44.逃走
俺は戦場と化している遠く離れた草原を見ている時に、誰かが部屋の扉を叩いている音がして、俺は首を傾げながら扉に近づく。
こんな時なのに一体何だろうか?
そう思いながら扉を開ける、するとそこには片腕を抑えて、全身血まみれのフォルトさんが苦しんでいた。
俺は慌てながらフォルトさんに近づいて質問する。
「フォルトさん!? その傷どうしたのですか!?」
俺は慌てつつもその傷について聞く、するとフォルトさんはとんでもない事を言う。
「それが……奥様が銀のナイフに刺されて瀕死の危機になって旦那様が降参し、カイン様は敵陣についている青年に捕まっております!」
「何だって!?」
俺はそのことに驚きを隠せずに叫んでしまう、旦那様と奥様はとても強くてカイン様の実力も高いのに、どうして奥様が刺されたんだ?
そう思っていると、後ろから敵兵がフォルトさんを切り捨てようとする、だが俺は素早く拳銃〈Mk23〉を懐から取り出して構える。
敵兵は勢い良く振り下ろそうとする、しかし俺は瞬時に引き金を引いて片手剣を持つ手を吹き飛ばす。
弾丸は敵兵の手に当たって、片手剣を彼方に飛ばされ焦っている間に、下級体術系戦技風掌で鳩尾に撃ち込んで黙らせる。
敵兵を黙らせて近くにあったカーテンで縛り付ける、フォルトさんは息を荒くしながら、大きなクマさん人形をどかす、するとそこには隠し扉が隠されていた。
フォルトさんは傷だらけなのにこの隠し扉について説明する。
「この扉は旦那様がもしものために用意しました。これでお嬢様と逃げてください……!」
フォルトさんの言っている事に驚く、まさか旦那様はこのことも予想していたんだな。
俺はお嬢様に近づいて言う。
「お嬢様、旦那様と奥様とカイン様が敵陣に捕まれてしまいました」
「エェ!?」
お嬢様はとても驚き出すが、奥から何かがやってくる音がする。
俺は急いでお嬢様をお姫様抱っこする、すると彼女は瞬間湯沸かし器のように顔を真っ赤に染めて驚く。
「エェッ!? こ、これは……!?」
「すみませんが、急いでいるので許してください!」
そう言うと、隠し扉に入って扉を占める、その途中でフォルトさんが「後は頼みました……!」と言い、俺はこの屋敷から脱出する。
▲▽▲▽▲▽
緑髪でとんがりアホ毛の青年アマンは右手に干し肉を、左手には一つの鎖を引きずりながら進みだす。
アマンが持つ鎖の先には、とげ付きの首輪をつけられたカインが引きずられていた。
カインはいつもつけているガスマスクを外され、代わりに口に猿ぐつわを付けられ、手足を拘束されてまったく動けずにうずくまっているが、心の中で苦渋している。
(クッ、まさか母さんが不意打ちにやられるなんて、それにあの人が……いや、今はこいつがどこに、行っているの考えないといけない)
カインは少しだけ冷静になって、アマンが何をするか考えていると、鎖を手放して猿ぐつわを外して話しかける。
「プハッ!」
「カイン・ヴァレンタだろう? お前に少し聞きたい事がありますが?」
「何だ……?」
カインはアマンを睨んで警戒する、アマンはカインの目をじっと見て聞く。
「お前は確かあの病気にかかっているだろ?」
「病気だと? 何の事だがさっぱりだが?」
「確かお前は契約者から〈純吸血鬼のなりそこない〉と聞いたのにおかしいな?」
「ッ――!」
カインはその言葉を聞いて冷静になれず、アマンに対する睨みをさらに深く、ドスが混ざった声で聞く。
「そのことをどこで知った……!」
「俺の契約者はお前が知っている人だぞ」
アマンはそう言うと、カインは強く舌打ちをしていら立ちを隠せず、アマンはさらに追い打ちを掛ける。
「お前はそのことを認めたくない一心で、妹のいじめを自殺するまで見捨てようとしただろう?」
「違う……」
「親を信じず、妹を信じず、従者を信じないお前はまさに獣、永劫の孤独に苦しんで――」
「違うって言っているだろ!」
カインは心の奥底からわき出す怒りに、身を任せて鎖を引きちぎり、紅の禍月を顕現させてアマン目がけて、強く振り下ろす。
アマンは瞬時に横に避けるが、さっきいた場所が強くえぐれるような惨状になっていた。それを見たアマンは少しだけ感心しながら言う。
「生命武装……特定種族から生み出せる生命型武器。特に特異級の鮮血の月と禍月を合わせた武器。初めて見るが……とても純吸血鬼じゃなく堕天吸血鬼だな」
アマンの言う通り、カインは先ほどとは程遠い異形の姿になっていた。
その姿はSFに出てきそうな機械的な鎧だが、大量の鮮血を浴びたくらいに紅く染まっていて、もはやカインかどうかわからなくなっていた。
堕天吸血鬼……それは吸血鬼や純吸血鬼が稀に起きる遺伝病の事だ、この病気にかかったものは獣のように狂暴になり、所かまわずに暴れまくって幾多の血を啜り続ける怪物だ。
カインはその堕天吸血鬼の遺伝子を持つ怪物(出来損ない)であった、堕天吸血鬼と化したカインはどこかへ向かう。
▲▽▲▽▲▽
俺はお嬢様と共に敵兵の追手から逃げているが、目の前に出ている謎の怪物が邪魔してくるが、俺が所持している〈ソードオフショットガン〉で倒している。
バンバン倒しても再生してきりがないが、少しずつだから追っ手から逃げている。
何とか追っ手から逃げて小屋の前に止まっていると、小屋の中から一人の青年が出てきた。
その姿を見て俺はお嬢様を後ろに下がらせる、小屋から出てきた青年はアイヴァンだ。
アイヴァンは俺を見て呆れだす。
「まさかここまで逃げるなんて、本当に奴隷級はバカだな……なぁ琢磨?」
もしよかったら良いねと感想とブックマークとレビューをしたら嬉しいです。




