第5話 ゴブリンの襲撃やーなの
売り上げは順調だ。好事魔多しとの言葉がある。
気をつけなければ、
と思っていたら、
慌てて、報告する役のクロウさんがやってきた。
「大変でございます!トムの馬車が、目的地を間違えました」
「詳しく報告するの~~~~~」
何でも、新入りのトムが目的地を間違えた。
引き返したら、野宿になりそうだったので、そのまま間違えた都市に行き。
駐在員が対応。
お客様には、謝罪と、宿の手配と、規約の慰謝料を払い。翌日、別の便を手配したとな。
「お客様は大丈夫なの~~~」
「はい、これ以上の賠償を求めないと・・・」
「違うの~~~、家族に急病人とか、大事な商談とか、慌てて怪我とか、受験とかなの~~~」
ペシペシ!
「ヒィ、ジュケン?は分かりませんが、大丈夫のようです」
クロウさんの頭頂部を軽く叩いた。やはり、異世界、現代日本との認識が違う。
いや、そう考える会社も多くあったか。
まだ、時々、魔物が出る。
野営する装備は乗せていない。だから、トムの判断は○だ。
チィ、トム、解雇できないじゃない。緊急時のマニュアル通りだ。
「トムは、研修するの~~~~~、大丈夫そうだったら、戻すの~~~~」
「え、それだけですか?はあ」
まあ、大事ではないと思ったが、そうではなかった。
街の芸人達がネタにしたのだ。
「メアリー商会の駅馬車です。おろ?おろ?目的地わからないの~~~~」
「「「アハハハハハハハーーーーーー」」」
・・・・・・
「どうしますか?」
「ほっておくの~~~~トムは失敗の中の成功なの~~~分からない社会が悪いの~~~」
しかし、せっかくの増収が勢いを失い反転、少なからずお客様は減ってきた。
駅馬車業界、目的地を間違えるのは、すごく、恥ずかしい事のようだ。
その隙をついて、ライバル商会が攻勢を掛けてきやがった!
☆☆☆早かろう安かろう商会
「さあ、さあ、こっちの馬車は、早く安く目的地までつくよ~~~~~、メアリー商会のようなことはございません」
「まあ、安い」
「しかも、早そうだ」
「ええ、馬車は軽く作っています。スピードは出ますよ」
・・・・・・・
また、私たちの接客を真似する商会も現れた。
☆☆☆ザム親方の駅馬車商会
「おら、並べ!お客様は精霊じゃないんだ!おい、そこのお前!どこに行くんだ!」
「え、と、」
「あん?ゴラァ!キビキビ答えないと、乗せないぞ!」
「ヒィ、そんな」
「でも、職人気質で、信頼できそう」
・・・・・・
一部、誤解していないか?
だが、無視は出来ない。
そんなときに、また、クロウさんから報告があがった。
「快挙です。サムソンの馬車が、ゴブリンを討伐しました!」
「詳しく報告するの~~~~」
☆☆☆回想、草原
「ゴブリンだ!お客様の中に、冒険者はいますかぁ?」
「はい、はい、あたい達、冒険者だよ。あたいはリリー、リーダーのコリーと、ガオンと、ガンセキの4人だ」
「おう、なら、突っ込むぜ!討伐して、お金にしなよ」
「え、こういった場合は、遅滞戦闘じゃないの?他に一般人がいるよ。あたい達、屋根に登って・・・キャ」
「いいから、おりぁー、サムソン様の駅馬車を狙ったのが運の尽きだ!」
「ギャ、ギャ」
「ギィ、ギィ、ギィ」
「もう、追撃をやめな!あれはゴブリンの囮だよ。後ろに本隊がいるよ!」
「ああ?臆病だな」
・・・・・・
「はい、それで、追い払ったと」
「解雇なの~~~~~~やーなの。安全な運行が欲し~~~~の」
こういった場合は、信号弾をあげて、逃走し、魔道通信で王国軍に連絡、戦闘は最小限で、遅滞戦闘のみ。
これは、早めに馬車の側板に、矢留の処置をしなければならないな。
チィ、金がかかるわ。護衛も雇わなければならない。
「俺を解雇するなんて、おかしいぜ。トムはそのままで、あべこべだ。覚えておけよ!」
「さよならなの~~~~」
☆☆☆ドワーフ、友愛工房
「ほお、側面だけを、加工しろと?」
「そーなの。矢が通るのやーなの」
「ギャハハハハハハハハ」
何?どこに笑う要素があるのよ。ドワーフの笑いのツボ?
