68.妖精の願い前編
アレス達が援護するまで少し遡る。
神龍帝国シンの街道に一つの馬車が走っている。馬車の中にいる人は二人いて片方は緑髪の長髪の青年で、もう片方は耳が長い少女だ。
緑髪の青年はのんびりと外を見ており、耳が長い少女は本を読んでいる。
何事もない雰囲気に突如馬の叫び声が聞こえ、二人は外に出て確認する。すると不浄人形の大群が襲っていた。
護衛している兵士や冒険者がなんとか不浄人形を蹴散らすが、敵の量が多くて格下の小鬼や魔菌にも苦戦している。
青年はこの状況を観戦するが、逆に少女は不浄人形に向けて詠唱する。
『風の根源よ。今一度、敵対する者を薙ぎ払え! 全風牙!』
少女は詠唱し終えると、風の牙が不浄人形に向かって穿ち貫く。
兵士は申し訳なさそうに頭を下げる。
「も、申し訳ありません……」
「謝る暇があったら、早く次の行動を移したらどうなの?」
青年は兵士を煽るように注意し、襲い掛かる不浄人形を鋭い分銅が付いた鎖ではたきおとす。
青年が少し飽きながら不浄人形を倒すと奥から獣鬼がやって来る。
しかし普通の獣鬼とは違っていた、姿は同じだが違っていた点は体格だ。
普通の獣鬼は三~五メートルだが、目の前にいる獣鬼は軽くても八メートルを超えていた。
青年はこの獣鬼はふつうじゃないと察し、少女を馬車に隠れさせるようにする。しかし少女は異常な獣鬼を見て驚愕して動けなかった。
小鬼が獣鬼に報告する。
『獣鬼様申し訳ございません。妖精の王女を捕らえようとしても兵士と冒険者が邪魔で……』
『そうか、なら貴様が弾丸になれ』
『へ?』
小鬼は獣鬼の言っている事を理解できずに首を傾げる、だが獣鬼は小鬼を掴んで青年に投げ飛ばす。
青年は何もない所から鎖を撃ちだし、飛んで来た小鬼を串刺しにする。
獣鬼は串刺しになった小鬼を見て、呆れ果てる。
『フン、雑魚とは言えどまさかここまで使えないとは……』
獣鬼は呆れつつも少女の方に向く。少女は寒気を感じて震えてしまい、獣鬼は少女にいやらしい視線を送って言う。
『とはいえ、妖精の王女がまさかここまで情欲を煽る肢体をしているとは……ならば我が寵愛を受けさせようではないか』
少女は獣鬼の言葉を聞いて顔をしかめ、青年は面倒くさそうに頭を掻く。
青年は少女の前に立って鎖を獣鬼に向けて発射する。しかし獣鬼は鋼の棍棒を取り出すと、勢いよく鎖を弾き飛ばす。
鎖が明後日の方に飛ばされ、青年はこの獣鬼は変異されたんじゃないかと思い、空間から複数の鎖を取り出し、一本の鎖にして集めると叫び声が響く。
『グギャァァァ!?』
『ン? なんだ、叫び声に謎の爆音は?』
獣鬼は叫び声の方に向かう。青年はその隙に少女を鎖に結ばせて馬車の方に投げ飛ばす。
少女はいきなり投げ飛ばされて思わず叫んでしまう。
「キャァ!?」
青年は少女が馬車に投げ飛ばされるのを見て、少し安心しつつ青年はトロルが向かった方を見て観戦する。
▲▽▲▽▲▽
そして時は今に戻る。
獣鬼は俺達を見るとうっとうしく叫ぶ。
『チィ、まさか冒険者共がやって来るなんて……全員叩き潰してくれるわ!』
獣鬼はそう叫ぶと鋼の棍棒を構えてこっちに向かってくる。
獣鬼はとても強靭な力と堅牢な守りが特徴な不浄人形だ。だが街道に出るのは夜だけで、こんな真昼間に出てくるのはおかしい。
しかしまずは生命晶の破壊を優先しよう。
俺は冷静に皆に向けて叫ぶ。
