48.商人会
「エェッ! ウォーロックさんが裏切って奥様を刺したのですか!?」
俺はカイン様が見た真実に冷静になれずに叫ぶ、カインは額に手を当てながら答える。
「アア、俺も最初は信じられなかったが、だけど母さんが刺された事と、あいつ等に首を垂れている限り本当だ」
「嘘だろ……」
俺は突然の裏切りに声を失う、信じたくないがまさかウォーロックさんが旦那様達を裏切るなんて……。
俺達は今、怪しい商人が持つ奴隷船に潜んでいる。隼人に勝ってから数日経ってから、外は俺とお嬢様達を探す兵隊が聞き込みをしている。
レヴィンとレヴァンはレヴィンの息子、アイヴァンを殺そうとしたとして捕まえようと、血まなこになって探している。
確かにアイヴァンとして生きてきた隼人を殺害した、だけどあいつが生きているなんて驚きだ。
もしかして近くに誰かがいたのか? だけど回復系の魔法でも死者を蘇らすなんて、王族級の魔導士を数人集めてもかなり運ゲーだ。
噂だと一人の青年が蘇らしたと聞いた、一人で人を蘇れるなんて魔法具特異級〈命の雫〉、または特異級〈命草酒〉を使わないと無理だ。
旦那様と奥様の安否については怪しい商人から聞いた話だと、奥様は屋敷の近くにある塔に閉じ込められ、旦那様は不浄の大陸に搬送されたと聞いた。
しかも旦那様と奥様の首には隷属の首輪を着けされて、うかつな行動が出来なくなっている。
その上、奥様を幽閉している塔には大量の兵を警備として見回りにしているとか。
お嬢様はこの事を聞いてこのまま戦おうと「アレスさんが教えた突撃銃を作りましょう!」など言っていた。
マァ、カイン様に落ち着かせれたからな、お嬢様は悔しそうに涙を流していた。よっぽど悔しかったんだろう。
俺はお嬢様が暴走させない様にそばにいて落ち着かせる。
今はお嬢様と一緒に奴隷船の客室で怪しい商人が来るのを待っている、しばらくすると怪しい商人がやって来る、カイン様は外の様子を聞く。
「マルスさん、外の様子はどうでしたか?」
「カイン殿が危惧した通り。外では兵士が捜索しておりまして、そのうち室内にも捜索するかと……」
「アイツ等……!」
カイン様はそう言って額に手を当てて眉をひそめる。
その気持ちは分かる、俺もあいつ等のうっとうしさにいら立ちを隠せずにいる。何か癒されないと胃が痛くなりそうだ……あっ、少し失礼かもしれない。
だけど俺はお嬢様の頭をなでる、すると「ヒャッ!?」と驚いて叫ぶ。
ヤバい、かなり可愛い。俺はお嬢様の頭をさらになでる、するとお嬢様は頬を真っ赤に染めて言う。
「えっと、アレスさん……人前でそれは……」
「すみません、あとで土下座しますので許してください」
そう言いながら俺はお嬢様の頭をなで続ける、カイン様はかなり呆れているが、マルスと呼ばれた商人は気にしない。
さすが商人、わけわかんない事は慣れているってか? ってさすがにそれはつまらないな。
そう思っていると、マルスは一枚の紙をカイン様に渡す。一体何だろう?
俺はお嬢様の頭をなでるのをやめて謝る、そして一枚の紙を見て思う。
うん、何かいているかサッパリ分からない。一応読み書きが出来る様に寝る時間を削って勉強している、だけどこの言語は英語に近いシルバーホースやルナと違って、これは中国語に見える。
分からずに困っていると、カイン様が一枚の紙に指さしながら聞く。
「これって神龍帝国シンの言葉じゃないか? なぜそのようなものを?」
カイン様が少し首を傾げている、マルスは小さいまるメガネをかけなおして言う。
「これはあなた達にとってのチャンスですよ?」
「「「(俺)(私)達にとってのチャンス?」」」
お嬢様を含めた俺達は、マルスが言う事に理解できずに声を合わせて聞く。
最初に神龍帝国シンはシルバーホースやルナと違って、シンは東風な文化が目立っており、この国の住民の九割は応竜人という人種がいる。
その人種は一つしかなく、そのためかなりプライドが高いという。なぜか失礼かもしれないけど、脳裏にDQNという言葉が思い過ぎったが、それをもし本人たちに行ったら失礼だろ
でだ、その紙には『下記の魔法具を作ったものがいればココに来るように、なお偽物だったら厳重な罰を下す』と書かれていた。
下記に書かれていたのは回転式拳銃〈ニューナンブM60〉と突撃銃〈M4カービン〉だった。
なんで奪われた銃がお尋ね者みたいに書かれてんだよ! まるで武器商人じゃないか。
どうやらシンに住む商人会の現会長はこの銃を作ったものを探そうとしており、ちょうどまだやっていた。
マルスの方を見る、するとこいつは何か分かったような笑みを浮かべる。
この状況に乗って俺の技術を奪おうとしてくるのだろう。もちろん即座に断りたいが、報酬金の額がとても良い上に、大量の魔鉄鉛を与えると書かれている。
俺は二人に聞いたところ「「行くぞ(きます)」」即答だった。
社会人からすればとても胡散臭い、だけど二人の即答の上に突撃されかもしれない、そう考えると俺は諦めてマルスに言う。
「行くよ、そのシンとやらの国に」
そう言うとマルスは目を輝かせて後ろの部下に命令する。
「オォ! あなたは流れを掴む才覚があるとは! 早速船の準備をします。出発時間は夜となります。あなた達、急いで船を用意してください!」
「「ハッ!」」
部下はそう言うとこの部屋から去る。
ハァ~断れずに受けれたけど……鬼が出るか蛇が出るかだな。
そう思いつつ額に手を当てる。そして数時間後に船の用意が出来てシンに向けて出港する。
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