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トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

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第16話 闇に舞い降りた天災

挿絵(By みてみん)




 白い街並みの夜空には、赤い三日月が浮かんでいた。

 

 ひとしきり眺めた後、視線を明後日の方向に向けていく。

 

 そこには、深夜営業の『和』を重んじるレストランがあった。


「…………」


 『すし』と書かれた暖簾をくぐり、来店したのは青髪ショートヘアの女性。


 黒いスーツに身を包み、赤を基調とした狭い廊下を迷いなく突き進んでいく。


「陛下だよ。陛下! 大日本帝国の皇帝陛下に、そっくりなんだ!!!」


 奥から聞こてきたのは、野太い男の声と、ジャズの音色だった。


 反響音から考えれば、廊下を左折し、突き当たりのテーブルにいる。


 男が話しかけた相手は確定。この子の背景から考えれば、動機は十分だ。

 

「邪を以て邪を禁じ、毒を以て毒を制し、暴を以て暴に易う。

 我、この理を以て、悪に幸いをもたらす邪悪の化身なり」


 懐から取り出したのは、青色の小柄な蛇だった。


 詠唱により発光し、一対のかぎ爪へと変貌を遂げる。


 右手は青藍で、左手は翡翠。異なる輝きを放つ、聖遺物レリック


 青藍色の爪を廊下の壁に突き立てて、獣のような爪痕を残す。


 肉が焼けるような音が鳴り、赤い壁の一部はドロリと溶けていく。


 それを横目で確認しながら、廊下を勢いよく左折して、大きく跳んだ。


「「――――」」 


 直後、甲高い音が鳴り響き、白と銀の閃光が迸る。


 目の前には、両腕をセンスで覆っている銀髪少女の姿。


 勢い任せに振るった両手のかぎ爪は、地肌に届いていない。


 接触面のセンスが強固な壁の役割を果たし、仕留め損ねていた。


「ラウラ・ルチアーノ……。どうしてここに」


「よぉ、親殺し。ケリぃ、つけにきてやったぜ!!!」


 密着の距離で、互いは相手を認識し、ラウラはリーチェを蹴り上げた。


 ◇◇◇


 バキリと音を立て、店内の壁を見事に突き抜けた。


 夜風が肌をかすめるように吹き抜け、気付けば、首都上空。


 眼下には月明かりに照らされる白い街並み。意図しない絶景を拝めた。


(人の復讐を否定する権利はない。だけど……)


 空中にいるリーチェは、攻撃された理由を考える。


 彼女の言動から考えれば、父親を殺した犯人への復讐。


 気持ちは痛いほど分かるし、戦う動機としては十分すぎる。


 勘違いだと言ったところで信じないだろうし、証拠も何もない。


 ただ、どうも引っかかる。あからさま過ぎるし、どうして今なのか。


 和解はしてないけど、復讐の機会は継承戦の時にいくらでもあったはず。


(操られたか、騙されたか。どのみち、裏で糸を引く人物がいそうね)


 ひとまず仮説を頭に浮かべて、待ち構える。


 すると、視界の端には急接近する人影を捉えた。


「夜風が心地いいよなぁ。……てめぇもそう思うだろ、なぁ!!!」


 声を荒げるラウラは、白光を纏い、夜闇を切り裂いた。


 リーチェは空中で軌道を変え、無数の爪閃をひらりと躱す。


「白を黒だと言うほど落ちぶれてないわ。あなたは違うかもしれないけど」


 その狭間に探りを入れ、反応をうかがった。


 彼女と本気で戦う気はないし、カロリーの無駄。


 それよりも、裏の思惑を割り出す方が有意義だった。


「そうかよ。だったら、黒だと言わせてやらぁ!!!」


 探りを意に介すことなく、ラウラはヒートアップ。


 空中歩行とフェイントを交え、かぎ爪を巧みに操った。


 体術とセンスは以前よりも上。成長したと考えるのが普通。


 ――だけど、拭えない玄人感。


 センスの攻防力移動に、タイムラグがない。

 

 老練と言い切ってもいいほどの、業前を感じる。


 一朝一夕では身につかず、一度身につけば消せない。


 歩き方を忘れられないように、動作が体と心に染みつく。


 偽ろうとしても無駄。嗅ぎ分けられないほど、未熟じゃない。


 攻防を繰り返すごとに確信に近付いていき、やがて結論に至った。


「…………あなた、誰?」


 リーチェは迫るかぎ爪に、拳ではなく、言葉をぶつける。


 しかし、勢いがとどまることはなく、爪先は喉元に迫っていた。


(響かないか。だったら、仕方ない……)


 思考を切り替え、リーチェは右手の拳を握り込む。


 言い訳の余地が残らないほどの、決定的な証拠が必要。


 そのためにも、当たり強めの暴力は必要不可欠だと言えた。


「「――――」」


 リーチェは不利な体勢から拳を振るい、敵の懐に迫らせる。


 誰が見ても正当防衛。映像が残っていれば、罪には問われない。


 大義名分とセンスを帯びた拳は、螺旋を描いて、速度をグンと増す。


 初動で負けていたのにもかかわらず、拳の方が先に到達しようしていた。


(ここから先は死の境界線(デッドライン)。手の内を見せるなら、今しかないよ)


 期待に胸を膨らませながら、その時を待つ。


 返してくる前提。相手を信頼した打ち合いだった。


 ラウラの化けの皮が剥がれるとしたら、ここ以外にない。


「――お客さん。無銭飲食は頂けないねぇ」

 

 そこに割って入ったのは、レストランにいた店員だった。


 両手には箸を持っており、衝突寸前の拳と爪を止め切っている。


 しかもここは、上空数十メートル。常人なら、まず到達できない領域。


(強いとは思ってたけど、まさかここまでなんて……)


 予想していた展開とは違ったものの、興味がそそられる。


 手の内を見せた。という点で見れば、店員が当てはまっていた。


「誰だ、てめぇ……。邪魔すんじゃねぇ!! 赤の他人がよぉ!!!」


「店ぇ、わやくちゃにした時点で他人じゃねぇわ!! この犯罪者が!!!」

 

 ラウラの怒号に怯みもせず、店員は強気に語る。


 二の句を継ぐ暇も与えないまま、二人は店に連行された。

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