72.VSバシュム&ウシュム後編
集落で情報集をして一週間経つ。
俺達は襲撃してくる不浄人形を倒しつつ進む。最近はバビロニア神話関連が多いどころか、それ以外の不浄人形が少なくなってきている。
やっぱりバビロニアに何かが起きている事は明白だな。
それと自由組合が蠢く触手の調査が終えて、その調査結果を見た。それはなんと蠢く触手の成分は生命晶を除いた全て魔力を含んだ泥であった。
伝承だとシルトと呼ばれる泥で出来ているとはいえ、まさか本当に泥で来ていたとは。
泥人形の主の成分は泥だが骨格があるのに対し、蠢く触手は生命晶を除いて骨格も泥なんて驚きだ。多分それで瞬時に傷を回復していただろう。
俺は蠢く触手の正体について離した。結果はエルキドゥとアイリス以外が驚愕した。
特に驚いたのはヴィンセントだ。
それも当然、泥人形は魔像が砕け散った断片で生まれた存在。そのため骨格があるが、蠢く触手は泥で来ているのに骨格が全くないからな。
エルキドゥとアイリスは少し重そうな表情になっている。二人に至っては薄々感づいていたんだな。
エルキドゥは何度も鎖を主軸に使っていたから、刺さった時に触感で感じていたんだろう。
しかし何でアイリスは魔法で戦うのに、蠢く触手が泥で出来ているって知っているのだろうか?
その事を聞いてみたら、予言をおこなう前の夜中に三原神の一人、天原神がこの本を与えてくれたらしい。
この世界の宗教は根源教と呼ばれ、その根源教の最高神である三原神の一人、天原神は知恵と希望を力にして、祝福を司る神だ。
その神がこの本を渡し「この書物を肌身離さずにもち続けるんだ。そうすれば予言は必ず当たって来る」と言って消えた。
う~ん、なんかそれどこか変だな。根源教の最高神である三原神の天原神がその勇者が俺であることを知っているなんて。
一応罠かも知れないが、アイリスから少し見せてもらってヴィンセントに見せた。
だがヴィンセントは首を傾げながら見る。どうしたのだろうと思い、横から少し見ると俺は目を細める。
「え~っと。アイリス、これって……」
「ハイ、この本は私以外読むと意味不明な文脈になってしまいます……」
「「嘘だろ!?」」
俺とヴィンセントが声を合わせて叫び、アイリスは少し驚きつつも頷く。
ッテ、冷静に考えればそれもそうか。神が与えた本なんて物を知ったら奪う奴が出てくるし、そのために所持者以外読めれないためにその仕組みがあるからな。
そう思いながらこの本を読むことを諦めると、突然の叫び声が響き出す。
アリスは馬車の外を見て状況を言う。
「アレス、外に商人が不浄人形に襲われているよ!」
「クソッ!」
俺は突如の事に悪態をつきながら、手綱を掴んでいるカインにいう。
「カイン、急いで叫び声がした方に向かってくれ!」
「言われなくても!」
カインはそう言って手綱を振って、叫び声がした方に向かう。
馬車を走らせてようやく叫び声がした方に着く。するとそこには赤と青のマムシに襲われる商人たちがいた。その赤と青のマムシを見て言う。
「まさかマジでいた何てな……」
そのマムシは一週間前に話した赤毒の蝮と青毒の蝮だった。赤毒の蝮は赤い霧の毒を吐き、青毒の蝮は蒼い毒液を舌に滴らせている。
やっぱり伝承の言う通りだな。
俺はこの状況に危険を感じながら命令する。
「俺とヴィンセントとアリスは毒に注意しながら射撃、カインとエルキドゥは回避中心で近接、レノンとアリオンとアイリスは魔法で援護してくれ!」
「「了解!」」
俺の命令に皆は答え、各々命令通りに動く。俺とヴィンセントとアリスは赤毒の蝮と青毒の蝮が商人に襲わない様に威嚇射撃し、カインは紅の禍月で赤毒の蝮に袈裟切り、エルキドゥは鎖で青毒の蝮の頭部に叩き込み、レノンは〈SVD〉で援護射撃して、アリオンとアイリスは魔法で援護する。
商人達はそのすきで安全な場所に避難する。
俺は商人達が無事に逃げ切れたのを確認し終えると、目の前にいる不浄人形に向けなおす。
よく見れば赤毒の蝮は額に鋭利な角を生やし、青毒の蝮は背中に鳥のような翼を生やしている。
赤毒の蝮は地面に角を刺し込んで岩を飛ばし、青毒の蝮は空を飛んで毒液を撒き散らす。
俺とヴィンセントとアリスは飛んでいる青毒の蝮に向けて引き金を引く。発射された弾丸はそのまま青毒の蝮に向かうが、赤毒の蝮が飛ばしてきた岩が壁となり、毒液は岩の後ろから落ちてくる。
毒液が落ちてくるのは……俺達の方だ!
俺は急いでヴィンセントとアリスを守るために、手を挙げて叫ぶ。
「間に合え! 中盾!」
俺は急いで中盾を三枚ほど展開する。すると毒液は中盾に触れると焼ける音と共に溶け始める。
俺とヴィンセントとアリスは毒液が中盾を溶かしている間に、青毒の蝮から離れて狙いを赤毒の蝮に変えて引き金を引く。
弾丸が赤毒の蝮に向かってくるが、青毒の蝮は翼の羽を使って弾丸を撃ち落とす。
これは確かにとても厄介だな。そう思いながら懐から手榴弾を取り出して、その安全ピンを抜いて赤毒の蝮に向けて投げる。
それを見た青毒の蝮は赤毒の蝮を守ろうと翼の羽を使って撃ち落とす。しかし手榴弾は羽に刺された事で強く光り出して、赤く爆発してその破片が赤毒の蝮と青毒の蝮に刺さり込む。
破片が刺された場所は赤毒の蝮が右目で、青毒の蝮は右翼に深く刺されている。
赤毒の蝮と青毒の蝮は破片が深く刺された痛みで叫ぶ。
『『キシャァァァ!?』』
「よし、痛みに苦しんでいる間に一気に行くぞ!」
「「了解!」」
俺の号令に皆は答え、一気に決めに行く。
赤毒の蝮は右目が見えぬが辺り一面に毒霧を吐き出す。しかし吐き出そうとした瞬間、アリオンとアイリスの魔法で口元を封じられてしまう。
青毒の蝮は赤毒の蝮を助けようとすると、カインとヴィンセントの突撃銃の的にされてハチの巣になってしまう。
赤毒の蝮はこの状況を察して、急いでこの場から去ろうとする。だがエルキドゥは鎖を噴出して動きを止めたら、懐から拳銃〈Mk23〉を取り出し、狙いを定めると引き金を引く。
弾丸はそのまま赤毒の蝮の額を貫き、あおむけに倒れる。
一応解毒剤は大量に持ってきたが、それに付いては安全な所に逃げた商人達の中には毒を食らった人もいて、それを分け与えて回復させた。
商人に何が起きたか聞くとどうやら赤毒の蝮と青毒の蝮が商人を追い返し続けたらしく、俺達が倒すまで全然別の国に行ける事ができずにいた。
その話を聞いた後は少し話し合って、再びバビロニアに向かって馬車を走らせる。
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