14.VSゴブリン集団後編
悪鬼は焦りを見せずに魔法具を振りかざす。
すると青白い雷の刃が弾丸を焼き消しつつ、そのままヴィンセントに一文字に切る。
「グァァァァ!」
「ヴィンセント! アリス、魔法で壁を作ってくれ!」
「わ、分かったわ」
俺は急いで追撃を防ぐために、アリスに魔法壁を頼む。
アリスはぎこちないが何とか詠唱する。
『氷の根源よ。今一度、私達を守る結界を張り出せ! 氷結結界!』
詠唱し終えると甲高い音が響くと同時に、地面から白い氷が出てきて俺達を包み込む。
悪鬼は再び魔法具を投擲する、だが少しひびが入ったものの完全に破壊する事ができなかった。
『まさかここまで魔力が高い奴が下級結界魔法を使えるのは驚きだ。だけどいつまで魔法具帝釈杖に耐えれるだろうな?』
悪鬼はそう言うと魔法具帝釈杖を氷結結界に向けて詠唱する。
『雷の根源よ。今一度、我に敵対するものを焼き尽くし連鎖せよ! 帝釈万雷連鎖!』
詠唱し終えると帝釈杖が青白く光り出すと、五寸ぐらいの錫杖を作り出す。
するとその錫杖を俺達に撃ち込む、しかも何発放っても減るどころかさらに増えている。
このままじゃこの結界が破壊されるどころかいずれ殺されてしまう! どうやって悪鬼を倒すか考えている時に、ヴィンセントが目を覚まして起き出す。
「ウゥ……」
「ヴィンセント、無事か?」
「な、なんとかな」
「ヴィンセントが無事でよかったよ」
俺が安心していると、ヴィンセントが悔しそうに呻く。
「クソ、二度と俺みたいな奴が増えないために努力したのに……!」
「ヴィンセント、今は逃げよう。このままじゃヴィンセントだけじゃなく俺やアリスも死んでしまう」
「だけどどうするんだよ! 悪鬼が持っているのは特異級の魔法具だぞ、逃げても殺されるだけだ!」
確かにそうだけどこのまま何もせず終えるなんて昔の俺に重なる。
だからこそ抵抗するんだよ。
「ヴィンセント、お前は不浄人形の被害者を無くしたいんだろ? だったら諦めるな、絶望を超えれば希望だけだ!」
俺はヴィンセントに叫ぶと、当の本人は迷いが消えたような笑みを浮かべる。
「悪いな、アレス。俺が迷っていた、今ここで諦めたら終わりだ」
「ヴィンセント……」
「それにいい案があるぜ」
ヴィンセントは悪鬼を倒す方法が思いついたと言い、それを聞くとかなり有効な手だと頷く。
これなら悪鬼を倒せるし大人達に場所を教える事ができるな。
俺はアリスを背負って小屋に向かう準備をする。
そして結界が破壊されると同時に走り出すと、悪鬼が首を傾げる。
『いきなり逃げるなんてどういう事だ? マァいい、どうやっても無駄だからな』
悪鬼はあくどい笑みを浮かびながら俺達に向かってくる。
何とか小屋に着くと俺達は中にある物でヴィンセントが言った事を行う。
しばらく小屋の中で待っていると悪鬼の姿が見えてきた。
俺は小屋から出て両手を挙げる、すると悪鬼が質問してくる。
『諦めるなんてどういう魂胆だ?』
「いや、魂胆なんて無いし一撃で頼む」
『他のガキはどこに行ったんだ?』
「ばらばらで逃げたから分かんねぇけどサッサとしてくれよ」
俺は諦観した表情で浮かべていると悪鬼は帝釈杖を構えて叫ぶ。
『そこまで言うのならお望み通り一撃で仕留めてやるよ!』
そう言うと帝釈杖の先が青白く光り出すと同時に俺は小屋の方に向いて叫ぶ。
「ヴィンセント今だ!」
俺が叫んだと同時に、片手に炮烙玉を投げようとしているヴィンセントが小屋から出てきた。
「この時を待っていたぜ、クソ野郎!」
「な、ナニィィィィィ!?」
小屋からほかの奴が出てくるなんて思いもして無いだろう。実はヴィンセントから「火薬を使えばダメージを与えるんじゃないか?」と言われて悪鬼がゆっくり歩いた事で何とか二個だけ作れた。
俺も懐から炮烙玉を取り出してヴィンセントと同時に投擲する。悪鬼は驚きつつも帝釈杖で炮烙玉を突き刺す。
その時に炮烙玉が轟音と共に火を噴き始め悪鬼が野太い声が辺りを響き渡る。
『グォォォォォォォォォォォォォォ!?』
「今だ、一斉射撃だ!」
「オウヨ!」
俺が叫んだと同時にヴィンセントは回転式拳銃〈ナガンM1895〉を構えて射撃する、俺も遅れて〈ニューナンブM60〉を構えて射撃する。
その様子を見たアリスは唖然として呟く。
「す、すごい……」
俺達は弾丸がなくなったら再装填して撃ち続けると悪鬼が命乞いをし始める。
『頼む、止めてくれ! これ以上続けたら死――』
「どうでもいいんだよ、クソ野郎がァァァァァァ!」
『ギャァァァァァァァァ!?』
ヴィンセントは悪鬼の命乞いを吐き捨てると最後の一発が眉間に貫く、すると悪鬼は断末魔を上げた。
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