第12話 夢を見させてやるの~~~
☆☆☆王宮謁見の間
「王国に輝く太陽であらせられる陛下、太陽に寄り添う王妃殿下に、ご挨拶申し上げます。私めは、平民トーマス、こちらが、異世界人、ダイゼン・ヤマナカでございます」
「奏上を許す。楽にせい」
「異世界人の予言でございます。この者は、文明の進んだ世界から来ました」
「これから、産業革命が起こるなり!条件がそろっているなり!文明はスーパー中世なり。世界の体制は、ヨーロッパなり!」
「魔族との講和により平和になったなり。人が余るなり。
魔道具の進歩により自動機械は作成可能なり。
そして、メアリー商会の勝利により。資本の集中がおきるなり!」
「ダイゼン殿、魔族とは、数十年おきに戦役が起きている。この和平もかりそめの平和だろう」
「陛下、だから、躍進するなり!軍事と経済は両軸の車輪なり!経済力のない国の軍隊は脆弱なり。軍隊の裏付けのない経済も脆弱なり!」
・・・あれ、いつものけしからん喫茶で出会ったら、あれよ。あれよとついてきて、父上に奏上までしている。私はマーク、廷臣の位置にいる。
凱旋した兄上が義姉上と父の側に侍り。奏上を受けている。
「そなた達は、マークの知己だと聞いたが・・・」
「メイド猫喫茶仲間でございます」
「マークガレー殿下は上級者でござる」
「マークよ。後でゆっくり話そう」
「マーク、最近、メイドに関心があると報告を受けていますわ」
うわ。父上、母上、誤解だ。私は、けしからん喫茶を監視していたのだ。
「ゴホン、それで、余に何を求める?」
「ローゼン領でございます。爵位のことは、陛下のご宸襟のうちでございますが、私どもは、オリビア様に出資した際、屋敷とローゼン城を抵当に入れさせて頂きました。
第三王子殿下は連帯保証の書類にサインをなさりました」
「・・・連帯か。なら、ジャスに請求するのもやむなし。しかし、何故、今になり?」
ジャスよ。馬鹿なことを。普通の保証と違って、いきなり、請求しても文句は言えないものだ。
「信頼関係の崩壊でございます。第三王子殿下とオリビア様は、何の説明もなく、商会長を交代しました。
当初、ローゼン領の抵当から回収しようとしましたが、メアリー様が、あまりにも、誠実だったので、債権者一同、賭けてみたのです。見事、利息どころか。王都圏の物流の覇者になりました。だからです。如何ですか?ローゼン家の事業を見事立ち直させたメアリー様は貴族から除籍されていますが、まっこと、ローゼン領主に相応しくございませんか?」
なるほど、私は、こいつら甘いと思ったが、回収する算段は出来ていたのか。
「なるほど、メアリー嬢は、商業だけではなく、貴族の席もあった方が何かと都合が良いな。追って、沙汰は出す」
「お待ち下さい。陛下、この者たちに質問をしとうございます」
「エリザベスよ。許す」
私、エリザベスは、メアリーの義姉として、邪な者から守る義務がある。
「貴方たちの産業革命とやらは、メアリーにかかっているのよね。そなた達は、メアリーを支配する算段か?裏から操って道具として使うのは許さないわ」
否定するしか出来ないわね。いいわ。問い詰めるから、ボロを出しなさい。ブラウン家で養子にして守る手段もある。
「いいえ、違います。支配して頂きたいのです」
「そーなり、逸材なり」
・・・え、否定じゃなくて、これは、逆なのかしら。
「・・・幼女ですわ。意味が分からないわ」
「やがて、初潮を迎え。幼女は、少女になり。令嬢になり・・・」
バチン!バチン!
「この痴れ者め!」
思わず扇で二人を殴打した。
「ヒィ、もっと、やって、いえ、やめて下さいませ~~」
「いいなり。人妻悪役令嬢の扇でバチンなり~~~~もっと、睨んでーーーー」
バチン!バチン!
「義姉上、喜んでいますよ!」
「ウハハハハハハハーー、エリザ、その辺でやめておけ!マークが性癖を知っているぞ」
実際は、メアリーが、やけで投資した対象が、適切な投資先になっていた。
☆☆☆メアリー商会、債権者・使用人集会
「欲し~~~の!欲し~~~の!お客様の笑顔が欲し~~の!」
「「「メアリー様!」」」
「ついてくぜ。商会長!」
「踏んで!」
・・・はあ、はあ、どうして、こうなった。
精算はずだった商会が、どんどん大きくなっていく。
一歩、間違えば、制御不能だ!
