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第4話 お義姉様が出来たの~~

 駅馬車の利用層は、平民から下位貴族まで、何とかなるだろうと思っていた。

 しかし、それでは対処できない事案が来やがった。



 ☆☆☆メアリー商会本部



「大変ですぞ!メアリー様!」


「おやつ食べているの~~~~、少し待つの~~~」


 ケリーにおやつを作ってもらって、モグモグ食べていたら、

 クロウさんが慌ててやってきた。

 クロウさん。すっかり慌てて報告する役にはまったな。


「メアリー様、ナプキンです。クロウさん。お茶をどうぞ」


「はあ、はあ、はあ、侯爵家ともめました!」




 ☆☆☆回想


「おい!そこの馬車止まれ!」


 はい、貴族の従者に、当商会の馬車が呼び止められました。


「馬車が故障した。駅馬車だか仕方ない。貸し切ってやると、ご夫人が仰せになっている。客を降ろして、すぐさま、劇場までお送りしろ」


「申し訳ございません。これは駅馬車です。流しのタクシー馬車をお待ちになって下さい」


「この方たちは、ゴールデンロール侯爵家の夫人と令嬢であらせられる。劇の開演に間に合わないのだ!」


「はあ、だから?今、お客様を温泉療養都市、ヤイツまで運行中です」


 ここで、夫人が、お客様を馬鹿にしました。


「乗っているのは、まあ、包帯だらけの下層兵士じゃない。汚いわ。チケット代くらい払ってあげます。歩いて行きなさい」

「お母様、早くしないと始まっちゃうわ」



 ええ、それから、押し問答が始まり。従者が無理矢理、お客様を降ろそうとしたので、馬車はそのまま去りました。


「いいの~~~~」


 日本でもあったな。理不尽なクレーム。


「それだけでは、終わりません。当商会宛てに、書状が届きました・・・」


「何々~~~~」


 ほお、私と御者は出頭しろだと、何様だよ。あっ、貴族様だった。


「無視するの~~~こちらは、事情を調査するの~~~~」


「はい」


 御者はサムだ。傷痍軍人を温泉療養に連れて行ったそうだ。

 断るのが常道だ。


 高位貴族は、そこらの馬車は、お金を出せば借り切れると思っている。

 なら、邸宅に劇団を招いてやれよ。

 と思うが、それほどの財力はないのであろう。


 実家に何とかしてもらおう。第三王子の婚約者だ。偉光はあるだろう。

 と手紙を書いたら、


「貴族籍除籍になったの~~~~」


 速攻で、返信が来た。

 貴族院で、ローゼン家の籍から抜けたことを公示された。


「・・・どうやら、ゴールデンロール侯爵家の令嬢は、第2王子殿下の婚約者候補のようです」


 ヤバいな。損切りからの損切りか。

 私は平民になったのだ。


「侯爵家の馬車が来ました・・・平民用の馬車です」


「ヒドイの~~~駅馬車会社に馬車で迎えにくるの~~~」

「それどころではございません」

「あの商会長、俺、グスン、グスン」


「サムはいいの~~~、いざとなったら、退職して、王都を逃げるの~~~、これ、紹介状なの~~~」

「ウウ、グスン、グスン」


「商会長!」

「あんたのことを誤解していました!」



 いや、誤解してないよ。私は我が儘な欲しがり妹だ。

 そこは曲げちゃならねえ。

 相手が高位貴族なのは、辛いところだが




 ☆☆☆ゴールデンロール侯爵家


 接客室に通された。ゴチャゴチャ、壺やら、像がおいてある。

 財を見せつけて、威嚇する目的か?

 お、女性像の隣に、魔獣の毛皮がおいてある。成金だな。


 座れとも言われていない。

 侯爵、夫人、令嬢とその子息か?ソファーに座って、私は相対して立っている。


「・・・問題は第2王子殿下の婚約者候補の当家の名前を出したのに、平民ぶぜいが、依頼を断ったことだ。平伏して謝罪すれば不問に付す」


 不問じゃねえよ。お前ら、社交界で宣伝するだろう。

 ほら、横に絵師がスケッチブックを持っている。

 描いて、平伏した私を笑いものにする気か?


 別にいいけど、今は商会長だ。

 社交界で噂されたら、商会の価値は、更に低くなる。

 身売りどころの話ではなくなるのだ。


 使用人達も、あの商会出身の?と敬遠され、再就職は厳しいだろう。


「やーなの!こちらは断る自由はあるの!サムは何も悪いことはしていないの~~~~~」


「まあ、貴女、噂の欲しがり妹じゃない。オリビア様の妹よね。今は平民ね。クス」

「侯爵家に対する礼を失していた!」

「こちらは、お客様なのよ!おかげで、劇に間に合わなかったわ」


 ああ、辛いぜ。

 だが、策はある。


「ブラウン将軍閣下あてに、手紙を出したの~~~、サムの馬車は、負傷兵や傷痍軍人を運んでいたの~~~~」


「何!?」


 さすがに、傷痍軍人を馬鹿にしたのは不味いと分かっているのか?

 それとも、ブラウン将軍の偉光を恐れているのか?


 ブラウン将軍は、兵を大事にすると評判だ。

 一応、サムの証言だけを書いて、調査を依頼した。

 将軍には、多くの手紙が寄せられる。見られないだろうな。



「父上、将軍は、今、外征中です」


 あ、こりゃ、詰んだか。

 私の策は、もう、ひたすら、拒否するしかない。

 ほしがり妹は没落する未来しかないから、早まっただけだ。


 その時、従者が飛び込んで来やがった。


「王太子妃殿下が、来られました。伴に、護衛騎士と、負傷兵を連れています。先触れ無しです」


「まあ、王太子妃殿下も、欲しがり妹を見物に来たのかしら」

「馬鹿!ブラウン将軍のご令嬢だ・・」


 見物に来たのか。悪趣味だな。

 もうどうとなれ。転生者だったが、次も転生するのか?

