第1話 商会へ追放なの~~
「メアリー、婚約者である我まで欲しがるとは、噂に違わぬ欲しがり妹だ。我はオリビア一筋だ!残念だったな!」
「キャア、殿下素敵だわ」
「これが真実の愛ね」
「婚約者が真実の愛のお相手だなんて、ロマンだわ!」
はあ?お前、誰だ?派手派手でインチキ王子様っぽい奴がいると思って見ていたら、断罪された。
あっ、お前、お姉様の婚約者第三王子だったか?
珍しく、パーティーに連れて来られたと思ったら、妙な事になっている。
私はメアリー、10歳だ。転生者である。日本では星苅星子と言う名のOLであった。
改めて、姿見を見ると、金髪碧眼、丸顔で、髪はツインテール、今世の私は可愛い。
しかし、両親は私に感心を示さない。この国では、賢い女性が好まれる。
女神教の影響か?
前世は、別に、料理がプロ級とか、日本刀とか作れる訳ではない。
今は、ただのお子様だ。
ヒソヒソヒソ~~~~~
「まあ、あれが、ローゼン伯爵家の欲しがり妹、挨拶も出来ないのね」
「派手ね。ヒラヒラのドレスよ。我が儘で家庭教師も拒んでいたんですって」
「あの年で、クマのヌイグルミを持っているわ」
私は欲しがり妹として噂をされていたのか。家庭教師も我が儘で拒んでいた?
それが、公式設定か?
私が5歳の頃、11歳のお姉様が、王子の婚約者に指定され、それから、我家は姉一極集中、
父、母も王族の生活に合わせるように贅沢に暮らしはじめ。領地経営だけでは苦しいらしい。
私への予算がなく、令嬢教育も延期に次ぐ延期だ。ドレスも宝石ももらえなかった。
だから、お姉様からドレスをおねだりしていたのだ。
前世を思い出すまでの私は、子供に事情を説明しないで事を進める両親を怖く思っていたが、同時に、愛情を欲していたりもしていたのだ。
クマのヌイグルミに慰められていた。
愛情とドレス、アクセサリーを欲しがっていた。欲しがり妹と言うのは、間違ってはいないな。
だが、おねだりの成果は散々だった。このドレスも、姉がパーティージョークで贈られたドレスだ。
姉は、着られなくなった子供用ドレスですら、私にあげるのに難色を示す。
前世を思い出してからは、せめて、平民学校に行かせてくれと懇願したが、面子の問題で無理のようだ。
「・・であるからして、ローゼン伯爵家の財政を傾けたお前は追放が望ましい」
「分かったの~~~、出て行くの~~~」
修道院か?この年なら孤児院か?幸い知識は、前世の記憶がある。
この世界の文字の読み書きや歴史は、有り余る時間から、お姉様の幼児教育の本から学んだ。
「愛しの殿下、お待ちください。妹はお金を稼ぐ苦労を知りません。ですから、私が起業した商会の長になってもらいます。
お飾りの商会長ですが、私が平民を仕込んでおきましたから大丈夫ですわ。
メアリーも、働く平民を直でみれば、変わるでしょう」
「さすが、オリビア、才媛と名高いだけはある」
「いえ、姉として当然でございます」
パチパチパチパチ!
「辣腕の令嬢起業家ね」
「だけど、慈愛の令嬢オリビア様でもあるわ」
かくして、私は追放されたのだ。
その日のうちに、商業ギルドに行き。
商会長、交代の手続きをした。
両親は無言だ。何の商会か説明もしない。
これだ、今世の両親は子供に事情を説明しないで事を進める。
前世を思い出すまでは、怖く思ったものだ。
商会は駅馬車事業だ。
屋敷で、使用人たちや、両親と姉との会話を聞いていたので、だいたい事情が分かっていた。
上手くいっていない話では?
