕跡はない。


 体術戦でベクターが勝ったみたいだけど、分不相応な結果だった。


(やっぱり、あの子の中身は――)


 胸の内にあった疑念が、確信に一歩近づく。


 あと一つ有力な情報を落とせば、分かる気がした。


「お見事でした、ベクター。……いいえ、ダンテ・アリギエーリ様」

 

 そう考えていたところに、教師ロザリアは口にする。


 禁断のワード。過程を数段飛ばした上での生き急いだ結論。


 もし事実だとすれば、口封じに全員消される可能性も考えられた。


「……っ!?」


 リーチェは後ろに一歩下がり、身構える。


 周囲の面々の顔色を窺いながら、反応を待った。


「…………」


 当事者となるベクターは、無表情のまま語らない。


 オレグ、エミリア、アレクセイは口を閉ざして、無反応。


 ターニャは疑問符を浮かべ、ソーニャは怪訝そうな表情を作る。

 

(乗っかるべき? 黙っておくべき? それとも――)


 その間にリーチェは、ぐるぐると思考を回した。


 安易に決められないけど、即断即決が求められる場面。


「あのー、お師匠様。……誰です、それ?」


 そこで恐る恐る声を発したのは、ターニャだった。


 こじんまりと片手を上げ、質問する姿勢を取っている。

 

(ナイス質問。これなら矢面に立たずに、どちらにも対応できる)


 静観する方向に切り替え、リーチェは様子を見る。


 この展開なら、なんらかの情報を落としてくれるはず。


 知らないじゃ済まない。名前を出した時点で絶対何かある。


「それはもちろん、物語の……」


 その期待通り、ロザリアは質問に答えようとしていた。


 ただ語り出したのは、ダンテの紹介とは思えないワード。


 どうも先が気になり、素知らぬ顔をして耳を傾けていると。


「また始まった……。ロザリア先生、からかうのやめたら?」


 呆れたような表情で、口を挟んだのはソーニャだった。


 間に受ける様子はなく、むしろ、聞き流しているような感じ。


 師弟という間柄を考えれば、『お決まりのジョーク』みたいな印象。


「失敬。うっかり口を滑らせてしまったようです。今のはお忘れ下さい」


 ロザリアは何事もなかったように話を終わらせた。


 続きを語る様子はなく、このままいけば話題が変わる。


「待って、今の続きを――」


 どうしても堪えきれなくなり、リーチェは口を挟む。


 そんな時、バチンという音が響き、辺りは闇に染まった。


 ――停電。


 不吉の前触れであり、よからぬことが起きそうな凶兆。


 偶然じゃないとすれば、ダンテのことよりも優先すべき事案。


(何か、来る……)


 停電以外の明確な根拠は乏しく、大した気配もない。


 だけど、覚醒都市に大いなる災いが訪れる気がしていた。


 ◇◇◇


超原子拳アトミックインパクト!!!」


 響き渡るのは、広島の威勢のいい声音。炸裂するのは、渾身の右拳。


 拳を向けた対象は鉄塔。覚醒都市の電力の源を、たった一撃で破壊した。


 鉄塔が倒れ、電線が千切れ、漏電する電気を横目にして、その先を見据える。


 ――見えるのは、開いた『煉獄の門』。


 作戦開始の合図であり、都市に混沌をもたらす事件の始まり。


 停電は前触れに過ぎず、更なる悲劇が訪れるのは避けられん展開。

 

「この子ためなら、うちは鬼でも悪魔にでもなる。どうか堪忍してつかぁさい」


 広島は、被害を受けるであろう住民に許しを請う。


 その背中には、未だ目を覚まさないジェノの姿があった。


 ◇◇◇


 一方通行であるはずの内側から開かれたのは『煉獄の門』。


 期待通りというべきか、都市全域には予期せぬ停電が訪れている。


「うんうん、やるべきことはやってくれたようだね」


 先に顔を覗かせたベズドナは、何度も頷きながら語る。


 この様子なら都市機能は麻痺、軍隊は混乱し、対応が遅れる。


 軍部が『煉獄の門』の異常に気付くのを幾分か遅らせられるだろう。


 ――今のところは順調。


 停電が起きない想定もあったが、これなら少し気が楽だ。


 多少の無茶をする必要もなく、攻略に全力を注ぐことができる。


 ただ、ここの連中は馬鹿ばっかりじゃないし、気を抜くのはまだ早い。


「さぁ、気合い入れていこうか。ここからが革命の時間だよ」


 ベズドナは二度ほど手を叩き、背後にいる仲間に声援を送る。


 返事はなかったものの、暗闇に紛れた四人分の足跡が都市に刻まれた。

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