 と思ったら、違う方向に行った。




「・・申し訳ございません」

「あら、何故、謝るのかしら、私はメアリー商会の書状と、兵士からの直訴の調査をしているのよ。事実と認めるのですね」


 やや、紫がかった黒髪をストレートに腰まで伸ばしている。

 目は釣り目だ。これは、悪役令嬢か?

 負傷兵と、護衛の騎士を連れている。


「・・・妻と娘は知らなかったのです。どうか、ご容赦を」


「そう・・」


 パリン!


 壺を扇子でなぎ払いやがった。あれは切れるのか?扇でスパッと斬れそうだ。


「これは、家宝の壺・・」

「ごめんあそばせ。知らなかったのですわ」


 ガチャン!


 今度は、彫刻を床にたたきつけた。


「謝罪します。だから、これ以上は、申し訳ございませんでした!」


「あら、私ではなく、ヨサーク1等卒に謝罪しなさいな」


「「申し訳ございませんでしたわ」」

「オラのことはいいだ。あの御者さんの商会長が大変なことになっているから、直訴しただ」


「壺や彫刻が、国を守ってくれるかしら、そうそう、ご夫人とお嬢様が、国防婦人会に参加すれば、曲がった性根は正しくなるかも。どう思う?可愛い商会長さん」


 ウゲ、私に振るのか?

 ここは善い人に見せかけよう。


「みたいの~~、ゴールデンロール夫人と令嬢が、王国旗を振る姿は美しいの。見たいの~~~」


 あれだろ。兵士達を見送る時に旗をふるご婦人達だろう。


「「ヒィ」」

「あの女騎士団並に厳しいと評判な」

「前線に出て、負傷兵の看病をする・・無理です。妻と娘は・・」


「あら、大丈夫よ。訓練があるから、それを受ければ、わずか劇場までの3キロの道のりを馬車で行こうとは思わないものよ」


「それと、マークと陛下にこのことを伝えるわ。婚約者候補から外れなければいいわね。近々、書状が届くでしょう」


「そ、そんな・・」


 マーク?そうか、マークガレ第2王子か。貴族学園を卒業、優秀な成績で卒業したと聞く。

 優秀すぎて、婚約者選びは先延ばしになっていると聞く。

 まあ、関係ないや。

 しかし、この女はヤバい。殿上人だ。逃げよう。




「それじゃ、帰るの~~~~」


 ガシ!と腕を捕まれた。


「待ちなさい。貴女、ただの欲しがり妹じゃないわね」

「ただの欲しがり妹なの~~~」


「なら、私から欲しがってみなさい」

「妹じゃないの~~~~」

「フフフフ、義姉妹になりましょう」


 と、


 ガヤガヤヤ~~~~~


 お茶会に招待された。


「宣言しますわ。この子は、ブラウン侯爵家の庇護を受けていますわ」


「さあ、お茶を飲んだら義姉妹のちぎり完了ですわ。あら、可愛いヌイグルミちゃんの席をご用意して、フフフ、お名前は?」

「ミディちゃんなの~~~~」


 ちくしょう。ヌイグルミを抱いて、お茶を飲めないようにしたけども、最後の抵抗もむなしく、私は、このおっかないお姉さんの義姉妹になった。

 公的なものではないけど、義妹は、義姉を慕い。義姉は義妹を守る義務が生じる。



「キャアーーーー、うらやましいわ」

「でも、ローゼン家のメアリー様じゃ」

「何故からしらね。王太子妃殿下は、義妹を断ることで有名だったのに」

 本当。何故だよ。


「フフフフ、嫌がっているわね。だからよ」

「そーなの。やーなのー、メアリーの商会は潰れるの!だから、迷惑がかかるの~~~」

「フ、そう思っているのは貴女だけかもね。自分のことは見えないのね」


 はあ?あんなボロボロな商会が?



 ☆☆☆商業ギルド


「あの、メアリー商会の駅馬車の貸し切りをしたいのだが」


「まあ、キャット卿、よりにもよって、メアリー商会?」

「獣人族代表が、王都に滞在する期間だ。同胞が親切にしてくれたと報告があってな」


「まあ、そんなことが」




 ☆☆☆冒険者ギルド


「次は、セゾンの街まで遠征だ。リリー、駅馬車は?」

「メアリー商会にするよ」

「ええ、あの傲慢な女経営者だろ。事案があっても、貴族や金持ちの肩を持つ」


「ううん。商会長、交代したみたいだよ。この前、感動する事があったよ。うちのパーティー、ウルフ族のガオンがいるけど、追い出される事はないと思うよ」


「そうか、まあ、どこでもいいや」




 ☆☆☆騎士団駐屯地


「おい、聞いたか?メアリー商会のこと。貴族の無茶をはねのけたと聞いたぞ」

「利用するのなら、そこだな」

「でもよ。駅馬車なんて、いっぱいあって、どれかわからないよ」


「薄い茶色の駅馬車だよ。それ見たら、乗れば良い」





 ☆☆☆メアリー商会


「売り上げあがっているの~~~~」

「はい、これで、お給金は払えます」


 ケンが報告してくれた。

 何故?


「神対応が評判になっているようです。何でもお客様は精霊様じゃないとの言葉が一人歩きしているようです」


 そんなこと言ったっけ?


「このまま行けば、債務の利息を払えそうです」


 よし、来期はしのげる見込みはたった。

 破産は回避して、大手駅馬車に売却が出来る。


 しかし、まだ、楽観視は出来ない。


最後までお読み頂き有難うございました。

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