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トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

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第45話 都市の秘密

挿絵(By みてみん)




 覚醒都市バイカルヴェイ。巨大生物体内に建造された街。


 左肺の中葉に位置し、他の臓器よりも比較的安全だと言える。


 電線やビル群が建ち並んでおり、現代世界に近いインフラが整う。


 水はバイカル湖内の淡水、食料は魔獣、電力は特殊な臓器が生み出す。


 排泄物は週に一度、胃に運ばれて消化。衣服は魔獣の皮や繊維を利用する。


 ――結果、人口は約25万人を維持。


 一世紀以上経過した現在も、白軍と亡命者の大半は生き残る。


 軍が治安を保ち、犯罪者が食料を調達し、亡命者が生活を支える。


 好循環なサイクルが回り、体内での被害者は最小限に抑えられていた。


 ――ただし、覚醒都市での生活には代償が伴う。


「こ、これ……本当に食べられるんですか……?」


 都市内の大通りに面する闇市。飲食系の露店でのこと。


 アザミが手に取ったのは、串焼きにされた黒い肉だった。


 調理法は、シャシリクというロシア料理を参考にしている。


 ワインに香辛料を混ぜたものに肉を漬け込んで、炭火で焼く。


 ただ、そんな贅沢品は存在せず、【火】の概念は使えなくなった。


 時代と環境に合わせ、調理法を柔軟に変更し、工夫がなされている。


「失敬だな。これでもイケる方の部類だ。気持ちは……分からんでもないが」


 ジーナは串焼き肉を頬張り、毒見のような形で見せつけている。


 現地民の彼としては日常であり、生きる上で欠かせない行為だった。

 

「「…………」」


 一方、侵入者側のバグジーと広島は沈黙を保つ。


 串焼き肉を受け取りもせず、注意深く観察している。


 特に、串焼き肉を頬張るジーナの姿を注意深く見ていた。


「……なんだ。言いたいことがあるならハッキリ言え」


 視線に気付いたジーナは、怪訝な顔をして言い放つ。


「おかしいわね。一から建造したなら時間の辻褄が合わない」


「ここが独創世界じゃのうて、現実準拠なら、なおのことおかしい」


 両名は矛盾点を指摘し、場は不穏な空気に満ちていく。


 視線を向けられたジーナは口を閉ざし、沈黙を保っていた。


 顔色を変えることなく、導き出される答えを静かに待っている。


「「――あなた(あんた)、何歳 (じゃ)?」」


 そこで二人が口に出したのは、単純な疑問だった。


 ジーナは白軍で1910年代の内戦を経験したように語る。


 現実世界で生きていたなら、年齢は100歳を優に越えている。


 ――時間的な矛盾。


 体内の時間の流れが緩やかだとアザミは予想したが、おかしい。


 ここが独創世界でないのなら、都市の建造には時間がかかる計算。


 時間の流れが緩やかであれば、ここまでの規模の大都市は出来ない。

 

 ――ただ、時間が地上と同じなら矛盾は解消される。

 

 ――ジーナが若い見た目を保つ老人なら話は変わってくる。


「バレたか……。そいつさえ食えば、同胞だったんだがな」


 ジーナは身体に白光を纏い、右手の拳を握りしめている。


「「…………」」


 バグジーと広島は互いにセンスを纏い、臨戦態勢。


 広島に関して言えば、抱えるジェノを置き、本気の構え。


 たった一言の指摘と、肯定とも取れる発言が修羅場を形成する。


 どちらかが動けば、戦闘に発展する。そんな空気が自ずと出来ていた。


 ――中立に位置しているのは、一人。


「ま、待ってください。ジーナさん側に敵意はないのでは?」

 

 客観的な立場として、アザミは頭をひねらせる。


 偏った見方をせず、出てきた情報だけで判断していた。


「呑気な意見ね。この子は騙そうとしたのを認めたのよ」


「食わぬなら、口封じが道理。生かしておく価値はないじゃろ」


 二人は反対意見を述べて、臨戦態勢を解かなかった。


 アザミの発言には根拠が足りず、明確な理由が求められる。


 説得できなければ、即戦闘。先を読む能力が問われる場面だった。


「ま、魔獣の肉を食らえば、身体の一部が魔獣になる。……魔獣化。若さの秘訣であり、年齢の辻褄が合います。ジーナさんは、その一部を見せようとした。も、もし、見せる途中で襲われたら戦うつもりだった。でも、手を出していない今ならまだ間に合う。今まで通り、対等な関係を築ける。……ち、違いますか?」


 たどたどしい言葉ながら、アザミは自論を語る。


 戦闘を回避するため。ベズドナの頭脳を超えるため。


 己が欲望を実現するためにも、理屈をこねて、筋を通す。


 真偽不明の状態だったが、言葉には確かな熱がこもっていた。

 

 アザミの妄想めいた要望が通るかどうかは、ジーナが握っている。


 緊張状態が続き、戦闘も視野に入る中、答えは彼の口から明かされた。


「ご名答……。思ったよりやるじゃあないか。ベズドナには数歩劣るが」


 ジーナは握った右手を、黒い体毛が生えた獣の手に変える。


 魔獣化。アザミの妄想めいた予想が事実により、裏打ちされる。


 ベズドナ超えの目標は遠いものの、着実に一歩前進した瞬間だった。

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