「俺とヴィンセントとアリスは回避しつつダメージを与え、カインは相手の攻撃を魔血邪装で防ぐのを専念してくれ!」
「「アア!」」
「ウン!」
三人は俺の命令を答えて、各々行動に移す。
獣鬼は鋼の棍棒を勢い良く振り下ろす。だがカインは両腕を魔血邪装にして、獣鬼の棍棒攻撃を真正面から受け止めて防ぐ。
獣鬼は自慢の棍棒が防がれた事にかなり驚く。
『ナッ!? 我が自慢の一撃を防がれるなんて……!?』
獣鬼が驚いている隙に俺達は突撃銃をセミオートから、フルオートに変えて引き金を引く。
連続的に出てくる弾丸が獣鬼の肉体を貫き、獣鬼はあまりの痛みで叫ぶ。
『グギャァァァ!? なんだこの魔法具はたとえ銃だとしても、連続に撃てるなんて聞いてないぞ!』
獣鬼が驚くのは無理が無い。だってこれら全部元居た世界の現代にあった奴だからな。
そう思いながら引き金を引き続けると、獣鬼は糸が切れたように倒れる。
これで終えたな。そう思いながら他にけが人がいるか探していると、アリスが焦った声で叫ぶ。
「アレス、後ろ!」
「後ろ? 後ろが一体――!」
『死ねー!』
獣鬼は見た目とは裏腹なスピードを見せ、一気に俺に近づいて棍棒を振り下ろそうとした瞬間。後ろから謎の鎖が飛んできて、獣鬼の動きを止める。
獣鬼は焦りながら急いで鎖を外そうとする。俺達は突然のことに驚いていると、青年が叫ぶ。
「早く、アイツが鎖を外す前に止めを刺すんだ!」
成年の叫びが響き、少しして弾丸が飛んできて獣鬼の心臓を貫いて、生命晶が砕け散る、すると獣鬼は力が抜いて倒れる。
今度こそ倒れたのを確認したら青年の方に向く。青年の姿は黄緑色のスーパーロングで、目つきは少し垂れ目のナイルグリーン、体格は中肉中背の青年だ。
しかしなぜか不思議な印象を持つ青年だ。
レノンとアリオンが俺達の所に着いた頃、青年はけが人に近づいて詠唱する。
『傷ついたものを癒やす光となれ。治癒の光』
詠唱し終えるとけが人の傷が徐々に治っていく。この魔法を扱い、あの青年かなりの腕前だぞ。
これほどのけが人の治療に顔色変えずに行い続ける。少し才能に嫉妬していると、馬車の方から少女がやって来る。
俺は少女の姿を見て驚く。
その姿は黄金のロングで、目つきは少し垂れ目のグリーン、体格はレノンと同じ小さめだ。だが胸だけはとてつもない大きさで、身長はレノンと変わらないが胸のサイズはアリスよりも超えるロリ爆乳であった。
一応異世界にエルフがいるのは定番だけど、俺の知っているエルフと同じ姿だった。
謎の鎖を撃ちだす青年にロリ爆乳のエルフ少女……一体どうなっているんだ!?
「あれって妖精か? 初めて見たぞ!」
「う、うん。一応聞いたことあるけど本当に言たんだ……」
ヴィンセントとアリスは少女を見て、驚きながらひそひそと話している。
マァ、俺もかなり驚いているからうなずける。
そう思っていると少女は頭を下げて礼をする。
「ありがとうございます。見ず知らずの私達を助けてくださって」
「い、いえ、それほどではありません」
俺はその高貴さに思わず敬語で答える。レノンの執事兼お世話係をしていたけど、やっぱりこういうのは慣れにくいな。
そう思っていると少女は俺に膝まずいて叫ぶ。
「どうか、我が国を助けてください。勇者様!」
「ハイ?!」
俺はいきなり勇者様と言われてつい叫んでしまう。
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