「アハハハハ・・・はあ、はあ、一台加工すると、この値段になるけ」
「・・・金貨8枚(80万円)なの~~~グスン、グスン」
「なら、これは、どうだ。コウジが開発した矢留ネットだ。一回の襲撃で、使えなくなるが、試作品だ。一台、銀貨5枚(5万円)でいいけ。その代わり、見た目が・・」
「これにするの~~~~、君に決めたの~~~~」
「分かった。銀貨3枚にしよう。その代わり。効果の報告をお願いする」
「分かったの~~~~」
そして、護衛を雇った。
「初めまして、冒険者パーティーの、『猟師の絆』団のリーダー、コリーだ。皆、弓を使えるぜ。馬車の護衛には最適だ。勿論、近接戦闘も出来る」
「メアリー商会のメアリーなの~~~~近接戦闘やーなの。逃げる馬車を援護するの~~~」
「初めまして、あたいはリリーだよ。貴女がメアリー様、よろしく、会いたかったよ」
誰だ?こいつは?でも、世話好きのお姉さんだ。ナデられよう。
ナデナデ~~~~
「よろしくなの~~~~」
「しかし、本数が多い。まかないきれない」
「本数を減らすの~~~~、不定期で冒険者募集するの~~~王国軍からゴブリン注意報が出ているの~~~~」
「それじゃ、減収では?」
「お客様の命が一番なの~~~」
「なるほど」
本数を減らし、御者の余剰人員は、ワークシェアをした。この際、担当行路以外の道順を覚えてもらう。
矢留ネットは、見た目が悪い。
街で笑われた。
☆☆☆エレガント商会
「まあ、メアリー商会の駅馬車は、まるで、ワナにかかった地竜ですわ。さあ、淑女、紳士の皆様、当商会のエレガントな馬車にお乗り下さい」
フン、笑いたければ笑え。
何もなければそれでいい。
クロウさんが報告に来なければいいわね。
「大変です・・・トムがやりました!」
また凶事か?!
「え、朗報なの~~~?」
☆☆☆
「ゴブリンの群体だ!お客様、顔を伏せて下さい!」
「「「はい」」」
プシュ~~~~!
と信号弾をあげ。
「フラワー、頑張れ!」
パチン!
「ヒヒ~~~~ン」
速度をあげ。王国軍に連絡をしました。
・・・・
「信号弾だよ!メアリー商会の色だ。行くよ!」
「ヒヒ~~~ン」
中継地点で待機していた。
リリーとガンセキが騎馬で向かい。
彼らは、馬の上から、弓を放ち。援護し。
シュン!シュン!
「ゴブリンの矢は、網で止りました・・・お客様の中に、怪我をした者はおりません。冒険者も無事です」
「よかったの~~~~~」
でも、減収だ。仕方ない。
しかし、そんな中、サムソンの名前が上がってきた。
☆☆☆ザム親方の駅馬車商会
「サムソンだ!よろしく」
「「「おお」」」
「あのサムソンだ」
「女の商会長はダメだ。俺に任せれば、ゴブリンなんぞ、イチコロだ」
「頼むぜ。サムソン!」
「おう、任されろ。親方」
・・・・・
「お、ゴブリンどもが来たな。お客様の中に、冒険者はいますか?」
「わしら、町内会の仲良しクラブじゃ、老人じゃ」
「あんた。客をみないのかい?」
「あん?お客様は精霊様じゃないんだ。協力願うぜ」
・・・・
「オラ、逃げ出したぜ。追撃だ!あのときは、臆病な冒険者に止められたが、今度は・・何、この数は?!」
周りを取り囲まれ、就職初日に行方不明。
後に、駅馬車に乗って、襲撃するゴブリンの一団が、王国軍によって、討伐され、サムソンの駅馬車と判明する。
「ふざけるな!お前はただ乱暴なだけだ!」
「騙されたよ」
「ヒィ、そんな馬鹿な」
ザム親方の駅馬車商会は、余りに危機対応が杜撰だと、遺族から民事裁判を起こされる。
☆☆☆早かろう安かろう商会
「ゴブリンどもが来たぜ!スピードをあげるぜ」
「「「キャアアア」」」
「何が起きたの。スピードあげるのなら、一言言って、キャア」
ガラン!ガタガタガタ~~~~
速度に馬車の車体が耐えきれずに崩壊、
☆☆☆エレガント商会
「まあ、何故、メアリー商会のあんな醜い乗り物に、殺到するのーーーーーーー」
・・・・・・
事故や災害が起きて始めて安全第一の正しさが証明される。
地球でも後を絶たない。
メアリーの正しさが証明されるのは、不幸なことなのだ。
この時代、ニュースはない。
だから、ライバル商会が落ちていく理由を、メアリーは予想するしかなかった。
「サムソンの駅馬車が噂になっています。チラホラ、トムが正しく、サムソンが間違いではないのかとささやかれています。
これで、メアリー商会が頭を一つ抜き出ますぞ!」
メアリーは、一言、
「人が死んでいるの~~、喜ばないの~~~~」
とクロウの頭をペシペシもしなかった。
・・・だけど、減収だ。利息を払えない。さあ、どうしようか?
最後までお読み頂き有難うございました。