表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/269

第63話 闘争本能

挿絵(By みてみん)





 覚醒都市バイカルヴェイ南部。居住区。教育棟最上階。


 昇降機に乗り込み、12階と表示された先にあったのは屋上。


 周囲のビル群を見渡せ、落下防止用の武骨な手すりが目に入る。


 他には階段、ライン照明、室外機、貯水槽もあったが障害物はない。


 戦うには十分な広さで、眼前には坊ちゃま刈りの金髪少年が立っていた。


『私は今回戦うつもりはないから。……ベクターがやってみたら』


 脳裏に鮮明に蘇るのは、教室内で言われたリーチェの言葉。


 『ジーナ』捜索の協力を得るために、模擬戦を行えという指示だ。


 必ずしも勝つ必要はなく、侵入者の実力を試す側面の方が強いだろう。


(衆目監視の中、どこまで手の内を見せずに認められるか、だな)


 ベクターの肉体に乗り移るダンテは、課題を言語化する。


 背後には、特別教室から移動してきた面々が見守っている。


 相手に知られてはならないのはもちろんだが、味方も同じだ。


 特にリーチェは憑依能力の詳細を知り、疑りをかけている段階。


 それに付随した奥の手もあるが、使えば正体は看破されてしまう。


(面倒だがやるしかあるまい。……少なくとも、リーチェを見定めるまでは)


 『好意の反転』による、リーチェへの好感度の変化。


 部下から詳細な報告を受けたが、和解したわけではない。


 脳内の情報と実際のイメージを擦り合わせ、人格を判断する。


 脅威がないことを確認するまでは、帰るに帰れない状態と言えた。


「お手柔らかにお願いします」


 思考を整理していると、金髪の少年が声を発した。


 右手の拳を左手の掌に当てて、ペコリと頭を下げている。


 ――ジーノ・ロマノフ。


 初等教育課程の上澄み。『白金の道プラチノヴィー・プーチ』に選ばれし一人。


 まだ若く、能力は未知数だが、 侮る理由が一つも存在しない。


「加減は期待するな……。なにせ、『タイマン』だからな……」


 ベクターになりきるダンテは拳を握り、赤いセンスを纏う。


 それにより、魂に流れ込んでくるのは、記憶、経験、能力、詳細。


 『局長』ではなく、『王子』を演じ切る。その最低限の情報は揃っていた。


「――――」


 ジーノは怯むことなく、白いセンスをその身に纏う。


 能力戦を仕掛けてくる気配はなく、体術戦に応じる構え。


 その姿に肉体が疼くのを感じた。遺伝子に刻まれた趣味嗜好。


 タイマン至上主義の血が騒ぎ、闘争を追い求め、筋肉は躍動する。


「たやすく果ててくれるなよ……っ!」


 ダンテは地面を勢いよく蹴りつけ、余りある熱量を拳に乗せる。


 憑依の醍醐味。所有者との魂の交流を心の底から楽しめそうだった。


 ◇◇◇


 トルクメニスタン。首都アシガバート郊外。砂漠地帯。


 そこでは、二対二による激しい戦闘を繰り広げられていた。


 絶え間ない攻防の果てに訪れるのは、至極真っ当な肉体的反応。


「はぁ……はぁ……」


 ダヴィデは息を切らし始めていた。


 右手の盾捌きもキレがなくなりかけている。

 

 ――原因は戦闘経験値の初期化。


 動きに無駄が多いせいで、体力の消耗が激しい。


 頭では理解できていたが、肉体の修正が困難を極めた。


 ソフィアも同条件のはずだが、すでに勘を取り戻しつつある。


 アンドレアの方は言うまでもなく、少しでも気を抜けば命が尽きる。


(ここまで遠いのか……。最強への道は……っ)


 二人と手合わせする度に感じる、才能の格差。


 自分の実力を高く見積もっても、相対的に劣っている。


 戦闘が維持できているのは、心強いパートナーのおかげだった。


「攻めはわたくしが担当します。そちらは守りにだけ専念なさって」


 体力消耗を見かねたのか、ミーナから声がかけられる。


 息を切らす様子はなく、あの最強たちに食らいついていた。


 それも足手纏いを差し引いた拮抗。対等どころの騒ぎじゃない。

 

 ――二人を上回るポテンシャルを秘めていた。


 少女めいた細い肉体というデメリットも感じさせない。


 どこからそんな力が湧き出てるのか、不思議で仕方がなかった。


「承知、した……っ」


 ただ、考えに耽るわけにもいかず、ダヴィデは返答。


 それと同時に振るわれたのは、アンドレアの容赦ない拳。


 肌に届く寸前のところまで引き付け、盾を振り払って、反射。


 今まで揺るがなかった体幹が崩れ、致命的とも言える隙が生じた。


「まずは、主戦力を削って差し上げますわ……っ!!」


 それを見逃すわけもなく、ミーナは左足を軸に横蹴りを放つ。


 右足を部分的に魔獣化しており、白い鴉の尖爪を突き立てていた。


 相手は霊体。決まれば加護に関係なく、消滅させる可能性がある一撃。


「読めてるってぇの!!!」


 そこに入り込むのは、センスを絶っているソフィア。


 『刹光』を使う前動作であり、狙い澄まされた赤槍を突く。


 見事なまでのカウンター。横蹴りの軌道の外。背後からの奇襲。


(まずい……。俺が守らないと『熱い夜』の二の舞に……っっ)


 鬼気迫る状況で、脳裏に蘇るのはトラウマ。


 元相棒が拳に背中を貫かれ、絶命する瞬間の光景。


 それが後れを生み、身体は硬直し、赤槍がミーナに迫る。


「――変わってないな。あの日から何も」


 そこで聞こえてきたのは、氷のように冷たい声音。


 心臓がきゅっと締め付けられ、思考は完全に停止していた。


「「「…………」」」


 それが功を奏したのか、戦いは休戦する。


 全員が手を止め、上空に視線が集中していった。


 見えたのは、四匹の悪魔。中でも気になったのは一匹。

 

 黒いローブに身を包み、フードを深く被った緋色の髪の女性。


 ――身体的特徴と声と口調からして間違いない。

 

 トラウマの中心に居座り続ける、元相棒。


 『呪われし子供達計画』から生まれ落ちた同胞。


 ナンバーは003。ソフィアの妹に該当している存在。


「ジュリア・ヴァレンタイン……」


 ダヴィデは正体を口にし、襲い来るトラウマに疲弊していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