第10話 敵は自分なの~~
※昔の運送業のことを作中に登場させていますが、現代は違います。
例を出せば、昔は不動産業は千三つ屋、千個のうち、本当は3つしかないと言われ、信頼回復のために、宅建が誕生しました。このような話はいくつもあります。
歴史的な話と捉えて頂ければ、幸いです。
☆☆☆メアリー商会幹部会
「傾注!メアリー様、訓示!」
「裏組織から、モーゼン商会の妨害の情報が来たの~~、脅威度は、注意報の上、ゴブリン警報にするの~~、勢力は不明なの!」
「「「はい!」」」
・・・王都路線で、通るシマの、裏組織の親分に挨拶しておいて、良かったぜ!
通常、裏組織は、契約書を作らないから、今の段階で、衛兵隊に通報しても逮捕できない。
現行犯逮捕して通報する。これしかない。
自力救済の世界なんだよな。
てか、現行犯がなければ、警察が動かないところは同じか?
「メアリー様、モーゼンをぶっ潰してやりましょう!」
「サム、違うの~~、安全第一なの~~、モーゼンはどうでもいいの。敵は自分なの~~」
「失礼しました!」
☆☆☆モーゼン商会
「しばらく、貨物の対策をする。ザウスよ。山猫族を使い。メアリーを妨害。駅馬車を回しておけ」
「はい、父上!」
よし、父上が僕を認めてくれた。
さあ、ジャンジャン儲けるぞ!
・・・・
「おい、メアリー商会をコテンパンにするぞ。十八番を奪う。こちらも分単位の運行をする。これが、僕が作った運行表だ」
「多いですね」
「無理です。うちは無理だって、モーゼン様も言っていました」
「この場合は、まず。坊ちゃんが商会長代理に慣れてからやった方がいいです」
「今は僕が最高責任者だ。いいから、やれよ!」
・・・・
「何だ。やれば、出来るじゃないか」
「しかし、負担が大きいです。誰か、指令を出してくれる人が欲しいです」
「僕がやるよ。いいか、何があっても、絶対に遅れるなよ!!!」
「「「はい・・」」」
☆☆☆メアリー商会
「運行表も大事なの~~、でも、安全第一なの~~~現場のリーダーの判断で、遅れるのも可なの~~」
「「はい!!」」
・・・・・・
「どーして、できないんだよ!遅れてばかりだぞ」
「余裕がないんです。人と馬も休ませなければなりません。整備が外注だから、それも時間がかかります。少し、減らして下さい」
「現場の者では判断出来ないこともあります。魔道通信機も数はそろっていません。
メアリー商会は車両に一台あります。我が方は、合併した駅馬車を使っているので、装備がチグハグです」
「現場に出て下さい。でなければ、現場の声を聞いて下さい。モーゼン様も現場の声は聞きました」
モーゼンは現場の意見は聞いていた。そして、碌でもないが、指示は出す。
しかし、ザウスは、自分の頭の中で、全ての判断を下そうとする。
商会に混乱が生じた。
「僕の計画は完璧なんだよ!やらないお前達が悪い。やれよ。あ、そうか、メアリー商会は成果給をだしていたな。金をせびるつもりか。
なら、仕方ない。
運行表通り出来たら、銀貨10枚やると言え」
「はい」
☆☆☆メアリー商会
「大変です。駅馬車襲撃されました。森林地帯です。勢力が判明しました!イエ猫族と名乗って攻撃してきましたが、冒険者の狼獣人族のガオンによると、山猫族ではないかと、ガオンを見て、逃げ出しました!」
「被害無し」
「見積もりが甘かったの~~、脅威が上なの~~~、一部、運行停止のお知らせなの~、ガオンの『猟師の絆』と、『瞬殺のナイフ』で防衛できる駅馬車のみ運行なの~~~、その他の冒険者は待機なの~~お給金払うの~~」
「はい」
「メアリー、キャット卿に相談するの~~~」
「はい」
「衛兵隊に、連絡はどうしましょか?私がしましょうか?」
「お願いするの~~」
☆☆☆モーゼン商会
「大変です。うちの駅馬車が襲われています。死者が出ました!イエ猫族です!」
「あ、そう、そのまま運行」
(ダミーで襲えと言ったからな。メアリー商会ばかりだと、うちが、疑われる)
「死者が出ているのですよ!」
「冒険者は?!」
「衛兵隊に連絡します」
「いらね。どうせ。100台に一台くらいだよ」
「護衛をつけましょうよ!」
「じゃあ、募集を出しておけ」
☆☆☆メアリー商会
「マタタビの提供を受けたの~~~、森林地帯は、国軍が掃討作戦するの~~~、森林地帯は通行禁止なの~~、緊急事態のマニュアル大回り経路と、運行表に差し替えなの~~~!」
「はい!」
ペロペロ~~~
・・・ペロペロキャンディーの消費量が多くなったぜ。
