表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/18

第7話 茨の道なの~~

 ☆☆☆駅馬車商会『早かろう安かろう商会』


「聞け!この商会はモーゼン商会の配下になった!モーゼン様、お言葉をどうぞ」



「フン、使用人どもは、新たな契約書にサインをしろ!そして、さっさと客を拾いに行け。ノルマを達成できなければ、帰って来るな」


「ヒィ、こんな安く・・半額?」

「いやだ。いくら、破産、一歩手前で、買い取ってくれたと言っても」


「フン、嫌なら、嫌で良い。他はどこも軒並み倒産しているぞ」



 ・・・私は、モーゼン商会のモーゼン、駅馬車商会は乱立した。やがて、一極に向かう。

 無法の経済戦争、しかし、無法の中でも秩序が必要だ。ワシが覇者になってやる。

 まずは、王都圏の覇者になり、やがて、王国全部の流通業を牛耳ってやるぞ。


「おい、商業ギルドに行くぞ」

「はい」




 ☆☆☆商業ギルド


 商業ギルドで信じられない話を聞く。


「何だって、王都内の主要経路は、メアリー商会だと!こちらはもっと、運賃をお安く出来ますぞ」


「商業ギルドの幹部会議で決まりましたわ。ギルマスは、王国に認可を取りに行っています」


「あの我が儘令嬢だぞ!」


「事故が少ないので、決まりました」


「はん。ワシの商会は先月3人の死亡ですんだぞ!」


「メアリー商会は、王都内運行中の事故は、並木の枝にぶつかり。折ったのが一件ですわ。王都外は無事故、それが、評価されました」


「ワシらの商会はメアリー商会の3倍客を運んでいる。二件しか違わないじゃないか?!いや、もっと、隠しているはずだ!」


「ギルド長に会わせろ!」

「ですから、王城で会議中ですわ」


 受付嬢ではラチがあかない。そうか、こいつは貧乏子爵家の子女だったな。



「少し、用立てようか?」

 と賄賂の提案をすれば、融通が利くだろう。


「結構ですわ。本当にいないのです。貴商会の事故に、商業ギルドで働いている者もいましたわ。本当はもっと、多いのではないですか?」


 断った!しかも、事故を隠していることがバレているか。

 なら、他にやりようがあるぞ。


 その時、メアリー商会の名が聞こえてきた。隣の受付からだ。


「メアリー商会に、金貨500枚送金を頼む」

「畏まりました。トーマス様」


 トーマスの名で、思わず男を凝視した。驚愕だ。


「投資家トーマス・・さん」

 有名人だ。


「あの、私、モーゼンと申しますが、宜しかったら、お話をさせて下さい」


「いいが、これから、人と会う約束がある。そのついでなら」


 待ち人が来るまでの条件で、待ち合わせ場所の

 リトルアキバの喫茶店に向かう。




 ☆☆☆リトルアキバ「メイド猫喫茶」



「「ご主人様、お帰りなさいませ!」」

「ただいま、帰ったぞ」


 席に着くそうそうに投資の提案をした。この店は猫の獣人族を好んで雇っている。異世界人が始めたらしい。異世界の雰囲気を楽しめるらしい。客は、まばらだが、この時間なら良い方だ。


「ほお、ワシに投資をしろと?」


「ええ、聞いています。メアリー商会の債権を買い取りますぞ」

「無理だ。お前さんの考えることはお見通しだ」


 目つきが鋭くなった。裏組織の人間の目??


