17.それから数年後
悪鬼の集団を倒して数年経つ。
俺は今突撃銃〈M4カービン〉の最終試験をするために弾倉を装填して構える。
構えている先には魔鉄鉛で複製した空き缶を縦一列に乗せている。一度呼吸を挟んだ後は引き金を引く。すると銃身から白煙を吹き出すと同時に弾丸を空き缶に撃ち込む。
俺は狙いがずれないようにそのまま押さえつけながら引き金を引き付ける。
しばらく経つと弾倉の弾丸を撃ち尽くして、空き缶に近づきそれを取ってみる。
空き缶は穴だらけになっているが、ズレの間は数ミリほどになっている。
「よし。ズレが数ミリになっているし、振動もかなり抑えるようになったな」
ノートに必要な火薬量と経口、その他もろもろメモをする。
最初は弾丸のズレが三十センチくらいだったのに対し、今では数ミリになっている。
これも研究を重ねた結果だな。他の空き缶を回収している時に俺の名を呼び声が聞こえた。
「おーい、アレス!」
俺は振り向くと、アリスが昼食用の食べ物を入れた籠を持ってきた。
「アリス、いつもすまんな」
「私達の銃を整備してくれるからいいよ」
俺はアリスから籠を貰うと、近くの小岩に腰掛けて食事を始める。
えっと、今日の昼食はサンドイッチとリンゴと水入り瓶だな。
さっそくサンドイッチをかぶりつく。
こんがり焼かれているパンにはさんでいるトマトがとてもジューシーで、ありつつも翻弄鳥の肉のガッツリさが追撃してくる。さらにソースのまろやかさで口の中がリセットされる。
うん、正直言って美味い。もはや専門店を始めてもおかしくない位美味過ぎる。
「これ物凄く美味いぞ!」
「よかった、リーベット先生から料理の手伝いした甲斐があったよ」
料理の手伝いをしただけではこんなに美味しくならないのでは? と言いたいが止めておこう。
確かにリーベット先生の料理の腕はかなり美味しいからな。
なんて思いつつ次のサンドイッチを取ろうとが、なにもなくて籠の方を見ると四個ぐらいあったサンドイッチが瞬時に消えていた。
「えっ!?」
錯覚かと目をこする。と、その時、「イテテテテ!?」
低音と、高音が混ざった叫び声が聞こえてきた。
声の主の方に向くと、ヴィンセントが立っていた。
「何だ、ヴィンセントかよ」
「チョッ、アリス? サンドイッチ盗ったの悪かったからもうつねるのを止めてくれよ!」
ヴィンセントはつねられている手を放してほしいと言っているが、アリスはまだつねっている。
「それは自業自得でしょ。後新しい魔法を使っているの?」
「そ、そうだよ。だけどもうやめてくれよ!」
「……分かったわよ、その代りその魔法を教えなさいよ?」
「わ、分かったから!」
アリスは呆れつつ手を離すと、ヴィンセントが涙目になりながら手を振っている。
多分、痛みを紛らせたいんだろうな。
少し手を振って痛みを誤魔化そうとしていたヴィンセントが、どうやってバレずにサンドイッチを食べれた理由を言う。
「イテテテ。自分が使った魔法は疾風隠れッテ言う自作魔法を使ったんだよ」
「魔法って自作で出来る物なのか?」
俺はヴィンセントが言う自作魔法に興味を持つ。
するとアリスが詳しく教えてくれる。
「今ある魔法は全部六式魔術師様達が作った術式で、それを工夫した者を自作魔法というの。マァ、大規模詠唱や生活魔法に空間魔法も同じよ」
「もしかして、持ち物を空間に入れる魔法もあるか?」
俺は一つの質問をアリスに聞く。
それは異世界転生物によくあるアイテムボックスの事だ。もしそれがあれば弾倉を大量に入れるし、貴重品を奪われることはなさそうだ。
ヴィンセント心当たりがあるように言う。
「それって保持容量の事か?」
名前は違ったけど効果は同じだろう、そう思っているとヴィンセントが詠唱する。
『異空間よ。今一度、物体を保持する空間を出現させよ! 保持容量!』
ヴィンセントが詠唱し終えると、突如空間から謎の穴が出現した。
これが保持容量か? なんて思いつつ穴の中を見ようとするとアリスが止めてくる。
「顔を突っ込んだらダメよ! その穴は生きている物が入ったら消滅しちゃう!」
「マジで!?」
アリスの言っている事に驚く。
確かに『小説家になろう』で生物が入ったら死ぬ~なんて見た事あるから理解できた。
けど本当にアイテムを補完できるのか? 試しに空き瓶を穴に入れこむ。
すると掃除機のように吸い込んで消滅した。ヴィンセントの方を見ると首を縦に振る。
これは確かに便利そうだ。
その後はアリス達と射撃訓練をして下山する。
今回は少し平穏回です。
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