第7話 茨の道なの~~
☆☆☆駅馬車商会『早かろう安かろう商会』
「聞け!この商会はモーゼン商会の配下になった!モーゼン様、お言葉をどうぞ」
「フン、使用人どもは、新たな契約書にサインをしろ!そして、さっさと客を拾いに行け。ノルマを達成できなければ、帰って来るな」
「ヒィ、こんな安く・・半額?」
「いやだ。いくら、破産、一歩手前で、買い取ってくれたと言っても」
「フン、嫌なら、嫌で良い。他はどこも軒並み倒産しているぞ」
・・・私は、モーゼン商会のモーゼン、駅馬車商会は乱立した。やがて、一極に向かう。
無法の経済戦争、しかし、無法の中でも秩序が必要だ。ワシが覇者になってやる。
まずは、王都圏の覇者になり、やがて、王国全部の流通業を牛耳ってやるぞ。
「おい、商業ギルドに行くぞ」
「はい」
☆☆☆商業ギルド
商業ギルドで信じられない話を聞く。
「何だって、王都内の主要経路は、メアリー商会だと!こちらはもっと、運賃をお安く出来ますぞ」
「商業ギルドの幹部会議で決まりましたわ。ギルマスは、王国に認可を取りに行っています」
「あの我が儘令嬢だぞ!」
「事故が少ないので、決まりました」
「はん。ワシの商会は先月3人の死亡ですんだぞ!」
「メアリー商会は、王都内運行中の事故は、並木の枝にぶつかり。折ったのが一件ですわ。王都外は無事故、それが、評価されました」
「ワシらの商会はメアリー商会の3倍客を運んでいる。二件しか違わないじゃないか?!いや、もっと、隠しているはずだ!」
「ギルド長に会わせろ!」
「ですから、王城で会議中ですわ」
受付嬢ではラチがあかない。そうか、こいつは貧乏子爵家の子女だったな。
「少し、用立てようか?」
と賄賂の提案をすれば、融通が利くだろう。
「結構ですわ。本当にいないのです。貴商会の事故に、商業ギルドで働いている者もいましたわ。本当はもっと、多いのではないですか?」
断った!しかも、事故を隠していることがバレているか。
なら、他にやりようがあるぞ。
その時、メアリー商会の名が聞こえてきた。隣の受付からだ。
「メアリー商会に、金貨500枚送金を頼む」
「畏まりました。トーマス様」
トーマスの名で、思わず男を凝視した。驚愕だ。
「投資家トーマス・・さん」
有名人だ。
「あの、私、モーゼンと申しますが、宜しかったら、お話をさせて下さい」
「いいが、これから、人と会う約束がある。そのついでなら」
待ち人が来るまでの条件で、待ち合わせ場所の
リトルアキバの喫茶店に向かう。
☆☆☆リトルアキバ「メイド猫喫茶」
「「ご主人様、お帰りなさいませ!」」
「ただいま、帰ったぞ」
席に着くそうそうに投資の提案をした。この店は猫の獣人族を好んで雇っている。異世界人が始めたらしい。異世界の雰囲気を楽しめるらしい。客は、まばらだが、この時間なら良い方だ。
「ほお、ワシに投資をしろと?」
「ええ、聞いています。メアリー商会の債権を買い取りますぞ」
「無理だ。お前さんの考えることはお見通しだ」
目つきが鋭くなった。裏組織の人間の目??
