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トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

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第41話 共鳴

挿絵(By みてみん)





 京都府内にある某所。775プロダクション事務所。


 和室の応接間には、心地いい鈴の音が響いていました。


 それは、夜助さんに預かり、巫女服の中に忍ばせていたもの。


 私は懐に手を入れ、先端に鈴がつく、銀灰ぎんかい色の草を取り出しました。


「……」


 共鳴草。ダンジョンで生成されるという特殊な草。


 元々は鈴が二つほど付いていて、これは片割れでした。


 意思を込め、鈴を鳴らせば、共鳴して、危機を知らせます。


 仲間に片割れの鈴を持たせ、緊急時に使わせるのが一般的です。


 食べれば、片割れの位置を30分ほど知覚可能になる優れものでした。


「それ、なんなの? 元社長って、配信外での余興は好きじゃないよね」


 真っ先に反応したのは、勝手知ったる桃子でした。


 説明を受けずとも、異常事態に気付いている様子です。


 表と裏では、きちんとキャラを使い分けていましたからね。 


 シリアスな場でコメディを挟むことは、基本ありませんでした。


「ただの雑草、というわけでもないか。至急の用があるなら、聞くぞ?」


 すると、次に反応を示されたのは、リアさんでした。


 会話の流れと空気を読んで、異常を感じ取ったようです。


 恐らく、理由を丁寧に説明すれば、協力してくれるでしょう。


 友人の契りを結んでいるため、対価は求めてこないと思われます。


「…………ごめんなさい」


 ただ私は、相談することなく、事務所を飛び出しました。


 桃子とリアさんは、鬼と悪魔による和平協定の主要人物です。


 もし、彼女たちの身に何かがあれば、破談になるかもしれません。


(お二人を巻き込むわけには……)


 私は感情を押し殺し、京都の和風な町並みを駆け抜けました。


 775プロダクションを立ち上げましたが、今は『元社長』で部外者。


 鬼と悪魔の繁栄を心から望むのであれば、こうする他ありませんでした。


 夜助さんの問題は個人的に重要ですが、彼女たちには直接関係ないですから。


「…………」 


 細く入り組んだ路地を進み、奥には五重の塔が見えてきました。


 法観寺が管理する八坂の塔。観光名所ですが、寄る暇はありません。


(そろそろ、使ってもよさそうですね……)


 私は手に握っていた共鳴草を口に運ぼうとしました。


 食せば、夜助さんの居場所が割り出せるようになるはずです。


「「…………」」


 そんな時、近くの建物の瓦屋根に着地するのは、鬼と悪魔でした。


 両者の視線は、私の方に向いていて、思わず足を止めてしまいました。


 追い払うのが理性的だと分かっていましたが、どうしても無視できません。


 ――なぜ追いかけてきたのか。


 その理由を知りたくて仕方なかったのです。


 あわよくば、なんて期待がないと言えば嘘になります。


 三次元の私は、ここぞの場面で感情を優先する、駄目な女でした。


「水臭いなぁ。あーしらは仲間でしょ。何かあったら頼ってよ……『ナナコ』」


「事情は知らぬが、目的が合致しなくとも、頼れ。それが、友人というものよ」


 桃子とリアさん。仲間と友人。両方の側面で二人は支えてくれます。


 胸が張り裂ける思いと、温かい気持ちがごっちゃになるのを感じました。


 これがどういう感情かは分かりませんが、きっと悪いものではないはずです。


 ◇◇◇


 生駒の山地が開拓された場所。深夜の生駒山麓公園。


 その一部には、平らで円形上の遊戯空間が存在していた。


 本来は、スポーツの試合や運動会をするために作られた広場。


 ただ、その原型を留めておらず、大量の岩柱と斬撃の痕跡が残る。


「「…………」」


 広場の地面に倒れるのは、夜助とアンナだった。


 重なり合うように倒れており、立ち上がる気配はない。


 相打ちのように思えるが、その傍らには、人影が見えていた。


「『龍人』に、『魔法使い』。肩書きの割には、大したことなかったな」


「うーん……。確かにそうなんだけど、なんかこう胸の奥がゾワゾワする」


 立っていたのは、スサノオとツクヨミ。


 鬼の外見を持つ神が、広場に現界していた。


 一方は勝ち誇り、一方は不安な顔を見せている。


「まぁ、なんにせよ、いい土産が手に入った。……こいつらで姉様を釣る」


 そんな中、スサノオは倒れた二人に指先を向ける。


 すると、二人の身体は宙に浮き、自由自在に操っていた。


 手で直接触れることはなく、超能力めいた何かが作用している。


「そう上手くいけばいいけど……」


 ツクヨミは視線を落とし、表情には影が差す。


 その一部始終を、夜助は意識朦朧としながら見ていた。


(わしには、無理じゃったが……ナナコなら、こやつらを……)


 か細い声で後を託し、静かに目を閉じていった。

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