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トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

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第61話 エリート

挿絵(By みてみん)




 覚醒都市バイカルヴェイ南部。居住区。


 ビルの一棟に入り、観光案内は続いていた。


 ターニャが入れ知恵し、エミリアが紹介する形。


 移動系の能力を維持しながら、ジーナ捜索に繋がる。


 都市の構造を把握でき、住民の暮らしを肌で感じられる。


 目的に沿う効率的な行動の中、見えてくるのは、廊下と教室。


「えー、こちらは覚醒都市バイカルヴェイの教育棟でございます。この階層では、初等教育が行われており、科目は国語、数学、理科、社会、体育、芸術、道徳、意思。生物の体内で生きるための必要最低限の知識を学ぶ場となります」


 教室には、机と黒板と生徒と先生が見え、授業の真っ最中。


 供給された電気のおかげで、室内は明るく、快適そうに見えた。


 時差を考慮しても深夜のはずだけど、時間感覚がズレているみたい。


 太陽が見えないせいか、休みの概念がないか、特殊なルールがあるのか。


 ――理由はともかく、地上と昼夜逆転してるのは確定。


 その生活基盤を支えているのは、間違いなく電気と言えた。


 管理方法は不明だけど、なければ生活が成り立たないのは確か。


 独創世界の地質なんだとしても、注意深く観察しておく必要がある。


 ――どうもここは、獣臭い。


 根拠に欠けているものの、警戒に値する違和感。


 いつもより気を張りながら、教室の光景を隅々まで見渡す。


「……」


 熱心に教えている先生と、勉強に励む生徒の姿が目に入ってくる。


 服装は白で統一。男子はシャツとネクタイ、女子はブラウスとスカート。


 装飾や着こなしにバラつきはあるものの、風紀が乱れている素振りは見えない。


 ――教育が行き届いている証。


 少なくとも、慣習やルールに従える素養はある。


 獣や動物とはかけ離れた、人間らしい知性が感じられた。


「ターニャ様のご助力のおかげで許可も取れておりますので、今回は特別に授業を参観させていだきましょう。伺わせてもらいますのは、初等教育課程の中でも優秀な成績を収めたエリートだけが集められたクラス。通称『白金の道プラチノヴィー・プーチ』でございます」


 紹介を続けるエミリアが開いたのは、廊下の突き当たりの扉。


 視界に入ったのは、何でもない広い教室と、何でもなくない子供。


 センスを纏い、身体の一部を獣化し、実戦稽古をしている姿が見えた。


(どうりで獣臭いわけね……)


 一目見て分かったのは、都市の異常性。覚醒がつく由来。


 恐らく、ここにある食べ物を口にすれば、身体が魔獣化する。


 不可逆的なもので、一度なってしまえば、元の人間には戻れない。


「「――」」


 そんな中、教室の中央では、二人の生徒の戦闘が佳境に入っている。


 短い銀髪女子が右手を魔獣化し、坊ちゃん刈りの金髪男子に爪を立てた。


「はい、そこまで!」


 パンと両手を叩き指示を出したのは、黒髪おさげの先生。


 黒い丸眼鏡をかけ、袖とスカートの丈が長い白ドレスを着る。


 見るからに教育熱心そうな印象。それも、スパルタ的なイメージ。


 ――中にいたのは、これで全員。


 生徒二名に対し、先生一名の超少人数クラス。


 彼らの実力が確かなら、ある意味で効率のいい教育法。


 数十人の足並みを揃えるより、個々に合わせた方が成長が早い。


 ――選り抜きのエリートだとすれば、なおさら。


 飛び級と同じようなもので、高い能力を持つ者には過程を数段飛ばす。


 生徒の成長に合わせて教育方法を変えるから、時間的な効率が格段に増す。


 ――恐らく、即戦力を育てるための仕組み。


 教育方針は分からないけど、戦闘に重きを置いているのは確か。


 若くして強い兵士を育て上げ、都市の防衛力にするのが狙いと見た。


「授業参観者のお目見えです。ご挨拶を」


 黒髪おさげの先生は、端的に指示送り、行動を促す。


 銀髪の女子と金髪の男子はこちらに向き、交互に口を開く。


「ソーニャ・カラシニコフよ。その貧相な脳に刻んでおきなさい」


「……ジーノ・ロマノフ。僕の名前は別に覚えなくてもいいからね」


 対照的に自己紹介を果たしたのは、ソーニャとジーノ。

 

 彼女たちが都市の存続を握るなんて、当時は思いもしなかった。

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