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トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

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第50話 成長機会

挿絵(By みてみん)





 アシガバート郊外。深夜の砂漠地帯。


 空中で衝突し合うのは、拳と盾と槍と足。


 期せずして同じ得物はなく、独自の色を乗せる。


 黒と蒼と緋と白のセンスが100%以上の輝きを見せた。


「「「「――――刹光!!!」」」」


 この戦いは、タイマンではなく共闘だ。


 一対一を個別で行うのが最適解とは限らない。


 その発想に至ったのは『オリジナル』も同じだった。


(上手く出し抜いたつもりだったが、遺伝子には逆らえないか……)


 右手の銀の盾を掲げながら、俺は思考を回していた。


 ソフィアを倒し、戦力を削る算段だったが邪魔が入った。


 均衡状態が保たれ、センスと刹光がモノを言う世界が広がる。


 あの最強共が得意とする展開だが、何も悪いことばかりじゃない。


(ともあれ、ミーナの強さは嬉しい誤算だ。……押し切って見せる)


 思考を切り上げ、目の前の闘いに意識を向ける。


 この均衡は続かない。それを誰よりも分かっていた。


 過小評価でも過大評価でもなく、揺るがない事実がある。


「――反発せよ(エウクレイデス)

 

 状況を打破する能力を秘めているのは、この俺だ。


「「――ッッ!!!!」」

 

 即座に反応を示したのは、対面にいる二人。


 ソフィアは右、アンドレアは左に跳躍している。


 こちらの手札を知るからこその反応。見切りの速さ。


 直後、迸る閃光は反発し、二人が立っていた地点を驀進。


 砂地を裂き、地面を割り、直線上の山岳地帯を砕かんと迫る。


 それは、四人分の刹光。意思の力が凝縮された高エネルギー反応。


 直撃を避けるのは、当然の反応。能力を知っていたなら、なおさらだ。


 そこに付け入る隙が生まれる。


「――結合せよ(エンペドクレス)

 

 俺は続けざまに言霊を込め、灰色の輝きを放つ光に目を向ける。


 本来なら制御不能の代物だが、意思と聖遺物レリックが不可能を可能とする。


「ちょ、ちょちょっ!! それはヤバイって!!!」


「……」


 対照的な反応を示す二人は、成す術がない様子。


 出力も規模も精度も桁違い。それを頭で理解している。


 自らが生み出したものであるがゆえに、諦めるのも早かった。


「――無限なるものに囲まれ(アペイロン)自壊するがいい(アポトーシス)


 形成されるのは、灰色の光を帯びた球状の牢獄。


 一人分の出力では、決して完成しなかった合わせ技。


 結界であり、異能であり、反撃であり、全盛を超える力。


人類の最上到達点(ユーダイモニア)!!!」


 強度を決定付ける固有名詞を定め、ここに結界が成立する。


 補助ではなく守護。自分の進むべき方向性が定まった瞬間だった。


「見事、ですわね。結界師に転職なさっては?」


 そこで声をかけてきたのは、人型に戻ったミーナだった。


 魔獣化により、靴は破損しており、小さな素足が見えている。


 すでに勝利の余韻に浸っている。魔獣化を解いたのがいい証拠だ。


「下らん世辞は止めて、構えておけ。砂漠に墓標を立てたくないならな」


 俺は気を抜かなかった。誰よりも二人を評価していた。


 手応えはあったが、あんなもので止められる存在じゃない。


 必ず期待と限界を超える。そうでないと最強の座は務まらない。


「ご謙遜を。わたくしの見立てでは今ので十分――」


 全く信じていないミーナは、反論しようとする。


 しかし、目の色が変わった。結界は異質な音を奏でた。


 ひびが入り、亀裂が走り、壁が突き破られ、結界は消滅する。


「あー、肩凝ったぁ。でも、準備運動にはちょうど良かったかな」


「無限という概念に固定した時点で浅い。意味はできるだけ隠すことだな」


 新旧の最強は未だ健在。易々と無限を自力で突破する。


 出力上、時間経過で解ける代物だったが、時間内で攻略した。


 中で起きたことは想像を巡らせるしかないが、異常であるのは確か。


「……」


 俺は起こった事実を受け止め、不思議と笑みを浮かべていた。

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