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トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

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第59話 地下にあるもの

挿絵(By みてみん)




 覚醒都市バイカルヴェイ東部。臓物庫地下。


 螺旋状の階段を下るのは、アザミたちだった。


 防寒具を着込み、着実に一歩ずつ歩みを進める。


 辺りはコンクリートに覆われ、中央には透明な柱。

 

 肺の構造上、地下があるのは分かるけど引っかかる。

 

「あ、あの……どこまで下にいけば……」


 心配げな表情で、恐る恐る声を発したのはアザミだった。


 『冷気の正体を知りたい』と言ったものの、全然辿り着かない。


 歩みを進めるごとに不安が増し、罠のような気がしてならなかった。


「不安がる気持ち分かるが、知りたいんだろ。真実を」


 一人だけ答えを知るジーナは淡々と告げる。


 嘘をついているような気配はなく、至って冷静。


 これまでの言動を考えても罠にかける気はなさそう。


「……」


 こくりと頷き、アザミはジーナを信用する。


 それ以上掘り下げることは、彼に対して失礼だった。


 必然的に場は沈黙に満ち、足音だけが響く時間が続いていた。


「まだかかりそうだし、いくつか質問してもいい?」


 微妙な空気に気を利かせたのか、バグジーは話題を提供しようとする。


「勝手にしろ。答えるかどうかは知らんがな」


 ツンとした態度でジーナは接するものの、話を聞く気はある様子。


 今までなんだかんだ対応は良かったし、大体の質問は答えてくれるはず。


「――どうして、底辺に甘んじているの。アナタならもっと上を目指せるでしょ」


 バグジーが尋ねるのは、踏み込んだ問いだった。


 ジーナは白軍に所属し、階級は一般兵という立ち位置。


 軍の中でも最底辺に位置し、そこに疑問を持っていたみたい。


 確かに、ここまですんなりと潜入できたのは、ほとんど彼のおかげ。


 戦闘での実力は底が見えないけど、有能な素振りは行動の節々から感じる。


 ――少なくとも、一般兵の器じゃない。


 軍の昇進システムは詳しく知らないけど、確かにおかしい。


 バグジーの言うように、もっと上の階級でも違和感はなかった。


「昇進に必要な要素は、技能、体力、知識。それに加えて、任務遂行能力とリーダシップが問われる。それらが一定水準以上なら上官が推薦し、軍部の総合的な判断によって昇進が決まる。裏を返せば、俺がいくら有能だったしても、上官の目が腐ってたら一生評価されない。軍隊ってのはそんなもんだ。個の資質が問われるように見えるかもしれないが、結局は上官と上手く付き合えるかどうかなんだよ」


 ジーナの口から語られるのは、軍事関係者としての本音と愚痴。


 能力が高くても評価されない。それなら今までの言動に辻褄が合う。


 企業の一般的なサラリーマンが抱えるような悩みだったし、共感できた。


「ごもっともな説明ね。事実なら口を挟める余地はない。だけど――」


 バグジーが不穏な言葉と共に振るうのは、二刀のククリ。


 背後から斬りかかる形で、ジーナに容赦ない斬閃を浴びせる。


 止めに入ろうかと思ったけど、殺気はなかったから、多分腕試し。


 階段を駆け上がり、刀の射程圏外に移動し、様子を見守ることにした。


「――」


 逆にジーナは階段を下り、ククリの斬撃を避けていた。


 必要最小限の動きだけでいなし、間合いを完全に見切っている。


 ――本題はここから。


 バグジーの意思能力は、避けたジーナの油断を狩り取る。


 『夢現四刀流』と名がついた流派の技は、シンプルながら強力。


 彼の着地点の左右に生じるのは、センスで形作られた二刀のククリ。


 センスを纏い、凝視しなければ察知できない、見えない斬撃が襲い来る。


「……」


 ジーナは一切、避ける素振りを見せなかった。


 気付いた上での行動か、シンプルに油断しているか。


 どちらとも言えない状況が続く中、見えないククリが迫る。


 受けられないと判断すれば消すんだろうけど、最悪の場合もある。


 戦々恐々としながら二人のやり取りを見守っていると、その時は訪れた。


「芸が達者だな。試したつもりだろうが、俺が無能だと言った覚えはないぞ」


 ジーナの両手に握られるのは、センス産の二刀のククリ。


 発生と回転を見切り、柄の部分を握って、負傷を防いでいる。


 100点満点の回答。実力面でも劣っていないのが、今ので確定した。


「分かってるわ、そんなこと。アタシが試したかったのは、中身の価値よ」


 バグジーは顎をしゃくり、透明の柱に目線を向ける。


 正体は不明なものの、放たれたククリの射線上にあった。


 どうでもいいなら止めない。壊されたら困る理由があるんだ。


 冷気を発生させる以上の『何か』。少なくとも、機械じゃなさそう。


 臓物庫の機能が停止する程度なら、ジーナは極力動きたくなかったはず。


「別にサプライズはいらないから、先に教えなさい。中に何がいるの」


 痺れを切らしたかのように、バグジーは重ねて問う。


 言い訳の余地を先に潰し、過程を省略しようとしていた。


「……ここまでされちゃあ、隠す理由はないわな」


 観念したように、ジーナはククリを握り潰し、前置きを挟む。


 視線を透明な柱に向け、道半ばにして告げられるのは、この場の答え。 


「白龍ジーク。完全魔獣化した俺の兄がここに捕らえられている」

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