45.魔血邪装
俺はその名前を聞いて強ばってしまう、その名前は転生する前の、なのにどうして知っているんだ!?
俺は心の中で焦っていると、アイヴァンは手をかざして詠唱する。
『火の根源よ。今一度、業火の弾丸を撃ち出せ! 業火弾!』
詠唱し終えると、真夜中でも辺りが見えるくらい、紅い炎の弾丸を俺に向けて撃ち込む。
俺は魔導手袋の力で無盾を発動させて防ぐ、しかし熱風が肌をひりつき、目をやられるような光が視界に強く焼き付ける。
焼けるような痛みが染み渡るが、歯を食いしばって何とか防いだ。
アイヴァンは俺の苦しんでいる姿を悦び、さらに魔法を放とうと詠唱する。
『力の根源よ。今一度、魔法の力を上げよ! 魔導威力上昇! 雷の根源よ。今一度、稲妻の矛を撃ち出せ! 稲妻矛! 水の根源よ。今一度、激流の森を撃ち出せ! 激流銛! 風の根源よ。今一度、敵対者を刺し切る矛を生み出せ! 疾風矛!』
「う、くぅ……」
火以外の魔法を放った上に、魔法威力を上げる自作魔法を使って無盾を破壊しようとする、こっちも何とか耐えるが少しずつひび割れていく。
このままじゃ……俺の不安が当たってしまう、なんと無盾が破壊されてしまい、俺とお嬢様が吹き飛ばされてしまった。
「グゥ……!」
「ウゥ……!」
爆風に吹き飛ばされて地面に転ばされて、体を強く強打されて何とか立ち上がる、すると俺の脳裏にとある景色がフラッシュバックする。
それは昔の俺がまだ学生の時にいじめられていた景色だ。
昔の俺が廊下に惨めに倒れ、目の前に立つ男が見下すような目で俺を見る。
この景色はまさに似ていた。俺は震えた声である言葉で話す。
「もしかしてお前は……隼人なのか?」
俺はこの世界に無い言葉……日本語で昔いじめてきた奴の名前を言う、すると奴は腹を抱えて笑い出して言う。
「アハハ! ようやく気付いたのかよ、琢磨くぅん?」
アイヴァン……いや、隼人は前の俺の名前をバカにするように言うが、俺はいろいろな疑問がよぎり、物凄く気になる事を言う。
「隼人……お前はどうやって転生したんだよ!? 転生するには神の力が必要なんだぞ!」
俺はこいつがどうやって転生したのか聞く、すると隼人は俺が地面に伏せているからか、とても流暢に言いだす。
「何で転生したかって? それは黒フードの奴がこの体にしてくれたんだよ」
「黒フードの奴? もしかして世界を滅ぼそうとしている黒幕の事か!」
隼人をアイヴァンに転生させた奴が黒幕の事だと知る、すると後ろから絹を裂く叫び声が聞こえる。
「キャー!」
俺は声の主がお嬢様だと思い、振り向くとそこにはお嬢様の首を強く握りしめる謎の鎧男がいた。
「お嬢様!」
俺は叫んで謎の鎧男に向けて〈Mk23〉を構えて引き金を引く。すると鎧男はお嬢様を手放して弾丸を弾き飛ばす。
俺ははじき返された弾丸を避けながら、放されたお嬢様を抱える、お嬢様は顔が青冷め、徐々に肌色に戻る、助けるのが遅かったら危なかっただろう。
俺はお嬢様を離れた場所におろす、すると鎧男は天に向けて大声で叫ぶ。
「GOOOOOOOO!」
俺はその叫び声を聞いて思わず耳を防いでしまう、鎧男はその隙を突いて瞬く間に俺に近づいて、鳩尾に目掛けて強く蹴る、その衝撃と共にへし折る音が響く。
「グェ!?」
俺は鳩尾が蹴られた衝撃とろっ骨が折れた事で、体内の酸素をすべて吐き出し、唸り声をあげてしまう。
何だよ、これ。一応屋敷から出た時に、自作魔法の堅牢と俊敏を掛けたはずなのに……どれだけ強いんだよ!