「意見具申でさあ、あっしらは、山猫戦したことありまさあ。冒険者に訓練を施せますぜ」
「あっしらを現場に出してくだせえ。新参者だが、名をあげたい」
「ボム、ギミーの意見、採用なの~~」
「はい!」
「よっしぁ!」
「でも、気張りすぎて、死ぬなよ~~~なの~~~!」
「「はい、嬢ちゃん!!」」
☆
「いいか、ひよっ子ども!山猫族は、速い。しかし、持続力がねえ。御者さんたちは、スピードアップだ」
「奴らは、首を狙ってくる。死にたくなければ、首当てを用意しておけ」
「鶏肉を、投げれば、そっちにいく。鶏肉は」
「メアリー様から、予算を頂きました」
「ケリーの姉御、すまねえ」
「いいえ。全てはメアリー様のために」
「あの友愛から、マタタビスプレーガン、作れそうですよ」
「コウジさん。お願いします。でも、マタタビなんて」
「ホホホ、我も協力するぞ」
「「「キャット卿」」」
「と猫獣人族の男衆」
「メアリー嬢から連絡があった。至宝のマタタビを提供する。山猫の奴ら、イエ猫族を騙っている。さあ、同胞よ。マタタビを運び入れるのじゃ」
「「「ニャーゴ!」」」
☆☆☆モーゼン商会
「大変です!襲撃が止りません。イエ猫族ったって、王都内に数千いるのですから、半端ないですよ。強さから、山猫族ではとの話です」
「もう、三台目です。金品だけではなく、客がさらわれました!」
「そうか、おかしいな。冒険者は?」
「誰も、クエスト受けてくれませんよ!ゴブリン注意報の時以来、皆、警戒しています」
「運行表は?」
「もう、滅茶苦茶ですよ」
「はあ、銀貨10枚なのにな。皆、怠け者だな」
☆☆☆メアリー商会
「緊急マニュアル、駅馬車船団護衛方式で運行なの~~~!!かたまって運行なの~~!」
「「「オオオオオーーーーー」」」
「質問です、モーゼン商会の駅馬車が襲われていたら、どうしましょうか?」
「助けるの。未来のお客様なの~優先順位は、メアリー駅馬車、冒険者の命、モーゼンなの~~」
☆☆☆モーゼン商会
「もう、10台目です!いい加減にしましょう!」
「森林沿いの道は、通れませんでした!」
「分かった。これは山猫が悪いと言って、賠償はするな」
「そうじゃなくて」
「坊ちゃん。何故、森林沿いの道が通れなくなると調べなかったのですか?商会長案件でしょう?」
バチン!
「はあ、はあ、はあ、僕が間違っていると、それを知らせるのがお前らの仕事だ。いや、知らせる前に、自分たちで考えて行動しろ!」
「ウグ」
「支配人!」
「・・・年上の支配人を殴るなんて、でも、運行表と、経路は、坊ちゃんが決めると言っていませんでしたか?」
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!――――――だから、低学歴の平民はダメなんだよーーーーーウワ~~~ン」
「報告です!メアリー商会の護衛団が・・・・、当商会の駅馬車も護衛しています」
「何だって」
「そんな。あれほど、馬鹿にしていたのに」
「朗報じゃないか!馬鹿だな。お人好しだ。護衛を雇う金が浮いた。運行は通常だ!」
もうだめだ。
と、支配人は、傷の治療をすると言って、そのままモーゼン商会を去った。
「お前達も、進退を考えておけよ」
「はい」
☆☆☆メアリー商会
ガヤガヤガヤ~~~~
「王国軍、山猫族集落を検挙!どうやら、部族単位の計画だったようです」
「王国軍から、声明が出ました。イエ猫族にあらず。山猫族であると」
「襲撃がなくなりました」
「一日、置いたら、通常なの~~」
「「「「はい!」」」
・・・・・
一方、モーゼンは、メアリー貨物の情報を探っていたが、未だに掴めていない。
☆☆☆モーゼン商会貨物部
「モーゼン様、ブラウン侯爵家、動きなし」
「ゴールデンロール侯爵からも、情報がありません」
・・・おかしい。いくら、調べても、形跡がない。
考えるんだ。もし、私がメアリーだったのなら、
『新しく貨物事業をするなの~~~』
あの幼女が言ったら、誰が、助ける?
トーマスか?
『あの、ペシペシ叩いて下さい』
王太子妃か?
『貨物やるから、お金いっぱいくれなの~~~』
『はい、死刑!』
ダメだ。
イメージ出来ない。
あの幼女・・・・
「モーゼン様、大変です。山猫族が来ています。数体です!」
「何!ザウスは?」
「対応出来ません。逃げ出しました」
「私が行く」
☆☆☆応接室
「逃げるから、逃走資金を下さい」
・・・何だと、失敗だと、メアリー商会の駅馬車は襲撃失敗、しかし、私の駅馬車や貨物も、襲撃しただと!
