50.絶対の忠誠
俺は二丁の不良点を答えたら、なぜかいきなり叫びながら抱きついてきた。
いや、どういうこと!? 何で俺の名前を叫びながら抱き着くの! 何で俺を様付けにするの!?
一体全体どうなっているのか分からずにいると、お嬢様が顔を真っ赤にしながら叫ぶ。
「な、何やっているんですかー!?」
お嬢様は叫び、カイン様に至っては何が起きているか分からずにフリーズしている。
いや、本当に何なのこれ!? さすがの俺も何がなんやら分からずにいる。だがこれ以上おかしくなると収拾が治めなくなってしまう。
俺は慌ててアリオンは止めに入る。
「ええっと、取り敢えず落ち着いてください。他の皆が混乱しているので……」
「いえ、絶対に放しませんわ! アレス様が消えさせたりしないためです!」
だめだー! この人全然話を聞くつもりゼロだ!
こうなったら力業で――って、中肉中背なのにメッチャ力強くないか!? もしかして感動のバカ力ってか? いや、自分で言うのは変だけど面白くねぇ!
どうやってアリオンを落ち着かせようと考えると、カイン様がアリオンに向けて力強くチョップする。
力強く叩く音がして、アリオンは頭を押さえながら叫ぶ。
「イッタ!」
アリオンは頭の痛みを和らげよと、俺を手放して頭を抑える。
俺はそのすきに彼女から少し離れる。危なかった、これ以上抱き着かれたら周りの人に誤解を招くところだった。
そう思うとアリオンが涙目でカイン様に向いて叫ぶ。
「いきなり何しますの!?」
「それはそっちのセリフだ。どうしてアレスに抱いてきたんだ? それ以前になぜ様付けだ?」
カイン様はさっきの疑問をぶつけるように聞く。アリオンはその大きな胸を張って言う。
「それは神の技を使えるからですわ!」
「エェ……」
俺はアリオンの言葉に少し憐れみを感じてしまう。いや、それは軍オタやシューティングゲーマーなら簡単な事だぞ……。
そう思っているとカイン様とお嬢様は頷く。
「それは……」
「確かにすごいですね」
「カイン様!? それにお嬢様も相手の言葉に流されないでください!」
俺は二人に対して突っ込む。これ以上ギャグ空間になるなんてゴメンだ! こんなグダグダ空間を抑えようとするが、アリオンはカイン様とお嬢様に向けて土下座をしながら頼みごとを言う。
「失礼かもしれませんが、アレス様をわたくしに下さい! お金ならいくらでも払います!」
俺の身柄をお金で解決してほしくないんだけど!? それに平気で人身売買を刺せるなんて、さすが商人たちを統べるだけはあるな……。
そう思いつつこの状況をどうにかしないと考えているところ、カイン様はなだめるように断ろうとする。
「確かにすごい技術と知恵だが、金で渡すなんて――」
「ダメです!」
なぜかお嬢様がカイン様の言葉を遮るくらい叫ぶ。あれ? なぜか分からないけどとても嫌な予感が……。
そう思うとお嬢様がとんでもない事を叫ぶ。
「アレスさんは私にとっての最愛の人です! だから奪ったりするのはダメです!」
「NOOOOOOOOO!?」
俺は最悪の予感が当たって思わず叫んでしまう。
オワタアァァ! 色んな意味で終わったぁぁ! だけど真実を言えば最悪の事態を免れる!
俺は誤解が酷くなる前に解こうとする。
「なぜダメですの!? わたくしはアレス様を手に入れて喜ぶ、あなたは商人と深いつながりを得る。まさにWinwinですの!」
「愛はお金では買えません!」
だが二人は口げんかになっていて話を聞いてなかった。
嘘でしょ!? お嬢様はまだ幼いから良いとして、大人であるアンタが何で口げんかしているんだよ!