俺は心の奥底で悪態をつくが、いくら悪態をついても意味が無いだろうと思い、無剣を無詠唱で生み出して袈裟切りにする。
しかし鎧男の脇腹に紅の鋭利な爪が無剣を歯止める。いくら力を入れても動じたりもせず、そのまま無剣を砕いてその爪が俺の脇腹を裂く。
「グゥ!」
鋭利な爪が腹を裂く痛みと焼けるような痛みにうめく、俺が苦しんでいる所を見ている隼人は、嘲笑いながら鎧男の正体を言う。
「琢磨君さ、どれだけバカなの? そいつは君が守っているお嬢様のお兄様だよ?」
「……ハッ?」
俺は隼人の言っている事に理解できずに呟く、すると鎧男は指先から血液を吹き出して、それをブレード状にする、すると両腕をクロスにして俺を切り裂く。
「GARUAAAAAAA!」
「グァァァァ!」
俺は何とかバックステップで避けようとした、けど間に合わずに斬撃を食らって叫んでしまう。
バックステップしたことで後ろに倒れ込んでしまい、胸から大量の血が熱と共に噴水の様に噴き出す。
ま、マズイ……このままじゃ死ぬ。
懐に隠してある治癒水を取り出そうとしても、出血が多くて力が全く入らない。
このまま死ぬのか……。
鎧男がとどめを刺して命の終わりを思った瞬間、一人の少女が俺の前に立つ。
少女の正体はレインお嬢様だった、俺はかすれ声で呼びかける。
「お嬢様……イ、急いで逃げて……!」
俺は歯を食いしばって立ち上がる、しかしお嬢様は頑なに逃げずに俺の前に立ちふさがる。
鎧男もといカイン様はお嬢様の行動に首を傾げる。
「GRRRR?」
お嬢様が立ちふさがっている時に、隼人はお嬢様の行動を爆笑する。
「アハハ! 何考えてんのこの子? バカすぎて笑いが止まらないよ!」
隼人の言い分に俺は、はらわたを煮えくり返る怒りが溢れ出す。
あいつが呑気に笑っていても、お嬢様は無視してカイン様は元に戻そうと説得する。
「お兄様、何でアレスさんをいじめるのですか? もう無理はしないでください。お願いですから戻ってきてよ……お兄ちゃん!」
お嬢様は最愛の家族がほかの人を、いたぶる姿を見るのが耐え切れずに、止めに入って頬に一筋の涙を流す。
するとカイン様は少しだけ正気に戻ったか、少しずつ後退ってしまう。
「G……GAA」
カイン様もこんなことをしたくないんだろう、しかし隼人はその思いを踏み弄るように笑う。
「何だよ、家族愛だの兄弟愛なんだの正直言ってキモいんだよ! コイツは堕天吸血鬼の落ちこぼれなのに、兄として愛するなんて馬鹿みたいだな! それにこいつはもう元に戻らないんだよ」
「どういう事だ!」
俺はカイン様が躊躇している間に、治癒水を飲んで一命を取り留めたが、隼人が言っている事に理解できずに叫ぶ。
すると隼人は呆れつつも言う。
「本当に奴隷級はバカなうえに、理解力が無いなんて面倒くさいなぁ……馬鹿でも分かりやすく言うのなら、今着ている魔血邪装を破壊しない限り、無駄何だよ!」
隼人はそう言うなり叫ぶ、するとカイン様は突如悶えだし、遂に手から血を噴出させてブレード状にする、そしてそのままお嬢様に振り下ろす構えを取る。
マズイ、急いで守らないと!
俺は無我夢中で彼女を守るように抱いて、お嬢様と共に目を閉じる。そしてその凶刃が襲い掛かると思っていた。
次回もストレス展開がありますがラストはスカッと展開にします。
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