「第3王子とその婚約者が始めた商会、破綻寸前と聞きましたが?」


「阿呆、ワシは、ちゃんと、その債権を回収する算段はついておる。今日、出資したのが、メアリー様の商会への本当の出資になるな」


「楽しかったぞ。メアリー様は、ちゃんと説明してくれる。まるで、そう、異世界のカブヌシというものかもしれないな。ククククッ」


「お待たせしました。オムライスになります・・ニャン」


「おー、待っていた!我は、『猫猫ニャンニャン、美味しくな~れ』を所望する」


 何だ。丸顔の人の良い親父に戻った。


「はい、畏まりました。でも、私、子持ちのおばさんですよ」


「それが、良い。恥じらいをみたい」


「では、猫猫ニャンニャン、ご主人様のオムライス、美味しく、美味しくな~~~れ♩・・・お粗末様でした」


「最高だ。ブラボー!ほい、大銅貨一枚じゃ(1000円)」

「助かります。有難うございました」


 何だ。スケベジジじゃないか。

 しかし、また、目が鋭くなった。


 次々にこちらの胸の内を推理する。


「で・・だ。お前様は、どうせ。王都の駅馬車商会を軒並み買収して、後で、料金を自由自在にしようと画策しているだろ。浅はかだ」


「王都内で、ゴロツキを雇って、メアリー商会の駅馬車を妨害しようと考えているだろう?メアリー様は、お見通しだったぞ」


「結論は、お主に、投資はしない。お前さんは優しくないからだ」


 この人が、あの投資家トーマスなのか?甘いな。


 ガチャン!


「キャア、申し訳ございません。申し訳ございません」


 猫獣人が皿を割った。ぶしつけだ。普通、店主はムチ打ちするだろう。


 店長が出てきた。やはり、異世界人だ。


「あ、大丈夫?ミヤさん。怪我はない?お客様の中で、怪我をされた方は?」


「「「「大丈夫だぜ」」」


「皆様、お騒がせしました」


「弁償します。弁償します。ですから、どうか。ムチ打ちだけは」


「え?そんなことはしないよ。バックヤードで休んできなよ。落ち着いたら、また、戻ってよ。掃除は僕がやっておくから、ガラスは危険だよ」


「え、はい」

「ミヤさんは、入って間もないよね。マスターはそんなことをしないよ」


 まるで、誇るかのように、トーマスは笑う。


「フフフ、これが異世界人だ。メアリー様にも同じ匂いがしたぞ。異世界人を甘いと思うか?

