21.VS魅惑の吸血薔薇前編
ゆっくり眠っている時に、扉を叩く音か聞こえて開けると、年下の男の子がいた。
俺は鉛のように思いまぶたを擦りながら質問する。
「早朝に起こしに来るなんてどうしたんだ?」
「リーベット先生が年長者を呼んできて欲しいって言ったよ」
なんでこんな早朝に年長者達を呼ぶのだろうか?
だけどいくら考えても分からないし年下の男の頭をなでながら言う。
「服を着替えたら向かうから待ってくれないか?」
「うん、分かったよ」
年下の男の子はそう言うと床に座り込んで待つ。
俺はその間に着替える、着替え終わったら年下の男の子について行くとリーベット先生と大人達が居た。
一体何が起きたんだ? そう思いつつ周りを見るとアリスとヴィンセントもいた。
アリスとヴィンセントは俺に気付くと近づいて質問してくる。
「アレスも呼ばれたの?」
「アア」
「自分達……もとい年長者を呼ぶなんて一体何が起きたんだ?」
ヴィンセントがこの状況をふかんしていると、リーベット先生が前に出て説明する。
「いきなり早朝に起こしてしまってすみません、ですが大事な話なのでよく聞いてください。実は妖魔王魅惑の吸血薔薇が隣町に襲撃しようとしています」
「「ナッ――!?」」
妖魔王が出て俺達は声を失う。
そのうえヴィンセントが苦虫をかみつぶすように渋くなる。
妖魔王の内の一体、魅惑の吸血薔薇は一か月前にルイさんから聞いた事はある。
魅惑の吸血薔薇は元々妖華女と呼ばれる不浄人形だが、魔法具特異級搾血剣と同化したことで魔力量が増加して妖魔王になった。
姿が上半身は大人の女性だが下半身がバラで、髪は血のように赤い長髪で体には茨のタトゥーが刻まれて、脚部となる茨は鋭利な棘と吸血器官がある。そのうえ実力は+Aだと聞いた。
しかし本当に存在していたなんて、しかし大量の大人がいたとしても良くても−Aくらいだろう。
本当に大丈夫なのか? なんて心配していると他の子ども達がリーベット先生に抱きつく。
「先生戦いに行くの?」
「行かないでー!」
「寂しいよー!」
リーベット先生は子供たちにとって親同然だ、いきなり死地に行ってくるなんて理解できないだろう。
しかしリーベット先生は子ども達を優しく抱いて言う。
「君達の言う通り、私は戦いに行きますが怪我した人達を助ける役割のため前線に出ませんので安心してください」
「本当に?」
「本当ですよ、それに冒険者もいますので大丈夫です」
子ども達はリーベット先生が本当だと知ると安心する、すると俺の方に視線を向けて言う。
「それとアレス君、わたしがいない間に変な事はしないでくださいよ?」
「し、しませんよ!」
リーベット先生に怪しまれて俺は焦って答えると皆が一斉に笑い出す。
俺も苦笑いで頬を掻く。
冒険者がいればさすがに大丈夫だが、なぜか嫌な予感をするが気のせいだろう。
そうしてリーベット先生たちは隣町に向かって歩く。
暫くして姿が見えなくなると、俺は裏山に行って小屋の中でとある物を作る
それは突撃銃の〈Cz805〉と〈20式小銃〉だ。
〈M4カービン〉を完成させて同じようにやってみたが少しぐらいは大丈夫だろう。
そう思いながら確認をしていると一人の少年が泣きながら俺の方へやって来る。
俺はどうしたんだと思いながら少年を抱く。
すると少年は最悪の事態を伝える。
「孤児院に小鬼や魔菌が襲ってきて他の子ども達が攫われたの! それにアリスお姉ちゃんとヴィンセントお兄ちゃんが助けようと言って森の奥に行ったの!」
「何だって!?」
少年の言葉に俺は焦りを見せて叫ぶ。
クソッ! 嫌な予感はこれかよ!
俺は急いで弾倉を装填すると保持容量から一本の除草剤を渡す。
少年は首を傾げるが早口で説明する。
「その除草剤は樹型でもたおせるくらいの強度だからコレを使ってくれ!」
俺はそう言って全力ダッシュでアリスとヴィンセントの所に向かう。
その除草剤は現実世界にあるア●製●ー●ーデンに似た成分を配合させたものだ。
さすがの不浄人形もこれにはたまらないだろう。その証拠に魔菌の断末魔が今でも響いている。
急いで間に合うために走っていると、幼少期に聞いたリーベット先生の言葉を思い出す。
『あなたのために思って言いますが、この世界は欺きや洗脳が横行しています。これ以上夢物語を見ると痛い目に合うどころか、命の危険があります。ですのでもう諦めるしかありません』
俺はその言葉を思い出して遅くなってしまう、しかし頭を振って再び速く走る。
いや、俺はもう決めたんだ。もう二度と誰かを見捨てたりなどしない事を!
俺は心の中で叫んで再びアリスとヴィンセントの所に向かう。
頼む、間に合ってくれ!
次回から戦闘回が始まります。
もしかしたら長くなるかもしれません。
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