しかも、こいつら、優秀だ。
「メアリー様、宅配の契約書、3枚書くのは煩雑です。一枚に出来るようにしました。切り取って使います。書式の確認をお願いします」
「採用なの~~~」
「貨物専用の、馬車を用意しましょう。友愛に、作るように依頼しますか?契約はリースの方がいいと思います」
「採用なの~~~」
「荷を保険ギルドに加入させましょう。荷を破損させたら、冒険者の個人負担です。それでは補えない場合もありまし、運送中に破損したら、誰の責任か分からなくなります」
「採用なの~~」
モーゼンの残党も来た。
支配人をしていた者だ。
「まずは、モーゼン商会の駅馬車まで護衛して下さり、有難うございます」
「いいのー、未来のお客様なの~~、経済活動なの」
「なるほど・・負けるわけだ。これが、損益分岐点を下回っても、真面目に仕事をしていた者のリストです。もし、モーゼンの元商会員を雇うなら、資料にして下さい。では」
「待つの~~、貴方は?」
「はい、冒険者にでもなろうかと、今更、私などは、負け犬です」
「採用なの~~、お名前は?」
「ヒロウと申します。あの、私は敵の支配人だったのですよ」
「経済に恒久的な味方も敵もないの~~~、しばらくは、メアリーの秘書をやるの~~」
「え、はい、喜んで」
「ヒィ、私は、私は?このクロウの立ち位置では?」
「クロウ、ダメなの~~、労働組合の長なのに、何で、金ピカの背広を着て、金メッキの魔道懐中時計を持っているの~~~」
「ヒィ」
「オフで着るのはいいの。商会ではクロウよりもお給金低い人達沢山いるの~~~、気持ちを考えるの~~~!クロウの真価は、意見のくみ上げなの~~~!」
そうだ。基本給は勤務期間に合わせて少ない金額で昇給、成果給やボーナスで還元している。
10時間労働も達成出来たけど、
慢心が見え始めた。
「メアリー様!まだ、王都内に残っている駅馬車商会あります。ぶっ潰しましょうぜ!」
「ダメなの~~!敵は自分なの~~~!」
「メアリー様、あの土地、値上がりしそうです。商会で抑えておきましょう」
「ダメなの~~、あくまでも本業に付随した土地を買うの~~~」
だから、私は、債権者・使用人集会で、「お客様の笑顔が欲しいの~~~」と叫び続けるしかない。
王都圏の物流を一手に行っているのだ。金と物は集まる。王都は、数十万都市だが、王都圏で人口が100万人はいる。
ヤバいな。下手したら、ロンドンみたくならないか?いや、幼女が考えることではない。
「王都北東部、麦が足りていません」
「じゃあ、麦を輸送するの~~」
・・・
「儲かりました!商社部門を作りましょう」
「駅馬車の情報網を使えば、こんなに簡単に儲けられますぞ」
「クロウ、ダメなの。困った人を助けただけなの~~~」
「メアリー様の仰るとおりです。モーゼンの20年前の過ちです。やがて、先物売買になり、商会を一個潰しました。素人が手を出すべきではありません。人助けで、たまたま儲けが出たスタンスが正しいかと」
「そーなの~~、駅馬車商会なの~~、情報ギルドの方が、情報を正確に掴んでいるの~~、今回はたまたまなの~~~」
おい、クロウ、お前、この商会の最年長者だろう。ヒロウの方が、どう見ても優秀だ。
ヤバいよ。ヤバいよ。
こいつら、目がキラキラじゃない。ギラギラしている。
そう言えば、会社最盛期は、新興宗教みたいになると聞いた事がある。
この熱狂はどう処理しようか、
『せいぜい、金の魔力に飲み込まれて、私のようになるが良い』
これは、呪いじゃない。警告だ。
そもそも、新興宗教は、どうやって、この熱狂を処理しているのか。
見てみよう。
「フラン、視察に行くの。護衛頼むの~~~」
「はい!」
フラン、この子は戦闘メイドだ。主要な冒険者グループたちは、元の稼業に戻った。冒険を再開したいとのことだ。ボムとギミーは残った。まだ、瘴気が湧いて、ゴブリンが出てくるかもしれないし、盗賊も出る可能性がある。
☆☆☆王都内、新興宗教大戦果研究会
「6大陸、信者3億人!支部1万を超えました!大戦果!」
「「「大戦果!大戦果!大戦果!・・・」」」
「さあ、貴方も大戦果研究会に入って下さい。とりあえず。機関誌を5部取って下さい。内訳は、自分用一部、保存用一部、家族に勧める用一部、職場用一部、鞄の中に入れていく用一部です」
「入らないの~~~」
「精霊罰が当たりますよ!」
・・・ここは、発展を見せかけている。虚構だ。熱狂をそのままにしている感じだな。機関誌の多数購読は、無理を隠す方便だな。
他は、同じか。
なら、実のある熱狂の先を見せればいい。
夢でも見させようか。
「投資するの~~、友愛に、魔道自動車の制作を依頼する~~」
「「「はい、メアリー様」」」
・・・おい、誰か、反対しろよ。こういった技術への投資は、時間と金がかかる。メアリー一極体制は、ヤバいな。
ヒロウは?
