30.試験
眩い光に起きて周りを見る。
一瞬ここはドコか分からずに少し寝ぼけていたが、少しずつ思い出す。
「そうだ、俺今日の試験を受けるために、宿に泊まっていたんだった」
そう思いながらいつもの服に着替えて、自由組合に向かう。
しばらく歩いていると、住民が話し合っていて少し聞き耳を立てる。
「今日は新たな冒険者たちが選ばれるんだっけ?」
「そうらしい、でも今回来る悪魔は狂戦の騎士と呼ばれる公爵級の悪魔らしいぜ」
「公爵級ってかなり強いはずだろ? 大丈夫なのか?」
「そこについては、自由組合が所持する叡智王之魔導書という魔法具で使役しているから大丈夫らしいぞ」
「だったらいいけどな」
狂戦の騎士という名前に俺は少しくらいなら聞いた事はある。
狂戦の騎士と呼ばれる悪魔はソロモン72柱の一柱で、あらゆる戦術を知っていたり、武器を調達したり、未来予知や財宝の探知の能力を持っている。
しかし噂はうやむやである事はあるけど、試験対策の参考なるから覚えておこう。
そう思いながら自由組合に着いて中に入る、すると様々な武器を持った参加者たちが試験について話し合っていた。
「今回の試験に使う悪魔は何だと思う? 俺は業火の翼狼だと思うぜ」
「僕は嵐雨の主だと思うよ」
「いや、絶対狂信の豹だな」
他の参加者が予測している、どうやら参加者は試験用の悪魔は何か知らないだろう。
そう思いながら、アイネットさんに話しかける。
「アイネットさん、おはようございます」
「アッ、アレスさん。おはようございます」
アイネットさんは俺に気付くと頭を下げながら返事をする。
アイネットさんは手招きをして、何だろうと思いながら近づくと、小声で話しかける。
「(アレスさん? ルイ・アスビさんから手紙を渡されてますよね?)」
手紙って、あれか? アリス達と別れる前に渡されたやつ。
確か「もし自由組合に着いたらこの手紙を渡しておいておきな」と言っていたけどまさかこれのためか?
俺は懐から一通の手紙を差し出すと、アイネットさんは受け取って中身を確認する。
一通り見た後、アイネットさんは手紙を机の下に入れて言う。
「ルイさんの招待状を確認しました。特別にあなたが所持している銃器を試験に持っていくのを許可します」
もしかしてルイさんはこの事を予想して手紙を渡したのか? 何はともあれこれで回転式拳銃と突撃銃を持っていけるな。
しかし悪魔が再装填している間に襲い掛かったら危険だ、一応自由組合が用意してくれた武器を使わせてもらおう。
受付の近くに置いてあった武器置き場によってみる。
えっと、置いてあるのは片手剣、片手斧、槍、弓、回転式拳銃、盾などが置いてあるが、どれも素材は粗鉄で出来ていた。
俺は少し〈複製〉で性能を見た後に片手剣を選んで席に座る、その間に試験が始まるまで弾倉は十分かしっかり確認する。
そうしてしばらく待つと、自由組合の代表らしき青年がやって来る。
その姿は黒髪のショートに、緋色の瞳、細い顔つきの上に細身の体格をしている、見た目は若い方で十八歳ぐらいだろう。
その青年は頭を下げてあいさつする。
「ようこそ、自由組合の試験を受けに来た冒険者候補生達よ、僕の名前はアーク・エルメロイ。初代自由組合の総統長だ」
アーク・エルメロイと名乗った青年が初代総統長だと言う、すると俺を含んでこの場にいた者たちは驚きを隠せずにいた。
それもそのはず、なぜなら自由組合は六式魔術師が英雄となってから数年後に出来て、そして俺達が生きている時代はその数千年後だ。
もしかしてアーク・エルメロイは転生者、もしくは長寿系の天授を授かっているだろう。
なんて思っていると、昨日突き飛ばしてきた奴が、ずかずかと総統長に近づいて言う。
「お前みたいなガキが初代総統長なんて笑い種だろ?」
コイツは総統長の事を、初代を語るガキか身代わりだと思っているだろう。
しかし総統長はそんな言葉を気にせずに、アイネットさんから書類を貰って確認する。
「確か君はラノビア・ウェルシア……シルバーホース城下町の貴族階級の息子だろう?」
そう言うとラノビアと呼ばれた男は驚愕して叫ぶ。
「な、何で俺の名前を……!」
「君の情報は情報屋によって筒抜けなんだよ、もし犯罪行為をしたら父親に伝えるけどどうする?」
「ウギギ……!」
ラノビアは少しうめくと少しだけ下がった、さすがに自分の情報をばらされたりするとまずいのだろう。
ラノビアが大人しくすると、総統長は壁に架かれている壁掛けの牡鹿にある角を下げると、床から丸石で出来た扉が出現する。
この場にいる全員が驚くが、総統長は淡々と説明する。
「この扉の先には試験会場先である闘技場がある。ここで参加を拒否する事は出来るけどどうする?」
総統長は一度辞退するか確認するが、だれもこの場を去ろうとせずに残る。
一通り見ると、総統長は丸石の扉に手をかけて言う。
「それじゃあ、開けるけど少し目を閉じといて!」
叫んだと同時に扉を開ける、すると紫色の光が辺りを包み込んで、この場にいる全員があまりのまぶしさで目を閉じる。
そして何かに包まれる感覚がして、扉に引きずり込まれてしまう。
少し経って目を開くと、さっきまで酒場にいたのに、石レンガで出来た闘技場にいた。
俺を含んだ候補生達は何が起きているか分からずにいるが、向こうにいる人影に気付く。
一見すれば馬に乗った騎士だ。
だがその姿は黒く染まった禍々しい甲冑を着て、乗っている馬は憎悪と軽蔑が混ざり、手には鋼鉄の槍を持ち、穂の部分には蛇の装飾が施されていた。
この場にいる全員が一体何なのか分からずにいるが、謎の騎士が俺達に気付いて自身の名を叫ぶ。
『我が名は叡智階位十五位の公爵、狂戦の騎士なり! 我に立ち向かおうとする勇敢なる者よ、我にいふせよ、我に抗え!』
元ネタはソロモン72柱を元にして考えました。今後出そうとかなと考えています。
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