表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末
197/225

第197話 話し合い

挿絵(By みてみん)





 螺旋の塔上空に展開される銀色の結界上。


 そこに現れたのは、予期していなかった三人。


 ひょろっとした白軍兵と、ベクター。……そして。


「――私も混ざてもらえる? 一応、この子は私の弟子だから」


 リーチェは師匠面をして、淡々と言った。


 並々ならない銀光を纏って、周りを威圧していた。


 ――侵入経路は不明。


 いつから都市にいて、何をしていたのかは分からない。


 目的がなんだとしても、今の取引を快く思っていないのは確か。


「今更、師匠面しないでもらえますか……」


 俺は対抗するよう銀光を纏い、問いかけに応じた。


 相手には劣るものの、張り合えるほどの光量があった。


 緊迫した空気が流れ、その場の大半の人間が身構えている。


『先に話を聞こう。闘争はそれからでもいい』

 

 仲裁するように語りかけたのは、白龍ジークだった。


 背中にはエミリアを乗せて、フワフワと宙に浮いている。


 焦る素振りや、センスを纏うこともなく、極めて冷静だった。


「理由は単純よ。この子が変な契約をしなくても、私がジーナとターニャを元に戻せる。それ以上でもそれ以下でもない」


 懐から黒縁の眼鏡を取り出し、リーチェは語る。


 あれは俺が苦労して手に入れた、神話級のアイテム。


 ――大罪伝世鏡。


 八咫鏡を素材にして、失われた製法を基に加工。


 眼鏡の形状をしているけど、真価は魔眼の制御にある。


 ――反転の魔眼。


 それは、リーチェが両目に宿す異能の発生源。


 彼女が心から願った願いは、反転して叶えられる。


 死んでほしいと願うなら、相手が生き返ることになる。


 ――俺は実際、彼女に蘇生された。


 魔眼に死を願われて、この世界に生き長らえた。


 彼女の言い分は、ハッタリでもなんでもなく本当だ。


 あの奇跡みたいな願いの力は、身をもって体験している。


 ――だけど。


「その目……反転の魔眼は、リーチェさんの願いを無意識的に反転して叶える。その眼鏡……大罪伝世鏡があれば、無意識の願いの反転は制御され、レンズの一部が欠けるのを代償に、意識的に能力を行使できる。ただそれは、そこまで万能な力じゃない。この二人に死んで欲しいと心から願えば生き返るけど、相応の熱量がなければ実現しない。本当に心の底から死を願えますか? 俺の時のように」


 引っかかったのは、発動するための前提条件。


 俺の場合は、内に宿る白き神が復讐相手だから叶った。


 千年に渡る怨みが反転し、皮肉にも生き長らえることになった。


 ――果たして、彼女たちはどうなのか。


 都市に来てから知り合っただろうし、関係値は薄い。


 大して積み重ねのない相手に、本気で願えるかは疑問が残る。


「可能だと言ったら? あなたが知るものが全てとは限らない」


 当然だけど、リーチェは簡単に非を認めない。


 嘘か事実かは不明だけど、議論は平行線をたどる。


 ここから先は水掛け論だ。事実がないと証明できない。


 『できる』『できない』の論争が、無限に続いていくだろう。


『確実なのはソーニャの案だけど、ジーノとジェノの死後に魂の所有権がソーニャの魔獣に移る。一方でリーチェの案は、レンズの一部が欠けるぐらいで犠牲は出ないってところかな。恐らく、その眼鏡が欠けるごとに魔眼の制御が効かなくなるのが、最大のデメリットだろうけど、今のところ新品のようだ。少しレンズが欠けたぐらいで魔眼が暴走することはないはず。……とはいえ、実際に魔眼の力で二人が蘇生されない限り、証明できない。これ以上の議論は不毛なわけだが、どちらかが意見を譲ることはないだろう。議論以外の方法で、どちらかの案を選ぶべきだと考えるが、ジェノ君とリーチェは何がお望みかな?』


 白龍は出揃った意見を端的にまとめ、仲介役に徹する。


 議論は平行線になると読んだ上で、代表二人に話を振った。


 次の展開の判断は委ねられ、互いに納得できる方法が望まれる。


 あらゆる選択肢が頭の中をかけ巡るものの、答えは一つに絞られた。


「「――決闘裁判」」


 期せずして一致したのは、古めかしい白黒の付け方。


 証人や証拠が不十分な事件を解決するために行われた手法。


『双方の代理人による一対一の決闘か。悪くないね。むしろ、それ以外の方法はないように思える。見届け人も揃っているし……反対意見もなさそうだ。それぞれの案に同意する者が出場条件だとして、誰を選出するのかな?』


 白龍は公平に意見をまとめた上で、選択を迫る。


 何人か候補はいたけど、当事者じゃないといけない。


 ジーノは動けないだろうし、俺が出るわけにもいかない。


 自ずと候補は絞られて、中でも最も勝率が高そうなのは……。


「白龍ジーク」


「ベクター・フォン・アーサー」


 俺とリーチェは、互いの代表を口にする。


 空中には結界が展開され、決闘裁判が始まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