顎に手を当て考えている。
「分かりませんが、駅馬車業界の一歩先を行く感じですね」
「メアリーが、夢を見させてやるの~~この先は、我商会がトップを走るの!」
「「「はい!」」
☆☆☆一月後
「設計図が出来ました!」
「フニャ!?」
・・・そうか、ここはナーロッパ大陸、転生者や転移者が大勢いる。
そう言えば、地球でもエンジンの開発は結構早かったのだ。
「魔石で出来そうです。イモから燃料を取る設計も出来ました。しかし、車両は駅馬車をそのまま使っています。小売価格、金貨500枚になりそうです」
5000万円か、
そう言えば、北欧に汽車が導入された時、数十年は、馬車そっくりな客室だったとか。
考古学の例にされていたな。物好きが調べていたから、記録が残っていた。
初めはそれで良い。
初めから完璧な物は生まれない。
「しかし、実証試験が必要です。実証だけに、自称じゃ、ダメだってことです」
「ウハハハハハ!コウジ、上手いけ。芸人になれるぞ!」
「・・・・ハニャ?」
ドワーフギャクは分からない。
魔道自動車が出来る。とな。
なら、こいつらの目を限りある発展から目をそらさせよう。
「路面魔道車を作るの~~~!王都内を路面魔道車で整備するの~~」
「「「はい!」」」
このまま人口が増えれば、お馬さんの糞の公害が起きる。
駅馬車商会が、駅馬車を終わらす。
「あの、メアリー様、フラワと別れたくないです」
「ヒヒン?」(お仕事なくなるの?)
「当分の間は、大丈夫なの~~~、完全魔道自動車化は100年はかかるの!」
「ウワ~~~ン、良かった!」
「ヨシ、ヨシなの~~」
・・・こいつよく泣くな。私もヨシヨシされたい。リトルアキバに行くか。
☆☆☆リトルアキバ「メイド猫喫茶」
「いつものなの~~~」
「はい。ミルクですね」
サー
いつ見ても店主スゲー、グラス、カウンターテーブルを滑って来る。
「ミヤさんの、お母さんヨシヨシ希望なの~~」
「はい、いつも指名ありがとうございます。メアリー様、ヨシヨシ~~」
「あのね。商会がドンドン大きくなって、自分を見失いがちなの~~~実家の領地を、メアリーランドと名前を変えて、魔道馬車の実験に使えと王命が出たの~~~」
「フフフフ、見失っていいじゃないですか。失敗してもいいじゃないですか?
少なくても、私たち、親子は、王都に来るとき。メアリー商会の駅馬車の御者さんに助けてもらいました。この思い出だけでも、メアリー様がやったことは無駄ではないんですよ」
「グスン」
「次は、ミミーの、お姉さんヨシヨシしますか?」
「うん」
「ミミー!」
「は~い。可愛いお嬢様、ご指名有難うございます」
「あれ、ミミーの幼なじみのフィナーレを依頼したいのだが・・」
「マークさん。ミミーは可愛いお客様のところにいます」
「じゃあ、君の得意技を所望する。ツンデレフルコース以外を」
・・・・
「有難うなの~帰るの~、護衛外に待たせているの~長居出来ないの~~」
「フフフ、有難うございました」
チャリン♩
「まあ、金貨一枚、お釣りがないの。少し・・」
「いいの。チップなの~~」
「メアリー様、そういうのダメです。そんなことをするメアリー様は悪い子ですよ」
「そうなの~、なら、ヨシヨシのお金先払いなの~~~」
「分かったわ。また、来て下さいね。必ずね」
・・・あ、世知辛いぜ。実の貴族の親よりも、この貧しい親子の子になれたら、幸せと思う私は傲慢か?
実の親が商会に来るようになった。追い返せと指令を出すのも辛いぜ。情は残っているのか?
☆☆☆商業ギルド
「この商会は私が始めた商会よ!何故、商会長交代が出来ないのよ!」
「ですから、オリビア様、商会印璽が変更されていますよ。貴方の持って来ている印章は古い物です」
「ヒドイ、妹に奪われた。グスン、グスン」
☆☆☆メアリー商会
「メアリー様、ご実家の請求書が沢山来ております」
「ケン、無視していいの。来たら、追い返すの~~」
「はい、商業ギルドで、商会長を交代できないようにしておきました。それと、メアリー商会と、ローゼン家は関係ないと、関係各署に、宣言も出しておきました」
「有難うなの~~」
守られているな。
関係を清算と言っても、捨てたのは向こうだ。さあ、どうしよう。この問題を片付けなければならない。
でも、幼女だしな~、まあ、しばらくは、皆に守れられる幼女の幸せを満喫するか。
最後までお読み頂き有難うございました。




