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閑話 駅馬車娘メアリーなの~~

「誰でも、運行できるようにするの~~~~!」


 トムが目的地を間違えた件があってから、状況を調べた。

 トムはお上りさんだ。

 他にも王都圏以外の出身者がいる。


 行き先標識は、立てても、魔物が違う方向にしてしまうので無い状態だ。


「だから、要図作るの~~~~」

「要図とは?」


 市役所の観光マップは、デフォルメされて作られている。

 そんなイメージだ。

 強調するところは、絵を描いて分かりやすくする。

 目的地の都市の景観や、分かれ道。


 これを作っておけばいいか?


 しかし、私には絵心がない。


 この世界の王宮絵師は、写真のような絵を描けるが、

 市井のほとんどの者は描けても、

 せいぜい「ジョン失地王」の肖像画だ。


 ルネッサンス前のヨーロッパの肖像は下手だ。何故だろう。いつも疑問に思っていた。


 王宮絵師に頼むには予算がない。

 どうしようか?


 ケンが提案してくれた。


「それなら、日系王国人のコミュニティに、マンガを描ける者が滞在しております。転移者1世です。依頼しますか?」

「頼むの~~~~」



 ・・・・


「私は丸山萌子!キャーー!可愛い!萌え~~~~~メアリーたんを描けばいいのね!」


「違うの~~~~、さっさと、要図を書くの~~~~」


 馬車を一台と護衛を用意した。主要な行路を描いてもらった。

 二週間後出来上がった。

 中々だ。

 これを念写魔法で印刷して、配れば良いだろう。

 新入りの教育にも使える。


「さすがなの~~~~~」


「ねーねー、メアリーたんを描かせて!!」


「ミニスカートはダメなの~~~勝手に描かないの~~~」


 ペシペシ!


「んほ!?ご褒美?!嬉しー」


 しかし、せっかく描いてくれると言うので、描いてもらった。

 絵師根性が湧き上がったらしい。


「パンチラはダメなの~~~~ここは女神教なの~~~」


 ペシペシ!


「んほ!?」


 何度か修正して、

 出来たのは、デフォルメされたメアリー商会の駅馬車の前で、ヒラヒラのドレスに、腰に手を当てるポーズを取る私だ。

 絵柄は、宮田パヤオの機動城のパヤ吉のヒロインみたいな絵柄だ。

 それともホーム子供劇場か?


「この分の報酬プラスするの~~~~」


「また、頼んでね!!」


 ガヤガヤガヤ~~~~~


「これが商会長?!」

「何か。絵と言うよりも、記号・・・シンボルみたいだ」

「そうそう、古代の遺跡には、こんな壁画あるよな。俺の村に遺跡があったんだ」


 あれか、大学の史学科の先生が、研究のために、シュメール人の像を見ていたら、趣を感じてしまったみたいな感じか?

 可愛いは学習かもしれない。


「でも、さすが異世界人だぜ。自信たっぷりの商会長の特徴を捉えている感じだな」

「ええ、萌子殿は、人の心の特徴までを描くと評判です」


 ・・・皆、気に入っているな。

 私も、私の絵を気に入っている状況はまんざらでもない。


 と言うわけで、これを念写魔法師に依頼して看板にして、商会本部前に飾った。

 駅馬車も描かれているから、すぐに、何の商会か分かるだろう。




 しかし、クレーマーがやってきた。


「ちょっと!女神様は女!女に、こんな淫らなポーズをさせるのはダメですわ!」


 誰よ。このBBAは?