収拾がつかなくなっている時に、カイン様はかわいそうな目で俺を見つめて言う。
「まさかの少女好きだったんだな……」
「違います! 後俺の事を何だと思っていますか!?」
俺はカイン様の誤解を聞いて叫んで突っ込む。
誰がロリコンだ! 見た目が青年、中身がおっさん、頭脳は軍オタ日本人だからってそこまで落ちぶれて無いわ!
口げんか中のお嬢様とアリオン、それを傍観する事しか出来ない俺とカイン様、これはもはや地獄でありカオスであった。
誰かこの状況を何とかしてくれー!
▲▽▲▽▲▽
「色々起きて疲れた……」
「マァ、確かにそうだが何とか落ち着かせたな」
俺はカイン様と話し合っていた。
カオス状態になった後は、カイン様が二人を叱って落ち着かせた。その姿はまるで厳格なお父さんだったな、見ていた俺もあまり怖さに怯えていた。
マァ、それで何とか収めた上に誤解を解いたからな。
アリオンは騒ぎを起こした謝礼として、屋敷に泊まらせてくれる上に風呂や飯をくれる取って行った。
多分俺がこの屋敷に居座ってほしいんだろうな。だって息を荒くしている上に、目がハートだし。
だけど断るのはさすがに失礼だし、カイン様以外知らない言語がある中で宿を探すのは難しいから受け取った。
にしても旦那様が所持していた屋敷とは違うが、東洋風な景色や雰囲気があってとてもなごみやすかった。
それに風呂は男女に分けて合って待つ必要が無くて銭湯みたいだ。
そうしていると、お嬢様が俺達の所にやって来る。振り返ると俺は思わず目を見開く。
お嬢様が来ているのはゴスロリではなく、ドラゴンクロースと呼ばれる民族衣装だった。
この衣装には男女用があって、俺が着ているのは男性用だがカイン様はいつものシャツと長ズボンだ、理由は「着心地は良いが変な感じがする」からだ。
逆にお嬢様が来ているドラゴンクロースは、長袖長ズボンとは違い、チャイナドレスに似た衣装だ。
上下繋がっていて、たれ布から見える生足が赤くほてっていて、少女らしかぬ色気を放っていた。
俺は頬を赤く染めながら見ていると、お嬢様は恥ずかしそうに隠す。
俺は慌てて謝る。
「す、すみません!」
お嬢様は恥ずかしそうに許す、いい人だ……。
後については食事が豪勢な中華風料理だった。
味はとてもよくお世辞じゃなくてもとても美味だ。箸を使う品が多くて二人は苦戦していたが、俺が教えながら完食した。
のんびりお茶を飲んで話す。
「謝礼金や魔鉄鉛の費用は必ず返します」
「イエ、返済しなくても結構です。ですが頼みごとがあります」
アリオンはそう言うと俺に向けて膝まずく、周りにいる召使たちがとても驚いている。
それもそうだ、だって応竜人はとてもプライドが高い種族だからな。
「私はアレス様に忠誠を誓いますわ」
忠誠って……まるでファンタジーだな、だけど俺は首を傾げなら聞く。
「何で俺に忠誠を誓うんだ? それに俺は少しだけ器用なだけだし」
「そんな、謙遜しないでください! わたくしからすればあれは技術と魔術の粋ですわ!」
確かに古い人たちが積み立ててきた技術だからな。
「ですので、どうかわたくしを弟子にしてください! 財産や権力、体も心も捧げます!」
ちょっと?! 今とんでもない事言ったよね!?
俺は驚きつつも少し考える。弟子にしたりする気はない、だけどお嬢様専用の銃は作りたいし、突撃銃や散弾銃を生産したい、しかしそれは大量の魔鉄鉛が必要だ。
う~ん、こうなった仕方ないな。
「分かった、アリオンは俺の弟子にするよ」
そう言うとアリオンは満面の笑みを浮かべて頭を下げる。
「ありがとうございます、アレス様!」
たかが弟子にするなんて喜びすぎだろ……。
その後は俺の呼び方や銃開発について質問しようとしたが、今日は遅いため彼女を落ち着かせてから就寝する。




