第50話 成長機会
アシガバート郊外。深夜の砂漠地帯。
空中で衝突し合うのは、拳と盾と槍と足。
期せずして同じ得物はなく、独自の色を乗せる。
黒と蒼と緋と白のセンスが100%以上の輝きを見せた。
「「「「――――刹光!!!」」」」
この戦いは、タイマンではなく共闘だ。
一対一を個別で行うのが最適解とは限らない。
その発想に至ったのは『オリジナル』も同じだった。
(上手く出し抜いたつもりだったが、遺伝子には逆らえないか……)
右手の銀の盾を掲げながら、俺は思考を回していた。
ソフィアを倒し、戦力を削る算段だったが邪魔が入った。
均衡状態が保たれ、センスと刹光がモノを言う世界が広がる。
あの最強共が得意とする展開だが、何も悪いことばかりじゃない。
(ともあれ、ミーナの強さは嬉しい誤算だ。……押し切って見せる)
思考を切り上げ、目の前の闘いに意識を向ける。
この均衡は続かない。それを誰よりも分かっていた。
過小評価でも過大評価でもなく、揺るがない事実がある。
「――反発せよ」
状況を打破する能力を秘めているのは、この俺だ。
「「――ッッ!!!!」」
即座に反応を示したのは、対面にいる二人。
ソフィアは右、アンドレアは左に跳躍している。
こちらの手札を知るからこその反応。見切りの速さ。
直後、迸る閃光は反発し、二人が立っていた地点を驀進。
砂地を裂き、地面を割り、直線上の山岳地帯を砕かんと迫る。
それは、四人分の刹光。意思の力が凝縮された高エネルギー反応。
直撃を避けるのは、当然の反応。能力を知っていたなら、なおさらだ。
そこに付け入る隙が生まれる。
「――結合せよ」
俺は続けざまに言霊を込め、灰色の輝きを放つ光に目を向ける。
本来なら制御不能の代物だが、意思と聖遺物が不可能を可能とする。
「ちょ、ちょちょっ!! それはヤバイって!!!」
「……」
対照的な反応を示す二人は、成す術がない様子。
出力も規模も精度も桁違い。それを頭で理解している。
自らが生み出したものであるがゆえに、諦めるのも早かった。
「――無限なるものに囲まれ、自壊するがいい」
形成されるのは、灰色の光を帯びた球状の牢獄。
一人分の出力では、決して完成しなかった合わせ技。
結界であり、異能であり、反撃であり、全盛を超える力。
「人類の最上到達点!!!」
強度を決定付ける固有名詞を定め、ここに結界が成立する。
補助ではなく守護。自分の進むべき方向性が定まった瞬間だった。
「見事、ですわね。結界師に転職なさっては?」
そこで声をかけてきたのは、人型に戻ったミーナだった。
魔獣化により、靴は破損しており、小さな素足が見えている。
すでに勝利の余韻に浸っている。魔獣化を解いたのがいい証拠だ。
「下らん世辞は止めて、構えておけ。砂漠に墓標を立てたくないならな」
俺は気を抜かなかった。誰よりも二人を評価していた。
手応えはあったが、あんなもので止められる存在じゃない。
必ず期待と限界を超える。そうでないと最強の座は務まらない。
「ご謙遜を。わたくしの見立てでは今ので十分――」
全く信じていないミーナは、反論しようとする。
しかし、目の色が変わった。結界は異質な音を奏でた。
ひびが入り、亀裂が走り、壁が突き破られ、結界は消滅する。
「あー、肩凝ったぁ。でも、準備運動にはちょうど良かったかな」
「無限という概念に固定した時点で浅い。意味はできるだけ隠すことだな」
新旧の最強は未だ健在。易々と無限を自力で突破する。
出力上、時間経過で解ける代物だったが、時間内で攻略した。
中で起きたことは想像を巡らせるしかないが、異常であるのは確か。
「……」
俺は起こった事実を受け止め、不思議と笑みを浮かべていた。