「第3王子とその婚約者が始めた商会、破綻寸前と聞きましたが?」
「阿呆、ワシは、ちゃんと、その債権を回収する算段はついておる。今日、出資したのが、メアリー様の商会への本当の出資になるな」
「楽しかったぞ。メアリー様は、ちゃんと説明してくれる。まるで、そう、異世界のカブヌシというものかもしれないな。ククククッ」
「お待たせしました。オムライスになります・・ニャン」
「おー、待っていた!我は、『猫猫ニャンニャン、美味しくな~れ』を所望する」
何だ。丸顔の人の良い親父に戻った。
「はい、畏まりました。でも、私、子持ちのおばさんですよ」
「それが、良い。恥じらいをみたい」
「では、猫猫ニャンニャン、ご主人様のオムライス、美味しく、美味しくな~~~れ♩・・・お粗末様でした」
「最高だ。ブラボー!ほい、大銅貨一枚じゃ(1000円)」
「助かります。有難うございました」
何だ。スケベジジじゃないか。
しかし、また、目が鋭くなった。
次々にこちらの胸の内を推理する。
「で・・だ。お前様は、どうせ。王都の駅馬車商会を軒並み買収して、後で、料金を自由自在にしようと画策しているだろ。浅はかだ」
「王都内で、ゴロツキを雇って、メアリー商会の駅馬車を妨害しようと考えているだろう?メアリー様は、お見通しだったぞ」
「結論は、お主に、投資はしない。お前さんは優しくないからだ」
この人が、あの投資家トーマスなのか?甘いな。
ガチャン!
「キャア、申し訳ございません。申し訳ございません」
猫獣人が皿を割った。ぶしつけだ。普通、店主はムチ打ちするだろう。
店長が出てきた。やはり、異世界人だ。
「あ、大丈夫?ミヤさん。怪我はない?お客様の中で、怪我をされた方は?」
「「「「大丈夫だぜ」」」
「皆様、お騒がせしました」
「弁償します。弁償します。ですから、どうか。ムチ打ちだけは」
「え?そんなことはしないよ。バックヤードで休んできなよ。落ち着いたら、また、戻ってよ。掃除は僕がやっておくから、ガラスは危険だよ」
「え、はい」
「ミヤさんは、入って間もないよね。マスターはそんなことをしないよ」
まるで、誇るかのように、トーマスは笑う。
「フフフ、これが異世界人だ。メアリー様にも同じ匂いがしたぞ。異世界人を甘いと思うか?
いや、違う。大工の達人と同じなんだよ」
ワシは人を見る目がない。だから、若い頃、親父に修行に出された。
名人と言われた達人の現場だ。
しかし、名人は、作業中、見ているだけだ。
やることは、要所、要所で、『気をつけろ』と言うだけだ。
まあ、結論を話そう。
名人は若い者が怪我をしないように、見張っていたのだ。
予知能力があるかのように、事故の起きやすさが分かる。
それが、正解じゃ。
結果として、名人の現場は早く終わり。怪我人が出なかった。予算内ですんだ。
他の現場は、急げ。急げで、事故が起き。遅くなり。費用がかさんだ。
根底にあるのは、愛とか優しさだ。これはビジネスと矛盾しない。
「お前さんに、わかる・・・おっ、ヤマナカ殿、こっち、こっち」
「トーマス殿!依頼されたお靴とガラスの箱でござる。羽の生えている女児用のお靴でござる。自信作でござる!」
「おお、すばらしい。メアリー様にプレゼントするぞ。金貨3枚だ。受け取ってくれ」
「有難うなり。ガラスの箱は何に使うでござるか?」
「この靴をプレゼントしたら、今、履いているお靴は不要になるだろ。このガラスの箱に入れて、鑑賞するのだ」
「なるほど、ナイスアイデアでござる」
まるで、私がいないかのように、待ち人の異世界人と話し始めた。
話す内容はゲスだ。しかし、愛とか優しさとか言う。
投資家は、少し、頭が変でなければ、成功しないのかもしれないな。
私は、店を出た。
これから、メアリー商会を潰す方策を考えねばならない。
☆☆☆メアリー商会
・・・債権者集会は終わった。次は、使用人集会だ。
当初の目標は、
プランA、他の商会への売却、
しかし、売却できそうな商会、モーゼン商会は、ブラック商会だった。