☆☆☆回想
『お父様、お母様、平民相手に駅馬車事業をやりますわ。平民は馬車に乗れるだけで満足します』
『さすが、オリビア』
『令嬢起業家ね。我家の誇りよ』
☆
『使用人たちが全然言うとおりに動かないわ!もう、嫌!』
『平民にはオリビアの高度な経営術が理解できないのか』
『こうなったら、ムチで叩きなさい!護衛を用意します』
・・・・・
令嬢起業家として、社交界で名をはせたが、公式では、上手くいっていると宣伝している。
もしかして、何とかなったのか?
幼女を商会長にしても大丈夫な体制か?
かくして、私は、クマのヌイグルミのミディちゃんとオリビア商会改めメアリー商会に着任することになったのだ。
☆☆☆オリビア商会改めメアリー商会
全然、大丈夫ではなかった。誰を商会長にしても変わらない。倒産街道まっしぐらだ。
「え~、分からないの~~~~」
商会本部には、支配人筆頭のクロウさんがいた。
「オリビア様が、帳簿をつけていましたが、全然、分からないのです・・・」
「どれどれなの~~~~」
あっ、こりゃ、アカン奴だ。粉飾決済の匂いがする。
ぴっちり、金額があっている。
まだ、手持ちの資金はあるが、脆弱だ。
・・・連結決算か。私には荷が重いな。
そうだ。この商会はたたもう。
会社は生き物だ。誕生したときは、皆に大きくなれと願われるが、当然、数年で倒産する会社も多くある。
この商会の死に際を見届けてあげよう。
しかし、債務が多そうだな。
「人を雇うの~~~~財務の専門家を雇うの~~~」
「では、名簿を、会計学校を出た者です」
「この人にするの~~~~」
すぐに指さした。名前で決めた。
「え、この方は21歳、若いですよ。あまり評判は良くありません」
「日系王国人なの~~~~」
名前はケン・コバヤシ、転移者の末裔だ。
会計学校を出たが、現在はフリーだ。商会を看取ってもらおう。
日本SUGEEEEEEE!てな動画や番組は大嫌いだ。
アメリカでは大多数のものが、日本人はアジア人とひとくくりに思う。
日本人の欧州人に対する認識と同じだ。
オラが国を日本人がSUGEEEEEEE!と驚愕していただ!
と見たこともない外人が言っていたらどう思う?
更に、アメリカではアジア人の階層は、ゴホン、ゴホン
しかし、日本人のポテンシャルは、勤勉さ、きめ細かさだ。
時に、欧米人をチート能力者のように凌駕することがあるのは歴史が証明している。
「ケン・コバヤシです。父は転移者です」
「メアリーなの~~~」
「私は、粉飾決済はいたしかねます」
「そーなの。それでいいの~~君はありのままの自分でいいの~~~~」
「そうですか。では、私はお役にたてません・・・・えっ???」
「お姉様の帳簿を解析するの~~~~~~」
「はい!喜んで」
ケンは、粉飾決済を嫌がっていたそうだ。この時代は、会計関連の法はまだ整備されていない。
しかし、商業が盛んになり。チラホラ、力をつけた平民が現れ、平民の中でも出資をする者が出始めた。
そんな中、お姉様は、令嬢起業家、第三王子の婚約者として資金を集めただと、
平民でも馬車に乗れる駅馬車商会が現れ、脚光を浴び。今は過当競争状態だ。激安駅馬車で競い合っている??
ケンと帳簿を解析したが、絶望的だ。
「負債が資産の二倍以上と見積もられます。しかも、出資金が何に使われたか、解析できません。
おそらく、裏金ではないでしょうけど、無計画にいろいろな物に手を出したのでしょう。
借入金を利益に計上したとしか思えません。売り上げの数字の末尾が、0で終わっている月が多いです。怪しいです。もって、来期まででしょう。利息を払うどころかお給金も払えなくなりそうです」
「そーなの・・・」
裏金にしたら死刑だよ。
つまり、あれか。破産したときの商会長は、私、我が儘な欲しがり妹で、私が商会をダメにしたとなる絵か。
とりあえず何をしようか?
「メアリー様、債権者たちが、商会長交代の説明を求めています。明日です」
「ケリーありがとうなの」
彼女は、内勤長のケリー、主に、予約などを受け付ける係だ。
さて、債権者にどう説明しようか?
最後までお読み頂き有難うございました。