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トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

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第27話 時代精神

挿絵(By みてみん)




「唸れ、怒髪大鯰どはつおおなまず!!!!」


 深夜の生駒山地。その地面に右拳を打ったのはアンナだった。


 両手には銀のメリケンサック。滅葬具『砕拳・怒髪大鯰』を持つ。


 威力を増強するだけでなく、滅葬具は総じて固有の能力を秘めていた。


「――」


 夜助の足元に生じるのは、隆起した地面。


 先の尖った岩の柱が、左頬をわずかにかすめる。


 損傷は軽微。身を後ろに逸らし、回避を果たしていた。


 ――能力は『地面の干渉と操作』。


 範囲と精度は、使い手の打撃力とセンスに依存する。


 敵が繰り出したのは初歩の初歩。最初に覚えるであろう技。


 手の内を知り尽くした愛器に、後れを取るわけにはいかんかった。


(ここまでは想定通りじゃが……)


 夜助の頭によぎっているのは、別の脅威だった。


 種の割れた能力なら、いくらでも対応できる自信はある。


 ただ、滅葬具の面倒臭いところは、本人由来の能力ではないこと。


 ――固有の能力『地面』×個人の能力『???』。


 後者が明かされていない以上、無限の可能性を秘めていた。


 予期することは不可能であり、組み合わせ次第では一手で詰まされる。


再試行(ヴィーダーホーレン)


 そこで耳朶を揺らしたのは、アンナの馴染みのない言葉。


 異国の言語に造詣はなく、意味を読み取ることはできんかった。


 ただハッキリしとるのは、奴が秘める個人の能力を使ったということ。


「…………」


 夜助は懐に手を入れ、取り出したのは白鞘のドス。


 刃渡り18cm程度の得物を抜いて、黒い刀身を露わにした。


 ――滅葬具『小刀・濡羽烏』

 

 戦獄時代に扱っていた、もう一つの愛器。


 夜闇が深ければ深いほど、力を発揮する代物。


 地の利を活かせるのは、こちらも同じだと言えた。


「――――」


 夜助は黒いセンスを身に纏い、小刀を横薙ぎに振るう。


 短いリーチを考えれば、敵には届かず、見当外れにも見える。


 しかし、刃は伸び続け、遠方の樹々を切り倒すほどの斬撃と化した。


 ――能力は『刀身の延長と切れ味の向上(夜限定)』


 目の前で死角となる岩柱ごと、横一文字に切り裂いていく。


 その延長線上には恐らく敵がおり、何かしらの反応を見せるはず。


「…………」


 真っ二つとなる岩柱の隙間に見えたのは、怒髪大鯰を握るアンナ。


 なんの捻りもなく、先ほどと同じ動作で、地面に拳を振るおうとしている。


(焼き増しで乗り切るつもりか? 芸のない……)


 容赦なく夜助は延長する刀身を迫らせ、勝負を決めにかかる。


 伐採される樹々の悲鳴を耳にしながら、殺さぬよう手心を加えようとした。


「唸れ、怒髪大鯰どはつおおなまず!!!!」


 直後聞こえてきたのは、先ほどと全く同じ台詞だった。


 並みの使い手であれば、鼻で笑い、そのまま振り切るだろう。


 ――だが。


「………………」


 夜助は迫らせた刃を急停止させ、後方に跳んだ。


 反射的に濡羽烏を元のリーチに戻し、周囲を警戒する。


「……せやぁぁっ!!」


 すると、上空から奇襲してきたのはアンナだった。


 裂帛の叫びと共に、左拳に握る怒髪大鯰を振るっていく。


(あちらは幻影で、こちらが本体か……? であれば……)


 能力を予想しつつ、拳が振るわれるまでの間に思考を回す。


 見切りをつけた夜助は、迫る拳の進行を阻むようにして刃を置いた。


「「――ッ!!!」」


 甲高い金属音を奏で、黒と赤。異なるセンスが衝突する。


 幻影や分身ではない手応え。実体を感じる確かな質量があった。


 力比べは、ややこちらが上。年老いたと言えど、男女の格差は消せん。


「大鯰が泣いておるぞ。宝の持ち腐れじゃな」


「濡羽烏が手に入るなら、涙の一つも見せましょうよ」


 劣勢とは思えんほど、アンナは余裕綽々と語っておった。


 会話は噛み合っておるようで、全く噛み合ってはおらんかった。


 互いに優勢であることを主張する。それが違和感を膨らませていった。


(妙じゃな……。強がりとは思えん……)


 ジリジリと肌が焼けるような感覚に襲われる。


 時間を追うごとに違和感は増し、正体は如実に現れた。


「……ッッ」


 地面は激震し、覚えのある超常現象が発生する。


 手が塞がった目の前のアンナでは、起こせないもの。

 

 そこから原因を紐解けば、薄っすら手の内が見えてくる。


(そうか……。こやつの能力は……)


 答えに行き着くと共に、隆起した地面が迫る。


 今度は首筋を切り裂いて、頸動脈から血が溢れた。


 赤い返り血を浴びるアンナは、意気揚々と語り出した。


時代精神ツァイトガイスト。私の精神体は時間の概念を超越する」


 明かされるのは能力の概要と、肩書きの開示。


 世界の概念を超越する存在は、こう呼ばれている。


 ――『魔法使い』と。

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