2.死亡
俺の名前は三堂琢磨。
経った今、会社からクビ宣告された上に家族から勘当された哀れな男だ。
「どうしてこうなった……」
俺は暗い夜を見上げながら一人で呟く。急に社長から「君は会社の金を横領したから首だ!」と言われた。
急に何が起きているか分からずにいると、同僚と上司が嘲笑っている姿を見てこいつらが俺に横領を擦り付けたんだと知って、憤りで殴り掛かった。
だけど力が無くて細い事で、同僚から暴力を食らう事になった上に、親も絡んでいたか同僚の嫁である妹からも「あんたみたいなキモブ野郎なんて死ねよ!」なんて言われた後に家を追い出されてしまった。
俺はあの時を思い出すと怒りが込み上がって近くにある空き缶を強く蹴りながら叫ぶ。
「何で俺だけこんな目に合わなきゃいけないだよ! 俺はただあの会社の前社長に惹かれて入ったのに、今の社長になるとブラックになるわ、ゴマすりがうまい奴が得するわ、挙句の果てに同僚と上司のクソコンビに嵌めれなきゃいけないんだよ!」
あの妹達もそうだ! 厳しい祖父母達が亡くなってお礼金や遺産を自分の娯楽のために使ったり、俺が苦労して貯金した金を勝手に引き下ろしたり、上げの果てに勝手に勘当するなんて何様のつもりだよ!
もう少し叫びたかったが、いい加減疲れてきて近くの公園にある椅子に座る。
すると目の前に純白の子猫がガにじゃれていて、その姿を見て俺は少し心が軽くなった。
「良いよな、お前は自由に生きて誰にもあれやれこれやれなんて言われないからな」
なんて皮肉気に思っていると、不快の権化達が俺を見ると嘲笑いながらこっちに近づいてくる。
「オイオイ、どうしたんだよ。お前みたいに汚い子猫と遊んでいるなんてよ」
「何しに来たんだよ、屑吉」
先頭にいるのは屑吉。なんというがイケメンなのに極度のクズで、俺に仕事押し付けたりヒ●●キの真似で取引先の相手を怒らせたり眉間のしわを深くする不快の権化Aだ。
屑吉の隣にいるのは葛井。俺の上司である。
だがかなりの社内ニートで前社長からよく叱られているのに部下に仕事を振るや何やらで、胃薬を呑む事になった不快の権化Bだ。
屑吉の腕に胸を押し付けているのは久住。俺の妹で同僚の嫁でもある。
だが俺の事を見下していている上に、こいつが好きな奴にブランド物を買わせたり、いじめをよくやっていたり、俺のため息を深くさせる不快の権化Cだ。
更に親父にお袋、現社長がいているために、さっきの癒しが台無しになってこの場から去ろうとする。
すると屑吉が俺の肩を掴んで話しかける。
「どうして俺達から消えようとしてんだよ?」
「ウルセェよ、そんなの俺の勝手だろ? それになにしに来たんだ?」
「そんなの一つ忠告しに来たに決まっているでしょ? 元お兄ちゃん」
「一体どう言う事だよ、それ!」
俺が叫んで聞くが、俺の姿を見て不快の権化共は一斉に笑い出す。
ウゼェェェェェェ! こいつらマジで何しに来たんだよ。俺をバカにしに来たのか忠告しに来たかどっちだよ!
なんて思っていると久住が子猫を掴み上げる。
「何この猫? 汚すぎでしょ」
「オイ! この猫は関係ないだろ!」
しかし俺の声は空しく、こいつ等は俺の声を聞かずに子猫に何かしていた。
そして現社長が俺の前に出したものは何と手足を結んだ子猫だった。
「何をする気だ!」
「何って私みたいな上級国民が喜ぶ遊戯に決まっているだろ?」
現社長はそう言うと子猫を掴んだまま大きく振りかぶって道路の交差点目掛けて投げる。
子猫はうまく着地したがバランスを崩して横たわる、コイツ等がやる事に気付き急いで子猫を助ける。
あいつ等、何でこんな事ができるんだよ!
心の中で悪態をつきつつ子猫の足を縛る紐を解こうとする、だがきつく結ばれていて全然外せなかった。
「お父さん、こいつがどうなるか賭けようよ」
「そうね」
「じゃあ、俺はコイツとクソ猫が死ぬのが一万」
「俺はこいつが死ぬのが五万だ」
「私は彼ピと同じで」
「俺も屑吉君と同じにするか」
「私は上司さんね」
「私もそうしよう」
ちなみにこいつ等は不吉な賭けを行っていた、けど邪魔はして無くていいと思いつつ、紐を解く。
その時に誰かがやって来る。
「お前は……昼飯!?」
「先輩!? 何やってんすか?」
昼飯は驚きながらこっちに近づく。
俺は一か八か子猫を抱いて走る。
「ウォォォォォォォォ!」
自分でも驚く位叫び声を上げて走り出す。
昼飯は聞こえないが叫びながら道路を指さしていた。
それもそのはずこの道路は良く大型トラックが通っていて、いずれここに居座っても俺諸共が轢かれるのは時間の問題であった。
そして届く範囲になると俺は昼飯に目掛けて投げながら叫ぶ。
「昼飯、受けとれぇぇぇ!」
「ウワァ!?」
昼飯は驚きながら投げた子猫を受け取って倒れる、俺は安心して止まって昼飯に言い残す。
「昼飯、こいつの事は頼んだ」
俺はそう言った後に大型トラックに轢かれてしまった。
「ガハッ!?」
「先輩!?」
俺は上下真っ二つにされて昼飯の前に倒れる。
昼飯は俺に近づいて呼びかけるが、俺は声を掛ける事ですら出来ずに、意識が混濁し始める。
「先輩、気を保ってください!」
「ミャァァ」
すると子猫は俺の頬を舐めて心配する、俺の事を感謝しているだろう。
俺は出来がいい部下に心配されて喜びを噛み締めながら目を閉じる、その時に昼飯が大声で俺の名前を泣き叫ぶ。
「琢磨センパァァァイ!」
そして暗い夜に悲痛の叫び声が響き、不快の権化共は俺の死に姿を見て嘲笑いだす。
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