 いや、違う。大工の達人と同じなんだよ」


 ワシは人を見る目がない。だから、若い頃、親父に修行に出された。

 名人と言われた達人の現場だ。


 しかし、名人は、作業中、見ているだけだ。

 やることは、要所、要所で、『気をつけろ』と言うだけだ。


 まあ、結論を話そう。


 名人は若い者が怪我をしないように、見張っていたのだ。

 予知能力があるかのように、事故の起きやすさが分かる。


 それが、正解じゃ。

 結果として、名人の現場は早く終わり。怪我人が出なかった。予算内ですんだ。


 他の現場は、急げ。急げで、事故が起き。遅くなり。費用がかさんだ。


 根底にあるのは、愛とか優しさだ。これはビジネスと矛盾しない。


「お前さんに、わかる・・・おっ、ヤマナカ殿、こっち、こっち」


「トーマス殿!依頼されたお靴とガラスの箱でござる。羽の生えている女児用のお靴でござる。自信作でござる!」


「おお、すばらしい。メアリー様にプレゼントするぞ。金貨3枚だ。受け取ってくれ」


「有難うなり。ガラスの箱は何に使うでござるか?」


「この靴をプレゼントしたら、今、履いているお靴は不要になるだろ。このガラスの箱に入れて、鑑賞するのだ」


「なるほど、ナイスアイデアでござる」


 まるで、私がいないかのように、待ち人の異世界人と話し始めた。

 話す内容はゲスだ。しかし、愛とか優しさとか言う。

 投資家は、少し、頭が変でなければ、成功しないのかもしれないな。


 私は、店を出た。


 これから、メアリー商会を潰す方策を考えねばならない。




 ☆☆☆メアリー商会


 ・・・債権者集会は終わった。次は、使用人集会だ。



 当初の目標は、

 プランA、他の商会への売却、


 しかし、売却できそうな商会、モーゼン商会は、ブラック商会だった。


 プランB、商会の価値をあげて精算


 は今の状況では難しい。


 まさかのプランC、


 自力再生だ。


 債権者集会では、総反攻作戦と説明した内容だ。あの後、ダメ出しをされた。

 予算は、余裕がなければ、不測の事態に対処出来ない。

 追加融資の話を受けることにした。

 いや、開いて良かった。



 ☆☆☆使用人集会



「・・・以上が、商会を取り巻く状況です。大変厳しいです」



 ザワザワザワ~~~~


「聞いている。他の商会で働いている奴は、お給金半額になったと聞いたぞ」

「モーゼン商会だろ。友愛工房も危ないって、駅馬車を買いたたかれているって」


「皆様、ご静粛に、メアリー商会長のお言葉です」


 キ~~~ン、

「テス、テスなの~ケリー、あれ、踏み台なの~~届かないの~~」


「はい、メアリー様」


「あ~これからは、茨の道なの~~~、無理強いはできないの~~~、このお話を聞いて、無理だと思う人は、辞める言うの~~~、紹介状書いておいたの~~~人数分あるの~~~」



 ザワザワザワ~~~


「辞めるって、他の駅馬車商会に行った友人は、今、銀貨9枚で働いている。俺の半分以下だよ」

「だよな。この商会に残ったら、お給金は下がるのか?いえ、下がりますか?」

「おい、お前、商会が大変な時に」


 ・・・皆、不安だ。だから、給金をあげる提案をする。



「下げないの~~~、お給金上の背できるの~~~~達成できたら、1人銀貨3枚の成果給を上乗せ出来るの~~~~」


「「「!!!!」」」


「見積もりなの~~~~『分』単位で、運行できたら、お客様、逃さないですむの~~~、だけど茨の道なの~~~、早め、早めの準備が必要なの~~~~」


 ケンの提案だ。日本みたいに、分単位で運航できたら、客を掴むことが出来る。

 発のみだ。

 魔道時計が開発されているのだ。商業が発展し、これからは、分単位のビジネスになる。

 その先駆けになろうじゃないか。


「やってやる!」

「そうだ。ダメ元だ!」

「この商会は働きやすい」


 ・・・・ビジネスの世界では、時として、全ての行いが良い方向に向かうことがある。

 後の、メアリー研究では、この時のメアリーは神がかっていたと評す者が多くいる。



 通常、経営者が嫌がる労働組合の発足を命じた。

 後に、横のラインを形成し、異なる職種をカバーする結果になった。



「労働組合を作るの~~~~長はクロウなの~~~」


「ヒィ、何をすればいいのですか?」


「商会に無理難題を言うの~~~、メアリー、出来ることはやるの。出来ないことはやーと言うの~~~~」


「そんな~~」


 これは、手加減が出来ないからだ。

 商会員は、キツいと自分から言えないのかもしれない。


 しかし、前世の労働組合のように、


『平和でなければ、良い労働環境とは言えません!核廃絶を積極的に訴えない日本政府に抗議の署名を』

『アメリカ、ロシアに言えば!』


 と職場に来たな。



 ・・・・と、斜め上の世界に行かなければいいが、って、そうはならんだろう。




 また、神判断は、護衛を切らなかったことだ。後に、大きな効果を生み出す。



「はい!はい!護衛から、ゴブリン注意報が解けたら、あたしら、契約終了だよね」


「欲し~の。護衛、必要なの~~~盗賊やゴロツキが襲ってくるかもしれないの~~~」

「分かった!」


 また、


「商会長、外勤が一番大変です。成果給を、一律ではなく、内勤と外勤で差をつけて欲しいです」


 と質問をした者に、


「ダメなの~~~、魔道時計は、部品一つ欠けても、動かないの~~~、予約や席の手配があって、初めて、仕事出来るの~~~商会は一体なの~~!」


「失礼しました!」


 後に名言となる。事務職と外勤の絆を深める効果を生み出した。




「内勤長のケリーです。メアリーちゃん。いえ、メアリー様、バックアップの人が足りません」


「大丈夫なの~~~、人と馬車と馬、集めるの~~~~」


「準備期間は4週間、来月から、完全実施するの~~~~」



「「「「オオオオオオオーーーーー」」」


「なの~~~~~~!」


 メアリーの言葉が会場内に木霊する。



最後までお読み頂き有難うございました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