プランB、商会の価値をあげて精算
は今の状況では難しい。
まさかのプランC、
自力再生だ。
債権者集会では、総反攻作戦と説明した内容だ。あの後、ダメ出しをされた。
予算は、余裕がなければ、不測の事態に対処出来ない。
追加融資の話を受けることにした。
いや、開いて良かった。
☆☆☆使用人集会
「・・・以上が、商会を取り巻く状況です。大変厳しいです」
ザワザワザワ~~~~
「聞いている。他の商会で働いている奴は、お給金半額になったと聞いたぞ」
「モーゼン商会だろ。友愛工房も危ないって、駅馬車を買いたたかれているって」
「皆様、ご静粛に、メアリー商会長のお言葉です」
キ~~~ン、
「テス、テスなの~ケリー、あれ、踏み台なの~~届かないの~~」
「はい、メアリー様」
「あ~これからは、茨の道なの~~~、無理強いはできないの~~~、このお話を聞いて、無理だと思う人は、辞める言うの~~~、紹介状書いておいたの~~~人数分あるの~~~」
ザワザワザワ~~~
「辞めるって、他の駅馬車商会に行った友人は、今、銀貨9枚で働いている。俺の半分以下だよ」
「だよな。この商会に残ったら、お給金は下がるのか?いえ、下がりますか?」
「おい、お前、商会が大変な時に」
・・・皆、不安だ。だから、給金をあげる提案をする。
「下げないの~~~、お給金上の背できるの~~~~達成できたら、1人銀貨3枚の成果給を上乗せ出来るの~~~~」
「「「!!!!」」」
「見積もりなの~~~~『分』単位で、運行できたら、お客様、逃さないですむの~~~、だけど茨の道なの~~~、早め、早めの準備が必要なの~~~~」
ケンの提案だ。日本みたいに、分単位で運航できたら、客を掴むことが出来る。
発のみだ。
魔道時計が開発されているのだ。商業が発展し、これからは、分単位のビジネスになる。
その先駆けになろうじゃないか。
「やってやる!」
「そうだ。ダメ元だ!」
「この商会は働きやすい」
・・・・ビジネスの世界では、時として、全ての行いが良い方向に向かうことがある。
後の、メアリー研究では、この時のメアリーは神がかっていたと評す者が多くいる。
通常、経営者が嫌がる労働組合の発足を命じた。
後に、横のラインを形成し、異なる職種をカバーする結果になった。
「労働組合を作るの~~~~長はクロウなの~~~」
「ヒィ、何をすればいいのですか?」
「商会に無理難題を言うの~~~、メアリー、出来ることはやるの。出来ないことはやーと言うの~~~~」
「そんな~~」
これは、手加減が出来ないからだ。
商会員は、キツいと自分から言えないのかもしれない。
しかし、前世の労働組合のように、
『平和でなければ、良い労働環境とは言えません!核廃絶を積極的に訴えない日本政府に抗議の署名を』
『アメリカ、ロシアに言えば!』
と職場に来たな。
・・・・と、斜め上の世界に行かなければいいが、って、そうはならんだろう。
また、神判断は、護衛を切らなかったことだ。後に、大きな効果を生み出す。
「はい!はい!護衛から、ゴブリン注意報が解けたら、あたしら、契約終了だよね」
「欲し~の。護衛、必要なの~~~盗賊やゴロツキが襲ってくるかもしれないの~~~」
「分かった!」
また、
「商会長、外勤が一番大変です。成果給を、一律ではなく、内勤と外勤で差をつけて欲しいです」
と質問をした者に、
「ダメなの~~~、魔道時計は、部品一つ欠けても、動かないの~~~、予約や席の手配があって、初めて、仕事出来るの~~~商会は一体なの~~!」
「失礼しました!」
後に名言となる。事務職と外勤の絆を深める効果を生み出した。
「内勤長のケリーです。メアリーちゃん。いえ、メアリー様、バックアップの人が足りません」
「大丈夫なの~~~、人と馬車と馬、集めるの~~~~」
「準備期間は4週間、来月から、完全実施するの~~~~」
「「「「オオオオオオオーーーーー」」」
「なの~~~~~~!」
メアリーの言葉が会場内に木霊する。
最後までお読み頂き有難うございました。