16.準備
悪鬼の集団を倒して一週間が経った。
俺は今日も朝食を食べ終えると、裏山の小屋に行く。
小屋に着き、火薬の生成に勤しんでいると、足音が聞こえて振り向く。
「アリス、足の調子は大丈夫か?」
「大丈夫よ、リーベット先生の治癒魔法で完治したわ」
「それは良かったな。アレス、あれを渡したらどうだ?」
俺はヴィンセントに言われて懐から回転式拳銃【キアッパ・ライノ】を渡す。
するとアリスは首を傾げながら聞く。
「これが【銃辞典】の能力なの?」
「えっと、それについては――」
「アリス、悪いけど男二人で話したい事があるから失礼するぜ」
「エエ?」
本当だって言う前にヴィンセントに引っ張られてしまい会話を阻害されてしまう。
アリスに聞こえないように、小さめにヴィンセントを問い詰める。
「(いきなり何するだよ!)」
「(あいつに本当の事を言ったらどうだ? そしたら色々面倒くさい事が起きずに済むだろ?)」
確かに、十六歳になるまで正体を隠し続けるにも無理がある。そのうえバレたら黒幕の思うつぼになる恐れもある。
俺はアリスの方に向く。
「アリス、実は――」
俺は本当の事を言うと、アリスは口を大きく開けて驚いていた。
「エェ!? アレスは転生者だったの?」
「そんな感じだ」
最初は驚いていたが少しずつ落ち着き始める。
「じゃあ、あなたはどうしてこの世界に転生したの?」
「それは言えれないけど、俺の正体を知ってどうするんだ?」
邪悪者だと断罪されるだろうと思って両手を挙げる、だがアリスは予想とはずれた事を言う。
「私はあなたの事を悪者だと思わないわ」
「エッ?」
「だってあなたは人を助けようとする精神があるでしょ」
「ツッ!」
俺は邪悪者だと恐れていた、だけど信じてくれる人がいる事に思わず泣いてしまう。
だが今泣いても何もないと思い、何とか耐えて大木に指さす。
しかしアリスに心配されてしまう。
「アレス大丈夫?」
「アア、大丈夫だ。それよりさっき渡した【キアッパ・ライノ】を使って赤い中心を当ててくれ」
「分かったわ」
アリスはそう言って射撃訓練を行う。少しぎこちないが中々良いフォームで撃っている。
ヴィンセントとアリスが射撃訓練している間で、俺は魔鉄鉛に手を突っ込んで詠唱する。
『天授起動、複製物体名被筒、消炎器、排莢口、弾倉、弾倉取り出しボタン、銃把、遊底補助具、銃床、棹桿、照星、照門、揚げ手、安全装置、引き金、用心金、ボルトリリースレバー、着剣金具、銃身!』
詠唱し終えると、大量の突撃銃の部品を複製する事ができたが、幼い事もあってかかなり体力を使ってしまい息切れしてしまう。
だけど少し耐えて突撃銃を組み立てる。
少し時間が経ったが自分の突撃銃【M4カービン】を完成した。
早速試し撃ちをしようと立ち上がるが、幼さゆえ筋力の無さで倒れかけしまう。
「ウォッ!?」
「大丈夫か……イッ!?」
ヴィンセントが支えてくれる、だが小学一年生くらいの年だから苦しい声を上げる。
二人で苦労しながら運びつつ大木の前に立つ。アリスが首を傾げながら質問してくる。
「アレス、運んでいる物は何?」
「コレも異世界の銃なんだよ、少し試し撃ちするから離れてくれないか?」
「分かったわ」
アリスはうなずくと、俺の後ろに隠れる。
確認し終えたら試作弾を入れた弾倉を装填して構える。
ちなみに試作弾はかなり火薬を少なくした物だ。安全な量が知らずに大量に入れたら暴発するだろう。
安全装置をオフにして引き金を引く。突撃銃から火を噴き出すと同時に振動がやって来る。
「イィィィィ!?」
「オイ、大丈夫か!?」
ヴィンセントが驚いたと同時に全ての試作弾を撃ち尽くした。
少し大木を見ると的を外しまくっていた。
やっぱり問題があるな。一つ目は体格、二つ目は火薬の量や突撃銃の不備な所を改良しなきゃいけない。
第二の試練が来るまで問題を解決しないといけないな。さもないと俺を信頼してくれる人が死んでしまうからだ。
その後は突撃銃の改良や鍛錬を終えて下山する。
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