「死者が出たのか?少し、脅して、金を取るだけだぞ!」
「いや、坊ちゃんから、ガンガンやれと言われました。モーゼン商会の駅馬車も、襲って良いって言っていましたよ」
「はん。そんな証拠はない」
「ございます。ほら、契約書があります」
「馬鹿な。書面で残したのか?分かった。金をやるから、書類を寄越せ」
「い~え、なが~いお付き合いをお願いしたいものですな。こちらは、王都の拠点がなくなりましたから・・」
こういった場合、メアリーならどうする。
あの幼女、捨て身で私にかかって来た・・・
「結構ですよ。それを持って、衛兵隊に行ったなら、貴方たち、幹部も一斉検挙でしょうな」
「なら、今、ここで、あんたを殺してもいいんですよ」
「ほお、なら、金は永久に取れなくなるわけだ」
「ウグ、分かった。金貨1000枚で手を打とう」
「200枚だ。重かろう。もう、商業ギルドの口座もつかんぞ」
「500!」
「220!」
「300だ。持って行け!」
「書類だ!ほらよ。お前も破滅だ!」
・・・あれ、私は、何でメアリーの考えで、危機を脱しようとしたのだろうか。
「クソッ!クソッ!」
珍しく、モーゼンは息子を怒鳴らず。自己に対して、癇癪を起こした。
一方、メアリー商会、貨物事業、進出の計画は、最終試験に入っていた。
冒険者ギルド、モーゼン商会に、ダミーの荷を、それぞれ30個、クロウの家に送る試験を実施していた。
☆☆☆冒険者ギルド
「あの、私に出来るお仕事・・・力仕事じゃなくて」
「アマンダさん。お仕事ありますよ。荷車ありますよね。お届けクエストです」
「荷物1個、小銅貨8枚(800円)です。この近くです」
この女は、元マーゴット2世である。心根が骨の髄まで卑しい女であった。
しかし、
「あら、箱に中味が書いてあるわ。どれどれ、食べ物だから注意!」
グゥウウウ~~~
荷を取ろうとしない。
「はあ、クエスト達成しなければ、冒険者の登録を抹消されたら、もう、後がないわ。グスン」
この世界では、冒険者は崇高な仕事とされる反面、最後の仕事でもあった。
この次の仕事はない。やらかした者が行き着く先でもある。
・・・・
「クロウさんですね?お届けにあがりました。クエスト完了通知書にサインを・・」
「有難うございます」
・・・・・
☆☆☆メアリー商会本部
「報告です。試験の結果、メアリー商会、冒険者ギルド経由は、30個中0です。
一方、モーゼン商会は、30個中1抜かれていました。食べ物です。
え~と、抜かれていない荷も包装を解かれた形跡があります。宝石と書いておいた荷、
メアリー様のオモチャの指輪が入った荷です。中は取られていませんでした」
ペロペロ~
「グフフフフ、いいの。これから、メアリーは、営業の仕事に行くの~~!代理は、ケンなの~」
「はい」
「メアリー様、ペロペロキャンディーはお控え下さい。三本目ですよ」
「なの~」
30個に1個、中々の成績じゃないか?ハインリッヒの法則、
重大事故の前に30の小さな事故、300のヒヤリがある。
この世界は、地球の戦前の世界だ。
つまり、そろそろ荷が抜かれるな。と経験で分かるぐらい荷が届かない。
・・・・グヒ、グヒヒヒヒヒ、世の中、何でもつながっているものだな。
大学で法学の授業を受けているときに、疑問に思ったものだよ。
殺人罪の判例で、
大正時代とか古い時代は、
毒入り食べ物を、殺したい奴に郵送するとする。
相手に届くまでは、殺人罪はスタートしない。
しかし、時代が下り。昭和中頃になると、
送っただけで、相手が食べなくても殺人未遂となる場合がある。
『先生、何でですか?』
『星苅君、そりゃ、昔は、国営の郵便でも、確実には、届かないものという認識があったのだよ。途中で抜くのが横行していのだ
民間の物流でも同じだ。ギャングの語源は艀に掛ける渡板から来た説がある。
彼らに抜かれないように、交渉人までいたそうだ。やがて、機械化が進み。仕事を失った荷役職人の親分たちや交渉人は、ギャングになったとか、日本でも神戸とか、まあ、詳しいことは歴史学の方に聞いたらどうかね。いや、流通経済の方かな』
・・・・・・
そして、この世界の冒険者は、神話の時代から、依頼は達成するものとの常識がある。
駆け出しの者から、SSS級まで、
良いじゃないか。
こっちの世界の冒険者の方がよっぽどチートだよ。信頼チートだ。
「これからが始まりなの~~~」
「「「はい!」」」
「グヒヒヒヒヒヒヒ~~~なの~~~!」
幼女の高笑いが、建物中に響く。
最後までお読み頂き有難うございました。