 ピンクの馬車とピンクのシスター服のBBAがやってきた。


「ご意見を伺いましたの~~。ありがとうございましたの~~~~」

「撤去してくれますよね」

「しないの~~~バイバイなの~~~~」


 それから、しばらくして、街でデモが起きた。


「メアリー商会は女神教に背いています!女神様を冒涜していますわ!」

「そうよ!そうよ!」

「メアリー商会の駅馬車は利用してはいけません!」


 商会ギルド長も来た。


「撤去してくれと来ました。後ろには有力な貴族の夫人がついていますから」


「しないの~~~~」




 ☆☆☆


「ケン、売り上げは?」

「全く、減っていませんね。利用者様が反対している訳ではないみたいです」


「じゃあ、このままなの。営業所に来たら、メアリーに通すの~~~~」

「はい、通達します」


 としたら、来やがった。

 誰だ?お前は、BBAが増えている。


「私は、アメバ伯爵夫人ですわ。王宮で女官をしておりますわ」


 ピンクBBAが偉い人を連れてきた。


 商会本部前で、看板を撤去しようとする。


「撤去しますわ!」

「「「はい!」」」


 正直に言うと、この看板はすごく気に入っている訳ではない。

 皆が気に入っているから、気に入っている状態だ。


「じゃあ、裁判するの~~~!女神教の聖女様の意見を伺うの~~~」


「これは、男性が厭らしい視線で描いたものですわ。聞くまでもない」


 論点ズラシしやがる。嫌なら嫌と裁判をすればいいのに、


「違うの~~~女性が描いて、メアリーが許可出したの~~~」

「その絵師と貴方は、心の中に男が宿っています!名誉殿方です。女が可愛いなんて、侮辱です!」

「とにかく!撤去します!」


「メアリー様、本部へ!」


「引かないの~~~~!これを認めたら、ドンドンエスカレートするの~~~~」


「「「オオオオオオーーーーー」」」


「覚えてらっしゃい!」


 何とか退けたが、


 最悪の事態になった。


 BBAたちが、営業所の前に立ち塞がったのだ。


「「「女神様を冒涜するメアリー商会の馬車を使うなーーーーー」」」


 と何故か、汚い文字の立て看板を抱えて、入り口を塞ぎやがる。

 もっと、綺麗な文字を書けないのか?!



 ヤバい、ヤバいよ。

「やめるの~~~~、騒ぎになるの~~~~~グスン、グスン」


「それなら、看板を撤去しなさいね」

「泣いてもダメです。それは男にこびる行為ですわ」


 騒ぎになるって事は、アレが来ることだ。

 もう、遅い。

 どうすればいい。

 このBBAたちの行動力を甘く見ていた。


 撤去しよう・・・


「てっきょ・・『あら、私の可愛い義妹が、何故泣いているのかしらね』」


「ええ、正義の鉄槌を・・・ヘブシ!」


 BBAの頭に、扇の鉄槌が炸裂した。


 王太子妃殿下、お義姉様がやって来たのだ。


 ピンクBBAは言う。

「こちらには、アメバ伯爵夫人がいますのよ!王宮に訴えてやります」


「アメバ?ごめんなさい。あら、貴女は、王宮の掃除係じゃない。いつも、ご苦労様」


「ヒィ、王太子妃殿下!・・・・・」

「グゥ、あの暴虐令嬢!」


 グゥの音を初めて聞いた。


 これだ。後ろ盾になってもらっているけど、名前を使ったら負けなところがある。

 ○ヤさんのお世話になったら、いけないみたいな。

 抑止力で十分だ。


「何やら、騒がしいと、王都治安当局から連絡が来たのよ。その中でメアリー商会の名があったから来たの。フ~~ン」


「ち、違うの~~~~、この人達とお話をしていただけで・・・殺さないの~~~~」


「大丈夫よ。半殺しよ。それよりも、お茶会に来て欲しいわ」

「ドレスないの~~~~」

「まあ、ドレス、贈りますわ。おねだりが上手ね。さすが、欲しがり妹だわ」


 や、やぶ蛇だ。何を言っても逆手に取られる。役者が違う。

 実のお姉様は、この方の義妹になるのか?

 尊敬するぜ。


「この者たちを取り押さえなさい」

「「「はっ」」」


 BBAたちは、縄で縛られ、女神教会に行き。

 教会の聖女様に、あの萌絵も判定してもらった。


 聖女様の判定は、こうだ。


「この看板がダメだと言うのは、女性は男と同じような体格と服装でなければダメだと言う者に違いありません。

 それと、この者たちは、娼館の唇を描いた看板や、生足を描いている看板はスルーです。裏組織が怖いのでしょう。狂信者ですらありません」



「聖女様、有難うございました」

「ありがとうなの~~~~~」


「それじゃ、私たちは・・・開放していただけますか?」


 ドンドンドン!バキバキバキ!


「「「ヒィ」」」


 判定が白となったら、騎士達がピンク馬車を壊しやがった。


「あら、私、ピンク馬車は女性を冒涜していると思ったから壊したの。文句があるのなら受けてたちますわ」


 いや、殺さなくて良かった。


「フフフフフ、また、今度は、迎えに行きますわ。王妃教育があるので、失礼しますわ」


「ありがとうなの~~~~」


 借りを作ったぜ。

 どーしよう。



 その後、


「この看板は?」

「駅馬車娘メアリー様ですわ」


 とケリーが名前をつけ。


 他商会も真似を始めた。


 しかし、丸山萌子は放浪の絵師だ。

 中々、捕まらない。


 ジョン失地王に髪を伸ばしただけの駅馬車娘が乱立することになる。






この話はいかなる現実の事件、人物、団体とも関係はございません。フィックションです。

お読み頂き有難うございました。

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